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16話

 リリアと共にテーブルに移動し、用意されていた食事を食べていたアウラ。とはいえ、そもそもが少食であるためすぐに満腹になってしまったのだが。しかし時間が経つごとに会場には人が増えていき、そうすれば彼女を目にする人も増える。そうなれば、様々な声も聞こえてくるようになるのだ。


「ふん、本当に【呪い子】が来てるとは」

「まったく。縁起が悪いことこの上ないですな」

「魔術の天才だとは聞いたが………それで呪われているという事実が変わることはないのだがな」


(あーあ………やっぱり言われちゃうんだ)


 アウラは心の中で諦めにも似た感想を抱き、リリアは他人には見えぬように拳を震わせていた。自分が言われることには慣れているが、それが母や父の迷惑になっているのはアウラにとって耐え難く、彼女の左目が冷たく周囲を睨みつける。

 無論、本来なら幼子おさなごに睨まれた程度では怖がることなどないのだが、呪われた少女の視線など周りからすれば堪ったものではない。蜘蛛の子を散らすように周囲から人が離れ、視線が合わぬように目を逸らしていく。


「………」

「アウラ………」

「ボクは大丈夫………うん、大丈夫だよ」


 彼女はそう言いつつ、胸に手を当てて目を閉じる。何かを確認するかのような彼女の様子に、リリアは無言でそれを見ていたが、数十秒ほどで目を開いた彼女は小さく息を吐く。


「夜まではまだ時間があるけど、どうしようかな………」

「そう、ね………それなら――――」

「あら、もう来ていましたのね」


 どうしようかと悩んだ矢先、掛けられた声に二人は視線をそちらに向ける。リリアは誰か分からずの事だったが、アウラはつい昨日聞いた声だったため笑顔を浮かべる。


「セリアさん、こんにちは」

「えぇ、ごきげんよう。それとセリアで結構ですわ」

「………セリア。また会えて嬉しい」

「ふふ、私もですわ」


 挨拶を交わす二人だが、セリアはアウラのそばにいたリリアに向き直り、丁寧にお辞儀をする。


「お初にお目にかかりますわ。私はセリアと申します。以後お見知りおきを」

「お母さん、昨日話した新しい友達だよ」

「まぁ………リリアです。アウラと友達になってくれてありがとう、セリアちゃん」

「お礼を言われるようなことではありませんわ………それより、そろそろ何をするつもりなのか教えてくれても良いと思うのですけども」


 セリアはアウラの隣に立ち、テーブルに並べられた料理を皿に取っていく。そうしながらもアウラにそう問いかけると、アウラはきょとんとした表情を浮かべた後、すぐにニコッと笑みを返す。


「ダメ。見てのお楽しみだよ」

「その歳にして焦らしだなんて………あなた、良い悪女になれますわね」

「良い悪女ってなに………?というか、嬉しくない………」


 そんな冗談を交わし、同時に笑みを溢す。リリアはそんな二人の姿を見て、心の底からホッとしたように微笑みを浮かべた。このような境遇に生まれてしまった以上、娘に普通の幸せを経験させることすら出来ないのではないかと不安に思ったことは一度や二度ではない。けれど、今のアウラは友人と取り留めのない笑い話を交わすただ普通の少女であった。それが、リリアにとっては何よりも嬉しいことで。


(………どんな時でも、あなたは自分で未来を掴みとれる………私が思っているよりも、ずっと強い子なのね)


 【呪い】を破った奇跡も、魔術の知識も、ワイバーンを撃退する力も、そして対等な友人も………全て彼女自身が自らの力で作り上げてきたもので、今の自分は彼女に何もしてあげられていない。寧ろ、今の彼女を見ていると、自分はただ見守り、健やかな成長を願うことだけが正しいのではないかとも思ってしまう。


(それでも、少しでも出来ることがあるなら………)


 少しでも探してみようと心に決めつつ、リリアも料理に手を伸ばす。あの【呪い子】と呼ばれた少女が、普通に会話をしているという光景が異様に思えた人々は様々な噂を呼ぶが、二人はそんな声など聞こえぬかのように会話を続けていた。もしかすれば、本当に聞こえていなかったのかもしれないが。


「そういえば、昨日私がお勧めした魔術教本は少しでも目を通していただけたかしら」

「うん。まだ全部は読めてないけど………テーマが面白いね。続きが気になるから、帰ったらゆっくり勉強するつもり」

「………!少し読んだだけで、あの本の良さが分かるだなんて。やっぱり、あなたは私が見込んだ通りの魔術師ですわ」


 魔術のこととなると、互いに熱が入るのはやはり根っこから魔術に心を奪われた者同士だからなのだろう。その後も二人は話題が尽きることなどないかのように話し続け、少しずつ日が傾いていくのだった。





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