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グラン(偉大)な『おこげ』

 さて、ス◯オヘアーだかミルクヘアだか知らないけど。

 無事牛乳泥棒は退治できた。


 それはいいとして、


「あの。今からコレ、掃除しないといけないの?」



 問題は床で水たまりになった吐瀉ぶ……牛乳。


 うん、他に何も混ざってないから純粋な牛乳。



 とにかく、私の身長より長い幅してるけど。


「そうだね」

「雑巾とモップは持ってきましたけど」

「もう4時回ってますよ!? 迂闊にしてると日が昇っちゃうよ!?」

「だから僕はもう寝る」

「薄情者!」


 妖怪の件が終われば無関係とでもいうのか。

 花恭さんの態度は冷たい。


「今回は私が仕留めたんだし、手伝ってくれてもいいじゃん!」

「ていうか小春さんも寝たらいい」

「あ、それもそうか」


 目の前に文字どおり広がる、メンドくさい現実。

 思わず(やす)きに流れそうになったけど、


「いいんですか? 夏なのに、大量に常温で放置して」

「ぐっ!」

「飲食店にあるまじき腐敗臭が、それも牛乳の……」

「分かってるよぉ!!」


 河童トンコツのときもお客さん離れたしね!

 チクショウ!


 ちなみに河◯ラーメンってお店は実際にあるんだって。


「私も手伝いますから。花恭さんも、ね?」

「雑巾はしないよ」

「ありがとうございますマジで」


 こうして3人掛かり、床を掃除して


 寝るとき時計は見なかった。

 虚しくなるから。











 そして翌朝。


 いやお昼。

 起きたら13時。

 普段ならもう仕込みを始める時間。


 時間は押してるけど、そのまえに


「さて、取り掛かろっと」


 昨日仕留めたミルクヘアを調理する。


「楽しみだねぇ」


 花恭さんたちもカウンターに座っている。


「何作るんですか?」


 花鹿ちゃん、よくぞ聞いてくれました。



「今回はグラタンを作ろうと思います」



「おぉーグラタン。僕好きだよ」

「おいしいですよね」


 食材にアレルギーがある、って人以外で嫌いな人を聞いたことがない。



 というわけで、さっそく調理スタート。



 まずお好みの野菜を準備します。

 今回はタマネギ薄切り、マッシュルームも薄切り、ブロッコリーは小さく小さく。

 マッシュルームは縦に、キノコの形が分かるように切ろう。

 ヤッフー(某配管工)。



 次にメインイベントとも言えるミルクヘア、

 ウサギ肉に取り掛かる。


 血抜きはすぐにしないとダメになるから、昨日のうちに済ませておいた。

 その際に内臓も取り出し、毛皮も剥いだ。

 あとは調理するだけ。


 ……つまり、掃除がなくてもすぐには寝られなかったんだよね。


 それはさておき。

 逆さ吊りにして足首に切れ目を入れると、あとは意外にビローンと剥げる。

 足とか頭の骨外したり、別の作業はいるけどね。


 っていうのを、動画見ながらやった。


 本当はしばらく寝かせて熟成させた方がおいしいんだけど。

 妖怪肉を冷蔵庫で長期保存は勘弁してほしい。

 人間用の食材も入れるんだし。



 と、裏での話はここまでにして。

 シチューなら足とかドカッと入ってる方が見た目も映えるけど


 今回はグラタン。

 大きすぎると全体の調和が崩れるし、お皿も肥大化しちゃう。

 おとなしく一口サイズに。


 準備ができましたら、鍋に放り込んで中火で炒めていく。

 あとでオーヴンで焼くから、徹底的に火を通す必要はない。


 実は炒めず直でオーヴンにインする『グラタン・コンプレ』の方が一般的。

 でも時間掛かるし花恭さんうるさいし。

 今回は『グラタン・ラピッド』の手法にします。



 さて、具材を炒める一方で。


 鍋をもうひとつ用意する。

 大掛かりだね。


 こちらにはお湯を沸かす。

 マカロニを茹でる用。


 ただ、マカロニもこのあと火が通る。

 ちょっと硬めくらいでいい。



 で、具材の準備が整ったら。

 マカロニはザルに上げ、お肉とお野菜もお皿に取って



 根幹をなす、ベシャメルソース作りに入る。


 洗い物が面倒でなければ、鍋を増やして並行してもいい。


 ただ、ベシャメルソースは焦げやすいから、できれば片手間ではやらない方がいい。


 あとこれはグラタン・ラピッド。

 具材を炒めて出た脂や旨みがある。

 これを逃さないため、やっぱり鍋は使いまわしたい。



 まずは牛乳を沸かしておく。

 コレがまた、お湯の比にならないくらい膨れ上がる。

 噴きこぼれが危ないから、やっぱり並行作業は非推奨。

 できれば撹拌した方がいいし。



 で、もうひとつの鍋で小麦粉とバターを炒める。

 焦がしバターとか流行ったけど、このソースに苦味はいらない。

 やっぱり片手間は(以下略)


 量は1対1で。

 作る量とかお好みの味や粘度があるから、一概には言えないけど。

 牛乳で伸ばすことも考えたら、思い切った量を使うことになる。

 お菓子とグラタンは製造過程を知らない方がおいしく食べられる。


 で、両者をよく練り合わせたら、適宜牛乳を加えて伸ばす。


 ちょうどいい粘度になったらベシャメルソースの完成。



 したらば、


「お腹空いたー」

「いい匂いー」

「クリームシチューみたいなもんでしょ? もうそのまま食べていいんじゃない?」


 とか喚くアホどもを無視しつつ。


 耐熱皿に具材を盛って、上からソース。

 さらにシュレッドチーズ、パン粉、パセリを散らす。

 カロリーが気になるなら、チーズを減らしたりパン粉を抜いたりしてね。


 で、だいたい10分から。

 具材に火が通るまでオーヴンで焼いたら、



「はい、お待ちどおさま。



『ミルクヘアのグラタン』ね。



 花鹿ちゃんのはチキン」

「来た来た来た」

「焦げ目がキレイです」

「タバスコはお好みでね」


 お酒は前回に引き続き白ワイン。


「なるほど、どおりでシチューじゃなくてグラタンなんだな」

「ウチは小料理屋ですから。チーズを載せる方がワインに合います」


「「いただきます」」


「はいどうぞ」


 フォークが白い膜を破り、うにょ〜んと持ち上げる。

 その絵面だけでもう勝利を確信する。

 我ながらおいしくなさそうなオノマトペだけど。


「あぁおいしい。濃厚なのに優しい味で、女の子の理想です」

「男子も好きだよ。で、ウサギの肉もまた淡白で。鶏肉みたいな味と食感だな。ツチノコに引き続き」


 ていうか、牛、豚、羊が特殊なんだと思う。


「でもコレがまた、白ワインに合うと」

「しっかり熟成させて味を出せば、赤ワインもアリでしょうけど」

「タバスコ掛けたらまた味が締まりますよ」

「赤と緑があるけど、味はどう違うんだろう」

「両方掛けたらいいんですよ」


 イタリア国旗じゃん。


 まぁ楽しんでいただけてるようで何より。


 仕込みまえに洗い物が多くなって憂鬱だけど、作った甲斐はあった。

 なんて思っていると、


「で、ぺこちゃんはシチューで白米食べられるタイプ?」

「掛けて出されたら食べますけど、基本パンです」



 またシチューの話してる……。











              妖怪のペット問題 完

お読みくださり、誠にありがとうございます。

少しでも続きが気になったりクスッとでもしていただけたら、

☆評価、ブックマーク、『いいね』などを

よろしくお願いいたします。

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