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査定スタート

 内容はとんでもなかったけど、短時間で終わった裁判。


 アレから私たちは、話にあった松尾の方へ来てる。

 さっそく当たるべき相手の情報収集ってワケね。


「先に調べてた、花……さんに聞いたらいいんじゃないんですか?」

「それだけどね」


 住宅地の隙間に田んぼがあるのか、田んぼの中に住宅のコロニーがあるのか。

 そんな街並みの、一応アスファルト、でも畦道程度の幅の道を行く。


「1からやった方が評価ポイント高いんじゃない?」

「非効率な日本人根性だなぁ」

「みんな日本人だし」


 2歩先を行く花恭さんは、もう羽織を着てない。

 集まりが終わるや否や脱いじゃった。


 似合ってたんだけどな。

 でも暑いし街中歩いてたら変な人になるし、しょうがないよね。


「でも評価ポイントっていってもですよ」

「マイナス100億点」

「お目付け役がコレじゃ」

「私もいますが?」


 隣の花鹿ちゃんと、

 私と花恭さんのあいだで壁になってる花海くんも着ていない。


 この二人だと、地元の青年会みたいになるね。


「あ、そうだった。身内感強すぎて」

「そのうち親戚になるかもしれませんもんね」

「あ゛あ゛!?」

「あんまりそっち方向広げないで。私刺されたくない」

「君ら仲良いね」

「あ、京仕草だ」

「静かにしないとぶぶ漬け出されちゃう!」


 ネタにしてるけど花鹿ちゃんは京都人なのかどうなのか。


「花恭さん。あんなゴチャゴチャ騒いでるだけのヤツ、ホントに役に立つのか?」


 花海くんが呆れた声で花恭さんに話し掛ける。

 いや君も騒いでた側でしょ。


「ま、今はいいさ。情報収集っても現地確認。相手の目星はついてるし。特にさせることない」

「ふぅん。それもそうか」


 さすがに尊敬(で済む?)相手が言うことに、直接歯向かうほどじゃないらしい。

 というのは置いといて。


 花恭さんの発言や二人のリアクション的に、私以外は敵が分かってるっぽい。

 気になるけど迂闊に聞いたら減点ポイントになりそうな気がする。

 黙っておこう。

 必要なタイミングで教えてくれるでしょ。


 なんて、全員雑な感じで進んでいるうちに


「ここか」


 先頭の花恭さんが足を止める。


 そこには、他が金の稲穂を垂れるなか、

 空き地のようにポッカリ空いているブロック。


 もう水も張られていなくて、ひび割れた土が剥き出しになっている。


「あれは、干からびた苗ですか」

「みたいだね」

早稲(わせ)や早期栽培の落ち穂じゃない、ってことですね」

「そうなるね」


 米農家なんて、ただでさえ儲からないのに。

 こんな光景見たらやるせなくなる。

 しかも、


 広がる田んぼの中、同じようなポイントがポツポツ、と。


「ミステリーサークルみたい。もしかして犯人は宇宙人?」

「は?」

「小春さんマイナス200ポインツ」

「真面目にやってよ」


 そ、そこまでボコボコにしなくても……。

 自分でもおもしろくないジョークだとは思ったけど。

 花鹿ちゃんがメモ取ってるのはただのアピールだと思いたい(なんの)。


 そのフォローってワケじゃないだろうけど、


「じゃあ小春さん、真面目ついでに。今回の妖怪、どんなのだと思う?」


 花恭さんが話題を変えてくる。


「どんな」

「固有名詞当てなくても、『こういう感じの』でいいよ」

「うーん」


 もしここで答えられなかったら、花海くんはここぞとばかりに押してくるはず。

 ……めっちゃこっち見てるし。


 それは花恭さんにとっても不利なワケで。

 てなると、


 私が答えられると見込んだ、


 つまり妖怪の知識はいらない、一般常識で応えられる、

 あるいは、


 農家との付き合いがあったおじいちゃんから、いろいろ聞いている

 多少詳しい私なら分かる内容ってこと。


 改めて田んぼを見てみる。


「まず、この有りさまだとジャンボタニシや台風被害じゃないですね。

 タニシなら、根こそぎやられて1ブロック放棄するまえに対策する。

 台風ならもっと苗がグチャグチャに落ちてると思います」

「なるほど?」

「そうなると、残るイネがやられる理由で多いのは、気温、日光がキツすぎるってこと。

 この『田んぼが干上がってる』って状況にも合致するし」

「ほう」


「でも、それも違う」


 花海くんは最初から仏頂面だから分からないけど。

 花恭さんの表情的に、問題を感じるようなルートではないらしい。

 花鹿ちゃんのママの味キャンディーな表情は不安になるからやめてね。


「それが原因なら。日当たりの関係上、この田んぼとその周囲からダメになっていくはずです。でも」


 そう、さっきも言ったように



「飛び地に、まばらに、点々と枯れてる。しかも、区画ごとにキレイに、まるっと。



 だからこれは、水関係のトラブルがあったってことです」



 花恭さんの目を真っ直ぐ見つめると、



「僕もそう思う」



 深く頷いた。


 なんだ、周りくどいルート通ったけど結局


『田んぼが枯れたのは水の問題だ!』


 なんて、誰でも真っ先に思い付くことじゃん。

 それに筋道立てられたら追加点、そもそも分のいい勝負だったんだね。


 まぁ花海くんは腕組み、花鹿ちゃんも急に真面目な顔でメモ。

 どういう評価されてるのかは分からないけど。


「じゃあ小春さんが意外に賢いと分かったところで」

「意外ってなんですか」

「もう少し調べものしたら帰ろうか」


 花恭さんもあまりに気にしてないみたい。

 しゃがんで田んぼを覗いてる。


「そうなんですか? 意外に早いんですね」

「目星はついてるんだって。それに」

「それに?」


 そりゃそっか。



「小春さんも戦うからには、準備の方に時間掛けたいでしょ」



 本番は、

 今までで一番かもしれない山場は、このあとなんだから。






 そのあと私たちは、他の枯れた田んぼを確認してまわった。

 花恭さんは()()()()()水路の方を確認すると、満足そうに嵐山へと引き上げた。

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

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