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19話

 十数分に渡って輝いた夜空は、元の姿を取り戻す。そこから続いた長い静寂の中、一つの拍手が聞こえ始める。それを皮切りに音は次々と増え、やがて拍手の渦に会場は包まれた。


「アウラ…………!!」


 そんな人混みの中から、リリアとアルクが飛び出してアウラを抱き締める。三人の間に言葉は無かったが、零れる涙が悲しみによるものでないのは誰の目からも明らかであった。

 そして、誰もが忘れることはないだろう。幼い少女が招いた『奇跡の夜』を。それを見ていた者達はもう彼女を【呪い子】だと馬鹿げた蔑称で呼ぶことはない。


(………全ての人を変えるのは、まだ難しいかもしれないけど。でも、少しずつでいいから。あの子が奪われたものを、少しずつ取り戻していこう)


 そんな美しい星の舞台を終えた後は、時間もあってか皆一様に解散の流れになっていく。その時だけは、誰もがあの余韻に浸っていたかったのだ。アウラ達もその日は宿に戻り、話しは気持ちを落ち着けてから………そう思って会場を出ようとした時、アウラはセリアに呼び止められた。


「アウラ!」

「セリア………どうだった?ボクの舞台」

「とっても………とっても綺麗でしたわ!」

「えへへ…………喜んで貰えてよかった」


 嬉しそうにはにかむアウラ。今まで彼女の表情の一部を隠していた包帯が無くなったからか、その笑顔は今まで以上に無邪気で年相応にも思え………アウラもまた、今まで以上にはっきりと見えた皆の顔を見て、心からの笑みを浮かべていたのだった。




「…………」


 そんな昨夜を思い出しながら、アウラは馬車の中でゆっくりと瞳を開く。青と金色の瞳は、元より彼女が持つ神秘的な雰囲気を強くしていた。


「アウラ………その、大丈夫か?急な変化だし、違和感はないのか?」

「全然。でも…………」

「………なんだ?」

「光がいっぱい見えるから、ちょっと眩しいかも」

「………そうか」


 冗談っぽく告げるアウラに、ホッとして笑みを浮かべるアルクとリリア。それに笑みを返しながら、アウラは馬車の窓へとまた視線を向ける。そうして思い返したのは、アウラが光に包まれた直後の事だ。周囲からすればたった一瞬の事だったが、アウラだけは違うものを見ていたのだ。


 あの瞬間、いつの間にか小さな暗闇の世界に一人立っていたアウラだが、目の前には変わらずあの夜空が映し出されていることに気がついた。

 唯一違う点があるとするならば、あの時消えてしまった流星がずっとその夜空を渡り続けていることだ。そして、あの声達は言った。


『これはあなたの夜。あなたがその力をより深く理解することで、この夜はより多くの同胞を迎えるだろう。あなたの声は、我らにより強い光を与えてくれる。この世界で、我らは永遠に輝き続けるのだ』

『………でも、ボクもずっと生き続けることは出来ないよ』

『それでも構わない。(そら)に終わりがあるならば、即ち永遠など虚言に過ぎないのだから。だが、その終わりまでを永遠と呼ぶならば………あなたの進む道は、我らの永遠となるだろう。闇を照らすことだけが、我らが在る意味なのだから』

『なら…………ボクは誓うよ。与えられたこの光で、あなた達を見届ける』


 奇跡の対価はその瞬間に支払われたのだ。かの星々の願いを聞き届けたアウラ。進むべき道は定まったといってもいいだろう。この夜に星々の光で満たし、そうすることで彼女は本当の意味で星々に手を伸ばすことが出来るのだから。


「ねぇ、アウラ」

「ん、なに?」

「あなたは、これからどうしたい?」

「どう………って?」


 要領を得ない質問に首を傾げるアウラ。すると、リリアは少し悩むような時間を置きつつ話し始めた。


「少しずつだけど………きっと、あなたを【呪い子】だと蔑む人は減っていくわ。そうしたら、あなたは堂々と皆の前に立てるのよ。行きたがってた学園だって胸を張って通えるわ。ううん、寧ろあなたならきっと学園でも皆を驚かせ続けるでしょう」

「………ボクは」


 アウラは一度言葉を切る。リリアは答えを急かしすぎたかもしれないとも考えたが、彼女の未来は無数の可能性に満ちている。少しでも彼女の力となれるよう、アウラがどう考えているかだけでも聞いておきたかったのだ。

 数十秒ほどの沈黙が続いた後、アウラはゆっくりと顔を上げた。


「学園は………いかない、かな」

「………どうして?」

「行きたい気持ちはあるけど………いつかこの魔術で、もっと大きなことを成し遂げたい。そのために、成人したら家を出て魔術師になりたいんだ。だから、貴族が通う学校にボクは相応しくないと思う」


 魔術を学ぶことが出来ると言っても、本質は貴族の学校。あくまでも魔術は教養や将来の選択肢を広める一つの学科でしかなく、どちらかと言えばおまけのようなものだ。その本懐は、一人前の貴族になるための勉学を積む場所なのだから。

 彼女はそれでは満足が出来ない。自分の夢を叶えるためには、魔術に人生を捧げなければならないとも思っていた。そのためには、自分はもっと多くのものを見て学ばなければならない。


「そうか………お前がそういうのなら、私たちはそれを尊重する。だが、もし家を出ても連絡は必ずするんだぞ。離れていても、お前は我が家の自慢の娘なのだから」

「そうね。でも、家を出るのなら今のままじゃだめよ?確かにあなたは天才で、きっとこれからも沢山の人を驚かせると思う。でも、アルファーネ家の娘として………私の子として、一人前のレディのお勉強はしてほしいもの」

「うん………ありがとう」



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