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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第7章。強くなる!
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63。伝書鳩!

 伝書鳩を使って、稲荷神社に私がここにいることを伝えてもらった。さすがは妖界とでもいうのか、私の知る鳩ではなかった。


 大きさは、私と同じ150センチほどでひとつ目の鳩だ。それさえなければ、ただの鳩のような見た目だ。ギョロリと独特な動きをするひとつ目が、少し不気味に感じさせられる。



 暖さんは、まだ出雲へ行ったばかりで戻っていないはずだ。きっと、律さんたちが来てくれるに違いない。


 (律さんたち、心配しているよね)



 お客さんの目につかない奥の部屋で、静かに待つことになった。おかあさんが、妖界のものだけどとお茶を出してくれた。やはり、こちらの食べ物や飲み物は全て甘味が強い。このお茶も、甘くて紅茶のような感覚だ。



 これはこれで美味しいのだが、知らないで口に含むと驚いてしまう。



 (何もする事がないのは、暇だなぁ…… ようやくひと息つけるんだけど)


 そうして、のんびりと過ごして待っていた。普通であれば、もっと危機感を持つべきなのだろうが、ここにくるまでにたくさん冷や汗を垂らしたので少しくらい息つく暇が欲しい。


 暇を持て余して、気がつくとうたた寝をしてしまっていた。ハッと起きたが、窓もないので外の様子がわからない。

 暖さんの家には掛け時計があったが、ここにはない。外の様子も時計もなく、どれぐらい寝ていたのか分からない。


 (しまった、寝てた。まだ迎えはきてないんだよね。今何時だろう)


 熱いほどのお茶は、冷たくなっていた。冷え切った甘いお茶を飲んだ。起きてからも、かなりの時間が流れる。外からドタバタと音が聞こえてきて、扉を開かれた。ようやくお迎えがと思ったら、おかあさんだった。


 「お迎えだと思ったよね? 残念、まだなの。これから湯浴みに行くから一緒にどうかと思ってね」


 「はい!」


 おかあさんに笑われてしまったが、私の顔には残念だと書いてある表情をしたのだろう。かなり待っているように感じたので、そろそろかと思ってしまったのだ。


 下の階に、大きなお風呂が一つ。かなり大きくて泳げてしまいそうな広さだ。そのお湯に、おかあさんと二人で浸かる。

 熱めのお湯に、体がぎゅっとなる。私はお湯の中で、膝を抱えた。



 「そろそろ来ると思うから。もう少しここで待っていてね」


 和さんと仲がいいだけあって、人を包むオーラが滲み出ている。厳しさがあってもこうした優しさが、おかあさんとして尊敬をされているのだろう。


 こうして並んでお湯に浸かっていると、和さんと花さんのふたりと入ったことを思い出す。


 「はい、もう少しお邪魔させてもらいます」



 おかあさんは、先に湯から上がって行った。私も、のぼせる前に上がることにした。

 

 お湯から上がって、先ほどの部屋に戻るしかないと思っていたら花魁に呼ばれた。


 「さっきは、ごめんなんし。あちきも、心を入れ替えたから」

 

 花魁からは、反省の色を感じる。表情はかなり暗く、眉をぐっと下げて申し訳なさそうにしている。


 「分かりました。怪我もしてないですし、もう大丈夫ですよ!」


 私の言葉に顔を明るくして、私を花魁の部屋へ呼ばれた。


 おかあさんは先に出てから着替えもとても早く、すぐに出たつもりだったが湯上がりどころにはもうすでにいなかった。


 そのため、前の部屋に戻るとも花魁の部屋に行くとも伝えられずにいた。私は、後ほど伝えればいいかとのんきなことを考えていた。


 (これだけ広いと迷子になりそうだし。そもそも、どこにいるのかも分からないし)



 布団が2組敷かれていて、ここで寝ることになった。見世も終わり今から仮眠をとり、昼ごろに起きて食事の時間になるそうだ。


 ふわふわ素材の布団に、私の疲れもふわふわと溶け出す。妖界にきてから、私は横になるとすぐに眠りについてしまう。


 

 本当に、危機感がないのだが。あれだけ反省をしているのであれば、許してもいいと思った。


 

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