想い【EP2】
少女はなんとか助かった。
しかし、意識はなかなか戻らなかった。
俺は、付きっ切りで看病をした。両親や看護師さんものアドバイスを貰いながら。
ある日、病室で父親に声をかけられた。
神妙な表情で、俺の顔を見ていた。
「なんだよ」
「……あの子の親が見つからないんだよ」
「え?」
「このままだと、施設に送り込むしか……」
し、施設……?
「おい、待ってくれよ!」
「……なんだ」
「知ってるだろ、親父も。あの施設はやばいってこと」
「……」
「そんなところに、こんな女の子……送り込むなんて……」
「……じゃあ、どうするんだ」
「養子にしてやってくれよ」
「……」
「……」
「……また、か」
「……」
父親は、真剣に考えてから、少し経って首を縦に振った。
俺は、嬉しくなって、その場で頭を下げた。
「言っておくが、私も大変なんだぞ」
そう言って、病室を静かに去っていった。
父親のその言葉は、俺の心にぐさりと深く刺さった。
2年経って、ようやく少女は目を覚ます。
「やっと目が覚めた?」
少女は、俺を見るなり泣き崩れる。
生きている事に安心したのだろうか?
詳しくは分からないが、そんな少女を見ると、とても癒された。
俺は2年の間に、彼女のことを色々と調べた。
彼女の服のポケットに財布があって、母が持たせたであろう封筒が入っていた。
何年も前のものらしく、その封筒はボロボロになっていたが、
住所や母の名前をなんとか確認することができた。
調べた結果、この少女は、ある殺人事件に巻き込まれている。
その事件で、母・父・姉、そして親戚の男の子を亡くしていた。
犯人は未だ見つかっていない。
「調べさせてもらったよ。君、あの事件の生き残りなんだって?」
すると、少女は当時のことを思い出したのか、目を大きく見開かせ、怯えだした。
俺は、こういう立場になったことがないから、
つい無神経に、彼女の記憶を抉りだすようなことをしてしまった。
「つらいこと、思い出させちゃったね」
震える彼女を落ち着かせようと、優しく頭をなでる。
そのうち落ち着いてきたのか、見上げようにして俺に微笑んでくれた。
俺はこの時、初めて人を守りたいと思った。
子供なんて、大嫌いだった……この俺が。