真実【EP2】
養子になった少女は、俺の妹になった。
彼女も俺を兄のように慕ってくれる。
彼女の名前は佐奈。
よく街へ出て一緒に買い物をするようにもなった。
佐奈が、俺の性格を変えてくれたような気がする。
今日はクリスマス。
今までは大嫌いだったクリスマスだけど、もうそんな気持ちはない。
夜は家族で一緒にクリスマスパーティでも開こう。
きっと、佐奈も喜ぶだろう。
そのうち佐奈にも友達ができた。
佐奈を公園へ遊ばせておいて、俺は街へ買い物へ出かける。
赤信号の横断歩道に並んでいると、後ろから声をかけられた。
麗華だ。
「久しぶりね」
「そうだな」
「なんで、戻ってきてくれなかったの?」
「用事があったんだよ」
「本当に?」
「本当だよ。調べものとか色々あって、部屋にこもってたんだぞ」
「二年間も?」
「……悪いかよ」
「てっきり、新しい女でも見つけて、この街から出て行っちゃったんじゃないかと思ったわ」
「あいつじゃねえんだし、そんなことしねえよ」
「ま、それもそうよね」
それから沈黙しあう。
数秒経つと、信号が赤から青へと変わった。
「じゃあ、俺、こっちだから」
「ねえ」
急に腕を掴まれた。
「なんだよ。また赤になるだろ」
「あんたに言っておきたい事があったのよ」
「は?」
「……私、あんたのこと好きよ。でも本当は……違うのよ」
「な、なんだよ」
「あんたの弟が好きなのよ」
「え……」
「でも、あんたの弟、さっさと女作って、高校なんか都会のすごいとこ行っちゃって……」
「……」
「だから私、あんたにしたのよ。……だって、顔が一緒だもの」
「じゃあ、あの合コンの時、言った言葉は……?」
「あれは、あんたの弟のことよ。……悪かったわね。騙して」
「……」
俺は急に恥かしくなって、横断歩道を走り出した。
向こう側まで走り抜けると、麗華の方に振り返る。
麗華は、待ち合わせの場所で誰かに手を振っていた。
その先を見てみると……
「あいつ……」
そこに居たのは、普段ならここに居ないはずの……弟の姿。
俺は悔しくなった。
俺はずっと麗華に騙されていたんだ。
さっさと買い物を済ますと、公園へ向かった。
五人くらいの子供が遊んでいた。
佐奈はどこだろう……
必死に探したが、佐奈の姿はどこにも見当たらない。
「ちょ、ちょっといいかな」
佐奈と一緒に遊んでいた友達に、声をかける。
佐奈はどこに行ったんだ?と聞くと、
あの後こっそりお兄ちゃんについて行く、と言ってそれっきりらしい。
俺はもう一度、街へ向かった。
事故に遭ったのかもしれない。
事故に遭ってしまったのなら、それは俺のせいだ。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
せっかく、佐奈を幸せにしてやろうと、そう決めたのに。
「佐奈ああああああああああ!!」
叫んでも、返事なんて返ってこない。
俺が買い物しているときに通った道を全て回った。
なのに、どこにも佐奈の姿はない。
何やってるんだ、あいつは。
なんで、なんでどこにもいないんだよ……!?
もう当てがなくなり、俺は再び公園に戻ることにした。