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準備完了 接近遭遇

「じゃ、小春さんの武器考えないとね」


 場所は花形屋敷の一室、花恭さんに宛てがわれた部屋。

 帰りに買ってきたハンバーガーをお昼ごはんに作戦会議。


 ここまでは試験も、アクシデントなく予定どおり。


「料理人なんでしょー? だったらやっぱり中華鍋とオタマで」

「そんなので戦えるワケないでしょ。君とは違うんだ」

「じゃあお鍋の蓋と中華包丁?」

「部屋帰ってカンフー映画でも見てな」


 帰ってくるなり


『ネーネー、デートどうだったーっ!?』


 と花恋さんが乱入してきて、なんか居座ってること以外は。

 花海くんが


『試験の邪魔だ。出てけ』


 って言っても無視。

 図太い。


「花衣へ出す査定に、花恋さんのこと書きますよ?」

「ああん、ツレなぁい。私も仲間に入れてヨォ」

「ご当主なのに呼び捨てなんですね」

「ヤクザが『オヤジ』て呼ぶようなモンだね。親近感も統率の一種さ。

 それより小春さんの荷物だけどね」


 花恭さんは畳の上に風呂敷を広げて、そこにいろいろ並べていく。


 まず最初に、


「短刀くらいだったら使える?」

「……包丁と思えば」

「やっぱ包丁なんじゃないのよ」

「うるさいぞ」

「でも小春さんに短刀のリーチで戦わせるんですか?」

「おい、オレらお目付が口出しすんじゃねぇよ」


 次に、


「お札?」

「コレはまだ何も()()()()()ヤツだけどね。ちょっと投げてみて」

「とおっ」

「……」

「……」

「……」

「使いモンにならねぇな」

「レシートゴミ箱に捨てるのとは違うよ」

「紙飛行機折って飛ばすのはダメですか?」

「祟られてでも勝たないと、って場面ならいいと思いますよ」

「えへへ、やめとこうかな……」


 お次は、


「コレって、神主さんとかが持ってる?」

御幣(ごへい)ってヤツだね。でもコレはなぁ」

「小春ちゃんって霊力とか神通力みたいなのあるワケ?」

「ないからナシ」

「早いなぁ」


 最後に、


「あ、神棚で見る」

瓶子(へいし)。中身は御神酒(おみき)

「飲んでパワーアップ! とかするんですか?」

「勝手にやってな」

「冷たい」

「相手に直接掛けた方が強いとは思いますよ」

「口に含んでプロレスラーみたいにプーッてやっちゃいなよ!」


 結果、


「うーん」

「どれもピンと来ませんね」

「とりあえず全部持ってったら?」

「素人が身軽にしてないのは危険だろ」


 なんか行き詰まった感が出てしまった。

 調査自体はトントン進んだだけに、これは痛い。

 当然、


「なぁ花恭さん。これで分かったろ?

 コイツは役に立たねぇの。どころか足を引っ張るお荷物だ。

 もうスッパリ諦めて忘れちまいな」


 花海くんもこの調子。

 一周回って勝ち誇るでもなく、純粋に呆れている。


「ゴチャゴチャうるさいな。文句ばかりの男も大差ない」

「グハッ!!」


 花恭さんもそれだけイライラしてきたのか、容赦ないカウンターを入れてしまう。

 撃沈して五体投地の花海くんは、花恋さんにヨシヨシされている。


 でもこの状況は私が原因なわけで。

『大差ない』ってことはやっぱり、少なくともプラスに作用してはいない。


「まぁ、全部持ってったって、たいした重さじゃないでしょ。臨機応変にやってみます」

「そんなこと言ってもな」

「近距離になったら危ないですよ」


 もっというと、その根源は心配してくれる気持ちからに他ならない。


「そこはほら、がんばる、……って言えたらカッコよかったけど。


 花恭さんがアシストしてくれるでしょ?」


 別に『一人で全部倒せ』とは言われてない。

 むしろこれから二人正式にやっていくなら、大事なのはコンビネーションのはず。


 すると花恭さんも、



「当たりまえじゃん! 任せて!」



 ちゃんと乗ってくれた。


 不安がっててもしょうがない。

 査定で言えば、自信のなさは減点対象だと思う。


 からにはここは、勢いそのままに突っ込んでくのが吉。



「相手が誰だか知らないけどね! 日本の魂お米の敵は、私たちでキッチリ退治してやるぞ!」



 決起集会とばかりに、立ち上がってハンバーガー(お米じゃない)を掲げると



「「「おー!!」」」



 みんな(撃沈した人除く)も同じようにポテトやらドリンクやらを突き上げた。



「いや、ややこしいから、花恋さんは着いてこないでくださいね?」

「なんでよ!」











 それから2時間くらい、突貫で動きのレクチャーを受けて。

 体力温存と夜仕事に備えて仮眠。

 起きてから軽食。食べすぎたら鈍化するし。


 まさか令和に『打ち勝って喜ぶ』が出てくるとは思わなかったけど。


 食べ終わって胃を落ち着けたら、アップがてらに動きの復習。

 仕上げになんとなくお風呂入って身を清めたら、



「さて、そろそろ行こうか」



 日付が変わる少しまえ、全員集合して出発した。






 今回運転する車はキャンピングカー。

 万が一私が重傷を負った場合のことを考慮して、ベッド付きにしたらしい。


 後部座席の4人はUNOで遊んでいる。

 そう、4人。


「はい花海くん『UNO』って言ってないー!」


 結局花恋さんが来てる。


「なんでそうまでして着いてきたがるんですか? 私の試験ってそんなにエンタメなの?」

「えー? だってぇ、仲間は多い方が心強いでしょぉー?」

「仲間だったんだ」

「えっ」


 ちなみに彼女は部外者だから私服だけど、

 お目付け役の二人は羽織を着ている。


 よく知らないけど大事なことなんだろうね。

 花海くんの背中には朝顔の刺繍があった。






 夜道をしばらく走って

 たどり着いたのは松尾、昼に来た田んぼ。


「ここでいいんですか?」

「大丈夫。ヤツは水路でしか移動できない。枯れてる田んぼも()()()に見えて繋がってた。


 出てくるならこの筋だ」


「了解」


 ということで、狭い畦道で脱輪しないよう神経を尖らせて進むと



 10分……20分は経ってないかってタイミング。



 T字路に差し掛かって、


『うわぁ、直角カーブかぁ。嫌だなぁ』


 なんて思ったそのとき。


「ん?



 あぁ!?」



「どうした」


 私の叫びに、後部座席の花恭さんが駆け付ける。


「あ、アレ!」


 私が指差す先。

 T字路真正面の田んぼの中、ヘッドライトに照らされて



 何か巨大な影が蠢いている。

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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