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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第1章。妖界?
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8。神様?

 そうして、神の部屋とされる神室へ案内をされた。

 暖さんは、律さんに用があると言って席を一度外した。部屋の中には、黒狐さんとふたりきりだ。


 とても小さな部屋で、白い布で覆われた棚に御簾みすが上から垂れ下がりその前に鏡とお祓いの時に使われる棒が置いてある。

 その隣には大きな太鼓も置いてあり、よく見る神社の本殿の中のようだ。




 黒狐さんがここまで堅い雰囲気でいたのが嘘のように、神室に着くとふわふわと飛び回りはじめた。ふふふと笑い声も出している。その様は、狐の妖精のように見える。


 神様の部屋だというし、何かの儀式でも始まったのかと考えていた。私の不思議そうな目線に気づいたのか、ハッとなって人間の姿になった。



 「はっ! すみません。つい!

 神室は、神のつかいにとって一番落ち着く場所なのですよ」


 つい気が緩んでしまいました、と咳払いをしている。

 律さんのようなふわふわとした耳が頭の上に生えている。律さんは丸い形の耳に対して、黒狐は狐耳になっていた。

 髪色は黒で、頭の下でお団子結びにしている少女だった。

 


 私からすると、この部屋も先ほどまでの部屋の違いは全くわからなかった。空気も、香りも特に変化はない。でも、この黒狐さんからするとかなり違うようだ。



 「あ、申し遅れました。黒狐こくここと、そうと申します! 黒狐でも奏でもどちらでも構いません。皆さんは黒狐と呼んでいます。

 恋坡さまにとって、知らない世界だと思いますので。どんなことでも聞いてください!」



 少女の姿と言うことで、私のお腹の丈ぐらいのサイズ感でとても可愛らしい。ぴょこぴょことした動きも、いわゆる小動物の様なかわいさを感じる。それに加えて、あどけない笑顔だ。



 「か、かわいい! あ、すみません。そしたら、黒狐と呼びますね!

 質問なんですが…… その神のつかいというのはなんですか?」

 ここでは、おそらく違う意味で使われているのではと疑問に思っていたので質問をしてみた。少し私の感覚とは、ずれているとこの数時間だけでも感じていた。



 「はい。それは、時音稲荷の神にお仕えする妖のことです。ニンゲンの世界では、小さな神様という方もいるようですね。血縁関係でこのお仕えする妖は、決まります。

 たとえば、暖さまのように九尾として産まれた狐。それから、私たち黒狐と白狐として産まれる狐がいます」



 「暖さんはお父さんが九尾だから、必然的に九尾になるわけですね……」



 「はい! そういうことです」

 


 黒狐が、丁寧に説明をしてくれたおかげで少し理解が進んだ。時音稲荷神社は、稲荷神社ということもありお仕えするのが狐の妖なんだそうだ。神様にまつわる妖が、お仕えすると相性が良いからそうなっているんだとか。



 「恋坡さま、こちらに座ってお待ちください!」



 「ありがとうございます」


 (暖さんが九尾に早くならないと悪い妖がでる。

 さらには、弱い妖は死んじゃうのかぁ。でも、私じゃ助けられない! だってきっと、私じゃないから。)



 「暖さまが、来ますよ」

 そう言い終わるタイミングで、暖さんがガラガラっと扉を開けて入って来た。私には、足音も聞こえなかった。さきほどの部屋でも、私には感じれない何かを黒狐は感じていた。妖なら感じられるのか、それとも神様にお仕えするからなのか。



 「律が面白い女だと言っていたぞ。俺に食べられる…… とか言ったらしいな」



 「精気を吸うって、律さんが言っていたので! てっきり食べられてしまうのかと!」



 「そんな悪趣味は持ち合わせていない」



 「す、すみません! すみません!」

 (食べられないってことは嬉しいんですが! 怖いです! 言葉で刺されそうなほどの言い方!)

 


 「別に。怒ってない」

 私をチラリと目線だけ、一瞬向けられただけだった。そして、神棚の前で止まった。ちらりと見る、というよりギロリと睨まれたかの様な感覚だった。私は、悲鳴をあげそうになるのを堪えた。そして心の中で、完全にそれは怒っています。と言うことでなんとか留まった。




 「暖さま。始めますか?」

 暖さんは、黒狐の問いかけに軽く頷いて黒狐に渡された鈴を手に取った。神社で、巫女さんが可憐に踊るときに使う鈴のようなものだった。



 右手で鈴を持ち、鈴から伸びる赤の布を左手でシャランシャランと優雅に鳴らす。そして、白の長い髪がゆらりゆらりと腕の動き合わせて揺れる。

 ふわりと足音も立てず、鈴の音だけが響き渡った。



 (暖さん……神様だって言われたら、納得しちゃいそう。)


 私は目を奪われる。ふわりふわりと動くその様は、まるで神様のようだった。

 シャンッと最後の鈴の音が神室に響き渡る。部屋に響いた音が消えると感じた時、どーーんと雷が落ちたように地面が大きく揺れた。



 正座の姿勢で見ていた私でもそのまま倒れ込むほどの揺れだった。



 「うわぁ!」



 「大丈夫ですか! 恋坡さま、お怪我ありませんか?」



 「あ、はい。ありがとうございます。」




 顔を上げるとそこに真っ赤な着物が視界の端に映った。

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