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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第6章。恋!
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53。律さんと暖さん!

 キッチンに一緒に並んで、フレンチトーストを作ることになった。暖さんが気を遣ってくれ、振袖が邪魔にならないようにとたすきがけをしてくれた。


 暖さんは、普段から自分で作っているようでとても手際がいい。本当は卵液に一晩つけておくほうが美味しいが、今回は致し方がない。



 フレンチトーストが好きだというのは、子供っぽいと律さんに馬鹿にされたことがあるらしい。昨晩、私が笑ったから同じように思われたというのだ。


 「乳母は、律の母親だった。律の母もニンゲンで、その人はよく人間界のものを食べさせてくれた。律と母親とは血のつながりはなくて、後妻なんだ」



 「そうなんですね」


 暖さんと律さんは、人間界には行ったことがないそうだ。時の流れが違うので、あまり何度も行き来を好き好んでする妖はいないのだという。


 花さんのように、人間界に興味がある妖や紛れ込んだ妖しか人間界には行かないそうだ。それに、人間界に行くための扉が確実につながるとも言い切れない。



 食卓を囲んで、一緒に食べ始めた。黒狐と白狐が二階から降りてきて、軽く会釈をして暖さんの家から出ていった。



 「……俺が一番好きな食べ物は、ぷりんだ」

 先ほどの冷蔵庫の中にも、プリンが並んでいた。暖さんは、律さんよりも乳母と過ごしていたらしく人間の食べ物の味の方が好きらしい。そのため、冷蔵庫に並んでいたプリンも人間界で売られているものだった。


 急なカミングアウトに、笑いが止まらなくなってしまう。


 「ふふふ。暖さんは、意外とそういうのが好きなんですね」


 「馬鹿にしてるのか?」


 今まで聞いた事のない、拗ねたこどものような言い方をした。私は、フルフルと首を振る。


 「でも、行き来する妖はいないのでは? どうやって人間界のものを手に入れてるのです?」


 私たちも時差の激しい渡航を繰り返すのは、しんどい。それが年単位になるのだ、好きで行き来する妖がいないのは私でも理解できる。



 「もの好きがいて、人間界で買い物だけ済ましてすぐにこちらに来て売る。価値が高く、高価なものと交換させられる。そういう商売を好むものがいる。

 あさがおやの店の中に扉があって、そこが一番扉がつながりやすいんだ」



 自分の寿命より、高価なものをとる。長寿である妖ならではの考え方かもしれない。それでも少数派だから、物好きと言われるのだろうけど。

 


 食べ終わり、洗い物をした。暖さんがしてくれると言ってくれたが、食材を用意してもらったからと断った。その間に、暖さんは出かけられる準備をしに行った。

 


 一緒に作って、一緒に楽しく食事をして。家族と食卓を囲むと、自分だけが蚊帳の外で味を感じられなかった。それが、今日はとても美味しく感じた。以前、和さんたちと食べた時も楽しかったがそれ以上に美味しく感じた。



 それに何より、知らない暖さんの一面を知れたことが嬉しかった。




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