影【EP1】
私は、彼の家の養子となった。
彼の家族はみんな暖かかった。
今年のクリスマスは、幸せだった。
ああ、ありがとう神さま。
これはあなたからのクリスマスプレゼントなのですね。
なんて、なんて素敵なプレゼント。
ああ、あの頃に戻ったかのよう。
新しいお母さん、新しいお父さん、新しいお兄ちゃん
私の、大切な……もう一つの家族。
一年後……再びクリスマス。
私は彼とオシャレをして街へ出た。
暖かい光に包み込まれて、幸せだった。
暗闇を纏ったあの頃の私は、もう私の中にはいない。
神さま、
神さま、
本当にありがとう。
なんとなく、私は目を向けた。
その場所は、私が以前歩いていた光のない街角。
そこに、私の姿があった。
なんで、私が、いるの……?
ボロボロの服を着て、力なくしたように歩いていた。
そして、あの角を曲がる。
私は、気になった。気になって気になって仕方がなくて、
彼を置いて、走り出した。
そこにあったものは……。
さっきよりも酷い、私の姿。
全身血まみれの、私の姿。
私は、周りを見渡した。
誰がこんな事をしたの!?
叫んでも、だれも、だれも返事をしない。
ねえ、起きて!
起きてよ、私!
ピクリともしないボロボロの私を、何度も何度も揺り動かす。
何度も何度もそれを繰り返しても、その少女は動かなかった。
どうして…?
どうして……?
あなたは……あなたはこれから、幸せになるんじゃない。
どうして?
どうして?
「あはははは」
甲高い声に、私は我に戻る。
笑い声のした方向に、私は振り返った。
そこにいたのは、あの男の人。
見たこともない女と一緒に、楽しそうに並んで歩いていた。
どうして……?
私は、腹が立った。
二人きりで街に出たはずだったのに、それなのに彼は……別の女と。
頭にきた私は、突っかかるように彼の傍へ寄ると、大きく叫んだ。
何してるのよ!?
この女は誰!?
あなたに、彼女が居たなんて知らなかった!!
私を騙したの!?
キッと、睨んだ。
私には、自信があったから。
ずっと、ずっとずっと一緒にいてくれた彼だもの。
私を……私を裏切るはずがない……!!
パンッ
思いっきり、弾かれた。
そして、彼は、こう言い放った。
「きたねえ餓鬼だな」
……え?
「やぁだぁ~、何言ってるの。ゆーちゃん」
隣に居た女が、笑いながら言った。
「餓鬼なんてどこにもいないじゃない。変なゆーちゃん」
そんな彼女の態度に、彼もつられておかしそうに笑った。
女には、私の姿が見えなかったようだ。
でも、彼にはちゃんと見えていた。
だって、見えていないなら、二人が去るとき、私をあんなにも凝視する?
鋭い目で私をじっと見つめていた。
怖かった。
そして……怖いのはこれだけじゃない。
私は、一体なにものなの……?
そういえば、さっきの『私』は!?
急いであの角に向かった。
そこに、私は居なかった。
どこに行ったのか、分からない。
でも、彼女は確かに死んだであろう。
そう、私も……死んでいる。