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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第6章。恋!
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57。眩しい!

 私は黒狐たちと一緒に、律さんたちのところに戻ることになった。黒狐は、 『せっかくなのでこのまま行きましょう』 と言うがそのせっかくの大振り袖を汚したくなくて私は断った。



 真っ赤の鞠の大振り袖から着替えをさせてもらった。どうにも重たくて、力が入っていたようで肩がとても痛い。先ほどまで背筋を伸ばして顎を少し引いた、綺麗な姿勢を意識的に作っていた。着替えをして気が緩み、少し緩んだ姿勢になってしまう。


 大きいため息をついて、頬を叩いて気を引き締める。私がひとりでは心配だと言われるほどに、信頼感がないのだろう。もっとしっかりしなくてはいけない。


 ため息の時にぎゅっと閉じた目を開いた。姿見の前に立つ。髪には、もらった青色に光るかんざしが存在感を主張している。

 それが、暖さんが近くにいると言われているように感じた。


 「恋坡さま、大丈夫ですよ。人間界で1ヶ月ということは、こちらでは数日ですから! それに、私たちもいますから寂しくないですよ」


 一人になるわけではない。私の今の行動はふたりに失礼だったと反省をした。


 なんだか家族旅行で置いていかれた時のことを思い出して、少し寂しくなっていた。受験もあるからと言われてしまえば、致し方がなかった。自分のためだと自分に言い聞かせ、机に向かって過ごした日々を思い出すと胸が痛い。



 でも、今回は一人ではない。それに、ここでは皆が自分によくしてくれる。

 あんなに寒くて腕を摩りたくなるほどの寂しさだった。それがここ妖界では、腕を捲りたくなるほどの暖かさで私を迎え入れてくれる。


 私も、もっとみんなのためにやれることを見つけ出したい。そう思うのだ。



 「ありがとうございます」


 黒狐は、ぴょこぴょこと飛び跳ねて私の心を明るくなるようにしてくれる。白狐は、私の着物の裾を少し引っ張った。


 「恋坡様の気持ちもわかりますけどね。気持ちが通じてすぐなのに」


 (やっぱり昨日の夜、見られていたんだ)


 昨日の今日の話で、暖さんが話していれば別だが。彼が話しているとは、とても思えないのだ。と言うことは、昨日ふたりはこっそり見ていたのだろう。


 今朝も私の布団の足元にいたぐらいだ。見られていたと思うと恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分になった。顔は爆発をしたように、一気に真っ赤になってしまう。



 「だ、大丈夫です。見て、いませんから!」


 黒狐は、私から目線を外してあからさまに嘘を言っているようにしか見えない。私は、黒狐の逸らされた視線の先に立って目線を合わせた。


 「い、いつから見てたんですか!」


 見られていた恥ずかしさで、思わず詰め寄ってしまった。もう見られていたことは、私の中で確定だった。それに、見られていたと言うことは黒狐たちの記憶から消すことはできない。それでも聞かずには行かないのだ。



 「みっ! 見てません!」


 両手をぎゅっと握って顔の近くに持ってきていて、かなり力強く言われた。その言葉とは裏腹に、目を固く閉じて私とは絶対に目を合わせないようにしている。それに、大きな声で訴えているあたりも嘘を隠せていない。



 「黒狐…… それは、もはや見ていましたって言っているようなもんだよ」


 白狐が私の心の声を代弁してくれているようだ。白狐は、やれやれと少し呆れ気味だ。


 やはり少し感じていた、見ていたかもしれないは事実なようだ。恥ずかしいが、もうどうしようもないと諦める。うっと顔を思わず顰めてしまう。


 「恥ずかしい……」


 私の声に、黒狐は目をぱっと開けて私の腕を掴む。そして、首を緩く横に振った。白狐も黒狐の後ろにふわりと回って、私をじっと見てくる。


 「私たちは、こうなると思ってましたよ! それに、良かったと思っているんです!」


 ふたりの眩しいほどの笑顔に圧倒される。もう、何を言っても仕方ないと肌で感じた。


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