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光と影  作者: 篠沢くるみ
8/11

真実【EP2】

養子になった少女は、俺の妹になった。

彼女も俺を兄のように慕ってくれる。

彼女の名前は佐奈。

よく街へ出て一緒に買い物をするようにもなった。

佐奈が、俺の性格を変えてくれたような気がする。


今日はクリスマス。

今までは大嫌いだったクリスマスだけど、もうそんな気持ちはない。

夜は家族で一緒にクリスマスパーティでも開こう。

きっと、佐奈も喜ぶだろう。


そのうち佐奈にも友達ができた。

佐奈を公園へ遊ばせておいて、俺は街へ買い物へ出かける。

赤信号の横断歩道に並んでいると、後ろから声をかけられた。

麗華だ。


「久しぶりね」

「そうだな」

「なんで、戻ってきてくれなかったの?」

「用事があったんだよ」

「本当に?」

「本当だよ。調べものとか色々あって、部屋にこもってたんだぞ」

「二年間も?」

「……悪いかよ」

「てっきり、新しい女でも見つけて、この街から出て行っちゃったんじゃないかと思ったわ」

「あいつじゃねえんだし、そんなことしねえよ」

「ま、それもそうよね」


それから沈黙しあう。

数秒経つと、信号が赤から青へと変わった。


「じゃあ、俺、こっちだから」

「ねえ」


急に腕を掴まれた。


「なんだよ。また赤になるだろ」

「あんたに言っておきたい事があったのよ」

「は?」

「……私、あんたのこと好きよ。でも本当は……違うのよ」

「な、なんだよ」

「あんたの弟が好きなのよ」

「え……」

「でも、あんたの弟、さっさと女作って、高校なんか都会のすごいとこ行っちゃって……」

「……」

「だから私、あんたにしたのよ。……だって、顔が一緒だもの」

「じゃあ、あの合コンの時、言った言葉は……?」

「あれは、あんたの弟のことよ。……悪かったわね。騙して」

「……」


俺は急に恥かしくなって、横断歩道を走り出した。

向こう側まで走り抜けると、麗華の方に振り返る。

麗華は、待ち合わせの場所で誰かに手を振っていた。

その先を見てみると……


「あいつ……」


そこに居たのは、普段ならここに居ないはずの……弟の姿。

俺は悔しくなった。

俺はずっと麗華に騙されていたんだ。


さっさと買い物を済ますと、公園へ向かった。

五人くらいの子供が遊んでいた。

佐奈はどこだろう……

必死に探したが、佐奈の姿はどこにも見当たらない。


「ちょ、ちょっといいかな」


佐奈と一緒に遊んでいた友達に、声をかける。

佐奈はどこに行ったんだ?と聞くと、

あの後こっそりお兄ちゃんについて行く、と言ってそれっきりらしい。


俺はもう一度、街へ向かった。

事故に遭ったのかもしれない。

事故に遭ってしまったのなら、それは俺のせいだ。

どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。


せっかく、佐奈を幸せにしてやろうと、そう決めたのに。


「佐奈ああああああああああ!!」


叫んでも、返事なんて返ってこない。


俺が買い物しているときに通った道を全て回った。

なのに、どこにも佐奈の姿はない。


何やってるんだ、あいつは。

なんで、なんでどこにもいないんだよ……!?


もう当てがなくなり、俺は再び公園に戻ることにした。

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