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人違い殺人?

(絶対ムリだって! うまくいかないって!)

(なんですとぉ!? この私の天才的頭脳が導き出した!)

(残念だけどソレ言うキャラは大抵頭悪いんだよ!)


 三姉妹の彼女に『兄の花馬』とかいなくてよかった。


(気配がしないのと意識がないのは全然別問題でしょ!)

(我々はみんな正気じゃないので大丈夫です)


 だからって花恭さんをジャンクに危険へ(さら)しすぎじゃない!?

 こっちのミスでも真っ先にバレるのはこの人だよ!?


 寝てるうちに死ぬのが確定したとかなったら悪夢がすぎる。

 いや、夢が覚めてから知るんだけど。

 寝てるのが悪いのはそうだけど。


(じゃあ小春さんを下ろしましょうか?)

(えっ)

(私は構いませんよ? 勝手に動いたりしなければ)

(……)

(……)



(花恭さんでいった方が勝率高いんじゃない?)

(はいな)



 断じて我が身かわいさではない。

 天下国家、人々の安寧がため、最もうまくいく公算が高い手を選んだのみ。

 致し方なきことである。


(で、マリオネット花恭さん作戦でいくとして。うまく刺せるの?)


 そのうえで問題は、『誰が』以前にそもそも作戦自体が破綻していないか。

 花鹿ちゃんにどのくらい人形劇の経験があるかは知らないけど。


 こういうのって、せいぜいチャカチャカ踊らせるのが関の山なイメージある。


(問題ありません。パワー、精密動作性、ともに()()()なコンテンツの触手級です)

(ごめん分かんない)

(それはもう、いかなる戦うヒロインをも制圧し、()に入り(さい)穿(うが)つ愛撫を……)

(分かった分かった!)

(お分かりいただけてうれしいです)


 疲れる。

 あと君こそ戦うヒロインだからね?


 無益な会話をしているうちにも、ツチノコはどんどん近付いてきている。

 エロ談義(一方通行)してる場合じゃなかった。


(いつ仕掛けるの?)

(とりあえず頭が真下を通りすぎたら、マリ花さんを下ろしましょう)

(語感がマリファナなのよ)

(ヘビは視力が悪く、視野も狭いので。背後からならバレることはないと思います)

(なるほど)

(その代わりゆっくり下ろすんだよ。止まってたら全然気付かないけど、動いてるものには敏感だから)

(なるほど、勉強になる……



 あれ?)



 思わず花鹿ちゃんの顔を見直す。

 急にタメ口だからビックリした。

 声もいつもより低かったし。


(あわ、あわわわわ……)


 ち、違う!

 今のは花鹿ちゃんじゃない!

 口に手を当てて、目を見開いて震える人間のソレじゃなかった!


 そうだ!

 コイツは!


 慌てて振り返ると、そこには


安房守(あわのかみ)と言ったら表裏比興(ひょうりひきょう)の真田安房だな。

 さて、



 僕を()()()の目に遭わせてくれようとしてるみたいだね?)



 うわあああ! 糸目レベル100(?)の笑顔だ!!


(ちっ、違うんの、これは!)

(何が違う。言ってみろ)

(私と小春さん、並んで寝転んで。なんか浮気現場見つかったみたいですね!)

(この状況で何言ってんの!?)


 一瞬マジの殺意が見えた花恭さんだけど、


(まぁいいや)


 逆に呆れ果てたのか、追及を止めた。

 もしくはそんなことにこだわってる場合じゃないんだろう。


 彼はチラリと下、ツチノコがいる方へ目を向ける。


(そんなに『僕が寝てるから気配がない』とか言うんだったらさ。



 刀だけ包帯で飛ばしたらいいんじゃないの)



((あ))











「どう? 花鹿ちゃん」

「死んでますね」


 あれからものの数分。

 私たちは空中キャンプの上から、動かなくなったツチノコを検死中。

 花鹿ちゃんが包帯で木の枝を操り、おそるおそるつついている。


「ま、首と胴を切り離されても死んだフリだったら、お手上げということで」

「じゃあそろそろお店に帰る……」

「夜の山だし、妖怪関係なくこのままいた方がいいかもよ」

「とりあえず真っ暗ですからライト付けてください」

「虫寄ってこない?」


 とは言いつつ、ランタンを点けて頭上の枝に引っ掛ける。

 ただ、花鹿ちゃんはまだ地上を見ながらこっちに手を伸ばして振る。

 明るくしたいのは下みたい。懐中電灯渡すか。


 なおも真面目に検死を続ける彼女は、


「花恭さん、ちょっと」

「なんだい」


 下の死体を見ながら、わざわざ応援を呼ぶ。


「コレ、改めてどう思います?」

「あー、ね」

「なになに? まだ何かあるんですか?」


 ちょっと気になるじゃないの。

 二人は疑問というより、なんか『興味深い』って感じ。


「いやね、



 本当に()()()()()姿()()()()()()()()、と思って」



「えっ?」


 どゆこと?

 いやだって、ツチノコじゃん。


「あぁ、アレですか? 『せいぜい似たようなのの見間違いだと思ってた』って?

 よく言いますよね、『獲物を飲み込んだ直後のただのヘビ』とか」

「いや、そうじゃなくて」

「え?」


 なんか話が噛み合わないぞ?

 専門家の思うことが素人に分かるはずないのはそうだけど。


 いったい何がズレてる?

 もしや、


「『そう』思えば『そう』なる、を再認識していたところです」

「花鹿ちゃんも知ってたんだ、その言葉。

 で、どういうこと?」


 もっと分かりやすく、というかストレートに言っていただけると幸いです。


「そうだなぁ」


 花恭さんは花鹿ちゃんから懐中電灯を受け取る。

 わざわざそうしてまで重点的に照らすのは、ツチノコの頭。



「『正体はツチノコではないのか』とか言われてたら

 本当にツチノコみたいになるんだな、って」



「えっ?」



 もしや、前提から全部違う、とか?



「何言ってんの? え? 『ツチノコみたいに』って?」


 みたいも何もないでしょ。

 コイツは正真正銘ツチノコで、私たちはソレを求めてここまで来たんでしょ?


 私もまさかツチノコが妖怪だったとは思わなかったけどさ。


「あぁ、小春さんには言ってなかったな」

「なにっ」


「アレはな、ツチノコじゃないんだ」


「えっ」


 花恭さんは死体の頭部を強調するみたいに、ライトで周りを円に照らす。



「『野槌(のづち)』っていう、純度100パーセントの妖怪だ。



 UMAでもなんでもなく」



「マジで!?」

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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