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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第8章。華燭のまつり
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68。機織り機!

 そうして、和さんと花さんのところへ行き私の小さな憧れの話をした。


 ふたりは目を輝かせて話を聞いてくれた。そして、それを叶えようと私以上に気合いが入っているようだ。


 「白といっても何種類もあるんだけど、恋坡は何色がいい?」


 (うん? なんか聞いたことあるやつ。白ならなんでもいいかな)


 活気に満ちた顔で、花さんはどこから引っ張ってきたのかたくさんの糸を取り出して並べる。並べられているのは、どれも白色。しかし言っていた通り、黄色っぽい白や真っ白とたくさん種類があるようだ。


 少しの違いで、一つだけ手に取って見てみると違いがわからないほどだ。正直に言って仕舞えば、どれがいいかなんてよくわからない。


 

 頭から煙が出るほど、悩みに悩んで考える。自分の憧れを叶えようとしてくれているので、どれでもいいとは言えずだからと言ってどれが良いかもわからない。

 


 横からすっと暖さんの手が伸びて、一本の糸を手にする。一番真っ白に近い色だ。何も言わず、私に差し出してきた。私の声に被せるように、和さんが嬉々とした声を上げた。


 「えっと……」


 「暖さんは、それが良いのね! 花、これと同じ色たくさん頂戴!」


 こくりと花さんは、頷いて髪が七つに分かれてそれぞれの先から白い糸がツウッと出でくる。何とも不思議な光景に、私は目が飛び出るほど目を見開いた。ゆっくりとだが着実に紡がれていく。


 それを器用に糸車につけて、糸が巻きつけられていく。勝手にクルンクルンと糸車が回っていく。そして、和さんが機織り機を貸してくれた。二台あるようで使っていない一台を使って、織り方を教わる。


 花さんが紡いだ糸を機織り機にくくりつけていく。白無垢で使う糸は、果たしてどれぐらいの量になってしまうのだろうか。


 和さんに教えてもらいつつ、機織りの機械の前に座る。和さんも心地よいテンポで機織りをしている。私は、リズム音痴が歌っているようなぎこちない音を鳴らす。想像していたよりもなかなか布にはなってくれない。



 悪戦苦闘をしながら、ゆっくりと布を織っていく。私の隣で、リズム良く織っている和さんはどんどんと布にしている。

 花さんが紡いだ糸が、吸い込まれるように和さんの機織り機に取り込まれ布に仕上がっていく。



 「は、早いですね……」


 和さんの上品な笑いが聞こえてきた。トンっと置かれたそれは、反物として並んでいる物より薄い布の筒だ。


 「ふふ。長いことやっているからね。恋坡ちゃんは、自分のペースでいいからね」


 そう言って、私の頑張って織った部分を撫でて確認をしてくれる。荒い部分を指で触って最も簡単に直してくれた。どうやっても直せなかった部分が綺麗になって、私は嬉しくなって歓喜の声を上げた。

 

 「わぁ! 綺麗になった!」


 私の背中から、和さんにぎゅっと抱きつかれた。


 「こんなのすぐに直してあげれるからね! さっ、早く織らないと終わらないよ」


 花さんの手元で、紡がれた糸が山になりかけている。早く持っていってとばかりに、紡いだ糸を指で弾いた。カランと音を立てて机に転がった。


 和さんは少し名残惜しそうに私から離れていく。その山になった糸を両手一杯にして機織り機に座って、先ほどと同じように心地いい音を奏でる。


 私も最初よりコツを掴んで、ゆっくりだがリズムよく織れるようになった。一定のテンポで刻むからか、先ほどまでのガタガタさがなく滑らかな布になっていく。


 最初は、悪戦苦闘をしていたのに今はとても楽しい。和さんが一日中、仕事とはいえ織り続けられるのも納得だ。



 (楽しい! 和さんみたいに織れたら、もっと楽しいんだろうな)


 そう思いながら、ようやく先ほどの和さんの見せてくれた反物の薄い筒程度にはなった。和さんのそばには、同じ厚さの筒が積まれている。私の織った布は同じ分厚さは、一本だけだ。


 ピラミッドのように積まれている布の上に、崩れないように優しく自分の織った布を積んだ。反物の山を見て花さんは糸を紡ぐのをやめた。

 そして、私たちが織っている様子に興味津々な視線を向けられる。


 「これだけあれば、余るぐらいかもしれないね」


 花さんにそう言われるほどの山になっているのだ。

反物(巻かれた布の筒)……一つの反物で一つの着物を作る方ができる。

※訪問着に限る。今回は、白無垢なので長さが必要。


反物は、ラップのような感じを想像していただけると分かりやすいかもしれません。

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