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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第6章。恋!
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47。温かみ!

 暖さんは、黒狐と一緒に時音ときね稲荷神社に急いで行ってしまった。あとで、迎えに来てくれるそうで私は和さんのお店で待つことになった。



 「暖さんのお母さんの話、少し出てたでしょう? 実は、暖さんを産んでから徐々に体調が優れなくなったみたいで。自分のせいだと思って、なんとかしようとしたのよね」




 一番年上というだけあって、和さんは弟を思う姉のようにぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。花さんは、何も言わずに足を投げ出して座り天井を見つめている。

 一方の琳寧さんは、自分も聞いていていいものかとおどおどしている。その隣で律さんは、神妙な面持ちでため息を漏らした。



 「お母さんを失ったのは、自分のせいだって自分を責めたと思う。それに、人間は弱くて守るべき対象だって認識があると思うんだよね」



 天井を見上げている花さんは、曇った表情だ。人間は、妖のように力を持たず長生きして100歳ほど。そして、それを人間界で自分も痛感したとでも言いたげな声色だった。

 妖からすると、100年ほどしか生きられないと言うのは考えられないのだろう。私たちからすれば、当たり前のことではあるけど妖は何百年単位で生きている。それは、無理もないことだ。



 琳寧さんが、何か思いついたような顔になり小さく挙手をした。

 「オレも人間界に行ったことがあります。弱くて守るべきと言うのも少し、わかります。でも、人間は温かい心を持っています。妖は、その温かい心に守られているんです」



 琳寧さんは話しているうちに、いつもの優しい笑顔になった。それはまるで、温かい心をくれた人を思い出している様だった。


「そうそう。暖のあんな色々な表情を見るのはいつぶりかな。人の温かさに気がついたんだと思うよ。

 僕は、恋坡ちゃんのおかげだって思ってるんだ」


 普段の律さんののんびりとした話し方。先ほどの神妙な顔はどこかへいってしまった。律さんは、私と目が合うとスッと細めて口角が上がった。



 足を投げ出して天井を見つめていた花さんがおもむろに立ち上がり、私と肩が触れる距離に腰を下ろした。そして、私の方に頭を預けてくる。細くて柔らかい花さんの髪の毛が私の頬をくすぐる。


 「でも私、何もしてないです。皆さんには守ってもらってばかりですし」



 私は目を泳がせる。こんなに必要だとか、認めて受け入れてもらっているのに。まだこんなことをどこか考えてしまう。

 私は温かい心でみんなを守れているのだろうか? それはきっとできていないが、正解だろう。でもこんなことを言うとまた、自分で呪いをかけると言われてしまいそうだ。

 それに、必要だと言われているのは本当に思ってくれていると、信じようと思えたのだ。



 「で、でも。皆さんが私を受け入れてくれて、必要だと言ってもらえて…… そのおかげで、私はそれに応えたいと思えるんです。私らしくいてもいいんだと思わせてくれたんです」

 私の肩に乗せたままの花さんに、背中へ手を回されて2回叩かれた。


 「それを暖さんにも伝えてあげて。私には、あなたが必要だって。それに暖さんも、恋坡のことが必要なんだよ。普段、あまり心が動かない妖が多いんだよ。人間の暖かさでそれが溶け出して、動く様になるんだよ」



 これほどの優しさをもつここのみんなは、それだけ人間の温かい心に触れてきたと言うことだろう。自分は、ここのみんなよりも温かい心を持っているだろうか。



 「恋坡ちゃん。だってあなた、こんな世界に連れてこられたのに怒りもせず。暖さんのためならって、大きな問題まで解決することができる。こんな他のひとのために、身を投げ打つことって心の温かい人でなければできないんだよ?」


 和さんから、私の心を見透かすような言葉が飛んできた。そして、和さんも立ち上がって私の横に座った。私の両隣には、くっつく距離に二人が座っている。花さんに至っては、ずっと私の肩に頭が乗っている。



 「暖さんが私にしてくれたように。今度は、私が伝えたいです。きっと大切なお父さんがいなくなってしまったら…… 想像以上の悲しみが待ってますよね」

 少しでも助けになるなら、嬉しいなとそう思った。


 「本当にいい子!」

 隣にいた和さんに抱きしめられた。肩に乗せていた花さんは、抱きしめられた衝撃でバランスを崩してしまった。



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