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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第8章。華燭のまつり
75/84

75。手櫛!

 手櫛で先ほど暖さんがすいたように、自分の指を通す。暖さんがしたのとは違って、髪が指に絡まる。自分の心情のように感じて、なんだか漉されて残る砂利のように心の中に引っかかる。


 その感覚に嫌気がさして、絡まったまま髪をすくのを辞めた。待っている時間は、とても長く感じた。壁にかかっている素朴な時計は、振り子を振って時間を進めている。


 引っかかった ”何か” は、わからないまま、時計の音が静かな部屋に鳴り響く。寂しさを増していくようで、立ち上がって窓のそばに歩いていって、戻ってきて座ってを繰り返す。


 足をぷらぷらとさせて、自分の足先を見つめる。途方にくれる子供のような仕草ではあるが、今の自分自身はその立場に置かれている気分だ。不貞腐れて口を膨らませて、足を揺らして俯いているだけのただの子供だ。


 (そういえば、妖からしたら私なんて生まれたてなんだっけ。そう思ったら、少しぐらい子供っぽくても誰も何も言わないよね)


 独りの時間は、人間界で幾度となく経験をしてきた。それなのに、なぜだか引っかかる。悶々とそう考えていると、玄関が開かれる音にハッと顔をあげた。黒狐と白狐が玄関先に並んで立っている。



 ふたりは、楽しかったようでふわふわと飛び回りながら部屋に入ってきた。白狐も少し普段よりも、黒狐のような飛び回り方をする。


 (なんか、既視感…… あっ、時音様を呼ぶって言っていた時かぁ)


 妖界では、数日前のことのはずなのにかなり前のように感じる。たくさんの出来事によって、ここでの生活はかなり濃い生活をしている。


 以前と同じように、黒狐は私の視線を感じてハッとなって背筋を伸ばして立つ。私の目の前でビシッと立ち、黒狐は咳払いをした。白狐は、そんな黒狐を横目に少し声に出して笑っている。白狐の可愛らしい声が、静かな部屋に響く。


 私は、先ほどまでの胸の引っ掛かりがするりと溶けていくように消えていく。思わず私は、声を出して笑っていた。ふたりは、何に笑っているのかわからないようできょとんとした顔をしている。


 ふたりは、ついにコソコソと話し始めてしまった。思わず笑ってしまった私としては、なぜ自分が笑っているのかもわからないでいる。でも、この笑いを止めれないでいた。


 「ふふっ。フゥ…… お腹痛いっ。笑いがっ、止まらなくてっ」


 私の笑いがツボだったらしく、ふたりも笑い出した。さんにんで笑っているこの空間は、側から見ればなんとも異様だろう。


 「恋坡さまっ、何に笑っているのでしょうか?」


 聞かれても答えられない質問が飛んできた。少し呼吸を整えて、最後に大きく深呼吸をした。


 「私にもさっぱりわからなくて。でも、なんだかスッキリしました!」


 

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