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バナナスネークにうってつけの日

 その日はもう今から仕込みだし、休み明けでお客さん入れたいし。

 さすがにお断りした。






「小春ちゃーん! バイト入れたの!」

「えぇ、まぁ」

「お嬢ちゃん名前なんていうの?」

「みんなからは『ぺこちゃん』って呼ばれてます」

「ぺこちゃん!」

「ぺこちゃんようこそイエー!」


 ありがたいことに、常連さんたちも『待ち侘びた』と駆け付けてくれて。

 さらにありがたいことに、花鹿ちゃんが店を手伝ってくれて。


 止めたんだけど聞かないっていうか、やってみたかったらしい。


 次の定休日までは、そんな感じで過ごした。


 ちなみに変に名乗って花恭さんとの関係を


『どっちも花じゃん』


 って探られても面倒だから、彼女は客にあだ名で通した。



「源氏名ですね!」

「うーん」



 お酒提供するお店でその言い方はやめてほしいかな。


 ちなみに。

 一躍看板娘となった花鹿ちゃんに対抗して、花恭さんも手伝ってくれるように


 とかは一切ない。











 ってことがあってからの、最初の定休日。



「ツチノコイエー!」

「ツチノコイエー!」



 朝からうるさい。

 まだ7時だぞ。


 2階の部屋を一歩出た廊下。

 中で騒がないのは配慮かもしれないけど。

 ドア開いてるから一切の意味がない。


「昨日も深夜営業だったんですよぉ〜? 寝させて……」


 高校生は働かせていい時間帯が決まってるから、花鹿ちゃんは先に上がった。

 だからそのあとすぐ寝れたかもしれないけど。


 花恭さんは看板まで飲んでたでしょ。

 元気すぎる。


「何言ってるの。今日はまえまえから抑えてたでしょ。約束守り」

「んなこと言われたって……」

「今夜は寝かせないぜっ☆」

「もう朝よ花鹿ちゃん」


 天岩戸をやられる側になったときの鬱陶しいこと。

 神話じゃ天照は『楽しそう』ってつい出てきちゃったらしいけど。


 実際は騒音被害で病んだだけじゃないの?

 いや、病んだから籠ったんだっけ。



 なんにせよ、出ていって相手しないと終わらない。


 まともに視線を向けるとそこには


「小春さん遅いよ! お腹空いた!」

「今日は絶好のツチノコ日和ですよ!」


 ル◯ン追い掛けてそうな帽子にコートの花恭さんと、

 近所の遊歩道でセミ捕りしてそうな帽子と籠、網の花鹿ちゃんがいる。


 ……ツチノコとは?


「なんでこの年にもなって、ツチノコなんか探しに行かなきゃいけないの」

「ツチノコに年齢制限はないよ」

「18歳未満の方もご利用いただけます」

「そういうことじゃなくてさ」


 花恭さんに部屋から引っ張り出され、階段の方へ押していかれる。

 どんだけお腹減ってんの。

 てかそれなら自分で食べなよ。

 まだ手も洗ってないよ。


「なんだい、ツチノコ信じてないクチかい」

「いやぁ」


 その格好で押さないでください。

 連行されてる気分です。


「そうじゃないですけど。妖怪とかウジャウジャいる世の中ですし。ただ」

「タダじゃありませんよ。賞金133万円です」

「そうじゃなくて、って133万!?」


 そんなするの!?


 って一瞬思ったけど、知名度とか、未確認生物の確保って考えたらなぁ。

 なんか、もっともらえていい気もする。


 いや、変な形の蛇捕まえただけで100万、だったら破格なのかな?


「じゃなくて。いわゆるUMA的なアレでしょ? 妖怪じゃないじゃん。

 花恭さんが捕まえたがる意味が分からない」

「なんだ、そんなこと」


 1階に着くなり、カウンター席に腰を下ろした花恭さんは『何言ってんだコイツ』って顔。


「133万だよ? 133万」

「それくらいあなた方にしたら、必死になるような金額じゃないでしょ」



「でも小春さんの借金ごっそり返るじゃん」

「今すぐ行きましょう」











 朝ごはんを食べ終えて、私たちはツチノコ狩りへ。


 待ってろ133万円!

 唸れおじいちゃんの愛車!

 あ、やっぱりあんまり唸るとエンジン周り不安になるからやめてね。


 それはさておき。

 車はグングン23区を飛び出して、



「私も東京長いですけど。まだまだ来たことないとこあるものですね」


 東村山市の、それもだいぶ埼玉県に近い方。

 私はヒゲダンスが好き(世代ではない)。


 普通にハイキングスポットみたい。

 そうじゃないと誰もツチノコ見つける機会ないよね。

 併設された駐車場があるので、ありがたく停めさせてもらう。


 で、車から降りる。


 おおう、改めてデカい山だ、

 っていうと刑事ドラマっぽい。


 ただ、遠くから見てると全容が分かるから


『大きい、登りたくない……』


 ってなるけど、麓からだと逆にスケール感が行方不明。

 ここまで来たら帰るのももったいないし、


「これが133万の山!」

「そう言われると不動産価値があるのかないのか」

「誰も相場分からないしな」


 お金のことを考えたら登れそうな気がしてくる。


「今の私、阻むものなし!」

「金の亡者ですね」

「世の中から争いがなくならないわけだ」


 なんとでも言え! 私の人生を左右するんだ!


 本家じゃ勢いで借金関係なく花恭さんに協力する宣言したけど!

 それはウソじゃないけど!

 今も撤回する気はないけど!



 それはそれとして、人間借金からは解放されたいでしょ!!



「花恭さん! ここに133万がいるんですよね!?」

「いるのはツチノコね」

「イエスッ!」


 念押しすれば、確定的な返事が返ってくる!

 勝った!


「エ⚪︎クスに書いてあったよ。


『東村山の──山でツチノコに遭遇した』


 って」


 情報源が虚言の宝庫SNSってのはアレだけど!

 そんなこと気にしてたら、まずツチノコの実在がどうとかいう話になる!

 だから気にしない!


 私はツチノコを求めて山に入る!


「で、こうも書いてあった。



『山の中で、坂の上からツチノコが転がってきて追い掛けられた。

 命からがら逃げ切ったけど、



 一緒に行った友人が今、

 原因不明の高熱で入院してる』」



 帰る!!

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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