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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第8章。華燭のまつり
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67。華燭のまつりとは!

 華燭のまつり、その言葉は私は聞いたことがなかった。それもそのはずで、人間界でいうところの ”狐の嫁入り” のことのようだ。


 「華燭というのは、結婚。そのお祭り、すなわち時音稲荷神社のお祭り。 ”狐の嫁入りまつり” のことだ。そこで、自鳴琴時計じめいきんどけいを動かして、九尾の狐になる儀式も兼ねている」


 私は、首を傾げてしまった。なぜなら、そのお祭りは私がここに来たきっかけのお祭り。6月に行われるものだ。しかし今は人間界では、10月。もうとっくに過ぎているし、次の6月であれば 『そろそろ話す』 という言葉はなんだか不釣り合いに感じる。


 (あ、そういえば妖界の数日は人間界の数ヶ月か。それなら、今話すのも納得できそう)



 「人間界の11月にもお祭りがある。それを華燭のまつりにしてもいいとも思っている。準備もあるし、次の6月でもいいが」


 私の意見を聞いてきているようなので、思考を張り巡らせた。どちらがいいかは、決めるのが難しいのだ。


 暖さんは早くしたいのだろう。しかし、幼い頃祖母の話で 『自分で作った白無垢を着たの』 という言葉には憧れがあった。

 花さんと和さんの力を借りながらであれば、その小さな憧れも叶うかもしれない。それならば、時間をもらったほうがいいだろう。



 暖さんなら、笑わず私の憧れについて聞いてくれると思い、話してみることにした。やはり、真剣に話を聞いてくれた。


 「ふたりなら、喜んで手伝うと思う。それなら次の6月にしよう」


 あっさりと、日程が決まった。とてもあっさりだったので、忘れてしまいそうになるがこれはれっきとした ”結婚式” なのだ。


 (華燭のまつりって、いわゆる披露宴というやつなのでは?)


 まだ好きを伝えて、日が浅いというのに。何なら、顔を合わせていない期間もあったぐらいなのに。もう結婚式に飛んでしまうのかと思った。



 確かに、両親のあの反応を見ると人間界への未練は全くない。しかし、とんとん拍子に話が進んでいて少し焦ってしまう。



 「えっと、こんなあっさり決めていいものなのですか?」



 暖さんは、首を傾げた。私の意見を聞いてその通りにしてくれたのに、変な質問だと感じたのかもしれない。


 私からしたら、妖界を早く安定させたいとはじめに会ったときに言われたのだ。それを叶えるために、私は急ぎ早にここまでやってきた。

 それを私のわがままで、先延ばしにしてもいいものなのだろうか。しかもこんなにあっさりと。



 「問題ない。あとで、ふたりのところへ行って話をしよう」


 私から出て来た鍵をネックレスにされて、私の首につけられる。首にかけられたネックレスが、揺れて軽い金属音を鳴らす。


 そこまで重さはないのに、首にずっしりとした重さを感じた。

 手で鍵を持ち上げて、見惚れてしまう。金で出来ていて、青色と赤色の宝石が埋め込まれている。



 私は、その宝石の煌めきに心臓が高鳴る。瞬きも忘れるほど、私の視線を吸い込んでいく。



 「狙われないようにしないと!」


 きっとこの重さは、大切な鍵を守らないとという使命感からだろう。


 化け猫の一件で自分の力でなんとか切り抜けることができ、少し自信がついた。


 (私でもちゃんと守れるはず!)


 

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