噂【EP2】
無理やり麗華に街へ連れて行かれた。
まだ朝早いから、子供の姿はなかった。
俺は、ほっと胸をなでおろす。
「本当、ゆーちゃんは子供が苦手なのね」
「……」
「ま、仕方ないわよね。中学の時、あんな目に遭ったんだものね」
「…おい」
「ああ、ごめんなさい」
麗華にはいくつか悪い癖がある。
口が滑りやすくて、噂好き。そして、思い込みが激しい。
だが、それさえなければイイ女だ。
普段よくしてもらってるんだから、文句も言えない。
「ゆーちゃん、知ってる?」
「なんだよ」
「街角のお化けの話」
「お化け?」
でた。麗華の噂好き。
「例の街角にね、小さな女の子の霊が出るのよ」
「それがどうしたんだよ」
「その街角で女の子の霊とぶつかるとね、ぶつかった子は必ず死んじゃうんだって」
「興味ないな」
「ゆーちゃん、怖いの?」
「んなわけねーだろ? つか、見たことあるのかよ。その霊」
「それがいるのよ!友達も見たって言ったもの!」
「見間違いだろ?女の子なんかそこらに沢山いるだろうし」
「ううん、あれはお化けよ。だって服とかボロボロだったし。きっと事故で亡くなったのよ」
「はいはい、思い込みはよくないぜ?」
「思い込みじゃないわよ。ちゃんと見たの!」
「もういいよ、そんな話……」
パシンッ
突然ぶたれた。
「なんで信じてくれないのよ…!」
そう言うと、麗華は一人でさっさと歩いていく。
こんなことは良くある。
だから、たいして大変な事でもない。
最終的に、寂しくなって戻ってくるのは麗華の方だしな。
俺は麗華とは逆の道を歩く。
とりあえず、暇だったから、その辺をぶらぶらすることにした。
家に帰っても、患者とかたくさんいるから親には邪魔者扱いされるだろうし、
麗華の家に戻って二度寝しようにも、そういう気分にはなれなかった。