17話
夕方頃、アウラ達がいる席にアルクが戻ってくる。しかし、彼と共にいたのはレイではなく、見知らぬ二人の男と少年であった。
「セリア、友人と再会できたようで何よりだ」
「えぇ、お父様。やっぱり、アウラとの交流はとても有意義なものになりますわ………それより、あなたも来ていたんですわね。ヘレン」
「まぁね。こういう場にアーレス家が出席しないわけにはいかなくて」
一人はセリアの父、そしてヘレンと呼ばれた少年はセリアと知り合いらしく………更に、アーレス家と言えばこの国でその名を知らない者はいない。
三大貴族の一つであり、その長男であるヘレン・アーレス。そしてもう一人の男性は、彼の父親なのだろう。そして、その男性がアウラに声をかける。
「初めまして、アウラ嬢。私はアーレス家当主のクレイン・アーレスだ。アルファーネ家とは長く良い付き合いをさせて貰っていてね。今後は顔を会わせる機会も増えるだろう。どうかよろしく頼むよ」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
アウラは頭を下げようとして、セリアのお辞儀がふと頭を過る。勿論習ったわけではないが、近くで見たのだから………そう思った彼女は、セリアのお辞儀を見よう見まねで実践したのだ。
それを見たクレインは感心し、アルクとリリアは驚くが、セリアはそれを見てニヤニヤと笑みを浮かべた。
「ふふ、もしかして私の真似ですの?」
「………バレちゃった?」
「バレバレですわ。でも、良くできていたと思いますわよ」
「ほう。見事なものだったから、てっきりもう礼儀作法を学んでいるのかと思ったが、まさか他人から見て学んだとは。アウラ嬢は才能に溢れているようだね、アルファーネ公爵」
「ははは………私達もアウラには驚かされてばかりだ」
ルークも一般的に見れば成熟は早く、そんな彼を育てたからこそアウラの成長速度は彼の想像を越えていた。
そして、次に口を開いたのはセリアの父だ。
「ガウス・ロザリーだ。よろしく頼むぜ、アウラ嬢」
「えっ?あっ、よろしく、お願いいたします………?」
「くくっ、セリアと知り合った後だと驚くよな。すまんすまん」
所作も含めて正に貴族令嬢と言った雰囲気のセリアの父が、まさかこのようにフランクな人だとは思っておらず、挨拶がぎこちなくなってしまう。
「まったく。驚かせると分かっているのなら、挨拶だけでも丁寧にすれば良いと思うのですわ」
「でも、そうやって驚くやつの顔を見るのは案外面白くてな」
「我が父ながら、ほんっと良い趣味してますわー……」
「褒めんなって」
「褒めてないですわよ!!」
しかし、良く考えればセリアの態度や話し方はともかく、その内面は一般的な貴族とは大きく違う。そう考えれば不思議ではないのかも………とも思うが。
何となく二人のやり取りに親子を感じて微笑ましく思っていると、ヘレンがアウラをじっと見ていることに気がつく。
「な、何か……?」
「あぁ、申し訳ない。セリアの友人だと言うから、どんな人なのかと思ってね。紹介が遅れたけど、僕はヘレン・アーレス。よろしく頼むよ」
「アウラ・アルファーネです。よろしくお願いします」
「うん。それと、僕にも敬語はいらないよ。セリアの友人なら、僕達も仲良くやっていけそうだからさ」
「そう………?じゃあ、そうするね」
挨拶を終え、アウラはリリアの隣に向かう。そして、少し気になったことを訊ねるのだった。
「………あの人達は【呪い】のことは知ってるの?」
「えぇ。けど、アーレス公爵が言ってたように、私たちは付き合いが長いから。エーボルト公爵と同じように、あなたを心配してくれていたのよ………ロザリー侯爵は分からないけど、あの様子ですものね」
「そっか………」
思っていたよりも自分の事を思ってくれる人はいたと言う事実に、アウラは少しだけ胸が温かくなるような気がした。その感覚は、まるであの夜に彼女の内に宿った光とにているようにも思える。
その時、会場の中心に数人ほどが集まって何かをしているのが見えた。それが気になって視線を向けると、リリアが答える。
「催しが始まるのよ。最初は黄昏の劇団だったかしら」
「催し………じゃあ、もうすぐなんだね」
「えぇ。アウラ、今度こそ、私たちはちゃんと見ているわ。だから、頑張って」
「うん」
その時、視界の隅でセリアとヘレンがアウラに手招きをしているのが見えた。どうやら、一緒に見ようと言うことらしい。
アウラがリリアを見上げると、リリアも頷いて彼女の背中をそっと押す。
「いってらっしゃい。時間になったら伝えるわ」
「………いってきます」




