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小さな花の物語  作者: 燈華


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16/27

ひらめきと霊感の花

「インスピレーション、降りてきた!」

「お、ひらめいた?」

「インスピレーションって言って」

「おんなじでしょ」

「ちがーう!」


話しながらも手は止まらずに動く。

あんなに行き詰まっていたのが嘘のようだ。

するするとアイディアが浮かんできて手が追いつかなくなりそうだ。


描くことに集中する。

私が集中し出したことに気づいた彼は何も言わなくなった。


何枚も紙を交換しながら湧き出るイメージを描きつけていく。

最後の一枚を描き上げてペンを置いた。


「できた!」


両手を挙げて高らかに告げた。


「お、できた?」


覗いてくる彼に紙の束を突きつける。

受け取った彼はぺらぺらと(めく)る。


「おお、凄いね。これで揃った?」

「うん。言われていた分は描けてるはず」


衣装から小物までのトータルデザインを言われた枚数分。

細かい修正はこれから詰めていくことになるがとりあえずは描けた。


「うん、確かに。細かい修正は必要だけど、とりあえずお疲れ様」

「うん。終わってよかったー」


ぐっと伸びをした。

それに彼は微笑(わら)う。


「だけど凄いね。一枚も描けていなかったのにあっという間に描き上がった」

「この花のお陰かな」


机の上に飾ってある細い黄色の花びらを持つ花枝を笑顔で見る。


「これ、何?」

「マンサクって花だよ」

「マンサク?」

「そう。デザインにも取り入れてあるよ」


彼がぱらぱらと見返す。


「あ、本当だ。何でそんなマイナーな花」

「ふふ、知らないの? この花には霊感があるのよ」

「は?」


ぽかんとした顔だ。

すぐに呆れたものに変わる。


「花に霊感があってどうするのさ」


彼も少し人とはずれている。だからこそ組んでうまくいっているのだけど。


「人にひらめきをもたらしてくれるのよ」


ふふんと胸を張る。


「アホなこと言ってないでよ」


一蹴される。

さすがに信じないらしい。

残念だ。本当なのに。


信じる者だけがその力を貸してもらえる。

ファンタジーの定番でしょ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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