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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第8章。華燭のまつり
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80。ぎゅっと!

 背後から覆い被さるように、太陽に伸ばした指を絡ませられた。ぎゅっと手の甲から握られる。手の中の光の宝石は、キラキラと目の前を飛んでいった。


 私の右肩に暖さんの頭が乗せられた。その重さが心地よくて、頭の重さはずっしりしているはずなのに幸せを感じる。その頭に寄り添うように頬を擦り寄せた。


 暖さんは、器用に手のひら同士手が絡むように移動をさせる。そして、軽く力を入れられて暖さんの顔に近づけられた。

 寄せられた手の甲に、柔らかい暖さんの唇が這わせられて手の甲から指先に移動する。太陽の光のカーテンが、暖さんの艶を帯びた笑みを強調させる。ブワっと頬が紅潮するのが、熱で感じた。


 私は目を白黒させるしかなくて、寄せていた頬を離して少し視線を泳がせる。少しいたずらをするかのように、暖さんに鼻で笑われてしまった。黙って受け流そうと思ったが、何か反応を返さなければ手を離してもらえなさそうだ。


「あ、のぅ? 暖さん、もう終わったのですか?」



 私からの言葉は想像していた言葉ではなかったようで、肩から頭を離して顔を覗き込まれた。無言の圧に負けて、私はその視線を合わせることにした。

 目が合うと暖さんは、柔らかく微笑んだ。そして私の質問に答えるかのように、こくりと頷いた。



「えっと、手を離してもらえますか? 恥ずかしいです……」


 恥ずかしくて声が最後は消えていき、目線も下に落としてしまった。一度手が離れて行ったが、握り直されただけで手を繋いで暖さんはゆっくりと歩き始めた。

 もう離してはもらえないと、諦めてついていく。さらに傾いた太陽は、空をミッドナイトブルーに染め上げていく。小さく輝く星々が、ビーズのように煌めいて目の前に降ってくるように感じた。



 繋がれた手を、ぎゅっと握り返した。ぴょこぴょことしながら黒狐は、私の横を歩いている。暖さんは私の方を気にしているようには見えないのに、相変わらず私の歩く歩幅に合わせてくれている。



「今日は、和のところで何をしていた?」


 夜空を焦がす甘い声で、私の手を優しく包み込んで聞いてくる。

 正直に言えばいいのだが、この時間まで歩く練習をしていましたなんて恥ずかしい。しかも、明日だというのにそんなことをしていたのか、と思われたくもない。




「今日は、白無垢を着てみて歩いてみたり…… 明日の確認をしてお過ごしでしたよ。ね?」




 黒狐は、私の心情に気づいてか助け船を出してくれた。私は、その船に乗ることにした。コクコクと頷いて、黒狐の話に賛同をした。声を発したら、何か突っ込まれてしまいそうだった。

 それに、あながちそれも間違いではない。



「そうか。明日のためにも、今日は早く休んだほうがいい。朝早くに、また和のところで着付けてもらうことになるから」



(はい、そういうことは早く言ってもらえますか?)



 そう思ってから、ハッとなり妖はこういうものだと言い聞かせる。人間界とでは、感覚のズレがある。



「わかりました!」



 暖さんの家について、中から白狐が待っていた。朝と同様に着替えをしてくれたりして、いつも通りペコリと頭を下げて時音稲荷神社に戻って行ってしまった。



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