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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第5章。雷!
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46。稲荷街に!

 「悪かった、こんなことに巻き込んでしまって。それから、この呪いを無くすためにもその桃を僕は食べないといけない」

 私の手元の桃に指を指す。この桃は、投げるんじゃなくて食べる用なのかと桃に目線を落とした。



 「恋坡は、解呪かいじゅができる。桃を食べれば、その身が消える。それなら、一度試してみるのはどうだ」

 暖さんはそう言って、私の手の桃と自鳴琴時計じめいきんどけいを交換した。おにの返事を待たなかったが、私も桃を食べて消えてしまうのならば試す価値はあると思った。

 手にすると、またしても頭の中に音楽が流れてくる。このおにの、呪いが消えますようにと願いを込めて唄う。



 もし私の力が、妖のように存在するとするならばこの唄だろうか。このおにの力はきっと、打ち出の小槌。それならば、その打ち出の小槌をいいことに使ってほしい。この願いが、唄に乗って届くといいなと思う。



 唄が終わると、真っ暗になった空に太陽がのぞいた。いかづちが雷を止めることはできたが、暗い空はそのままだった。その空が、明るくなる。



 「ありがとう」


 そう言っておには笑った。先ほどまでの何か企むような笑みではなく、柔らかい笑みで笑った。


 解呪かいじゅがうまくいったのだろうか。以前の黒い霧が晴れるように、今回は黒い雲が晴れた。

 呪いによって、周りの空気感も暗くなってしまうのかもしれない。



 「結局、奥方が解決しましたね。オレは、ついてきただけになってしまいました」


 少し拗ねたように琳寧さんが、呟いていた。その少し幼い姿に、思わず私は笑ってしまった。その笑い声に釣られて、みんなも笑う。暖さんは、少し微笑むようにして腕組んだ。

 呪いが解呪かいじゅできたならと、私たちは安心して街に戻ることにした。



 「結局、おにと鬼の違いはなんだったのでしょう?」


 私は、帰り道に琳寧さんに聞くことにした。ここに来る間でも、いろんなことを教えてくれていたのでなんでも知っていそうだ。


 「よく分からないんです。でも、おそらく雷街いかづちまちを治めるのが鬼なんだと思います」


 ふたりの妖が見た過去の夢は、どんなものだっただろうかと空想に馳せた。



 すぐ隣である天狗の山に辿り着いた。結局手に入れた、桃の実は使わずだった。天狗の長が、自分の息子が無礼を働いたとして稲荷街まで飛んで連れて行ってくれることになった。


 天狗の長がうちわで風を起こし、私たちひとりづつに天狗がついて街に送り届けてくれた。そして、何度も何度も頭を下げて 『またお詫びに参ります』 と言って山に帰って行った。



 私は、野狐やこの村について考える。さっきのおにを解呪かいじゅをしたから、もう大丈夫だろうかと。


 そして、せっかく仲良くなったのにこれで琳寧さんは元の町に戻ってしまうと思うと寂しさを感じた。



 街の入り口から、大きく伸びる大通りを抜けた先に時音ときね稲荷がある。その大通りは、時音稲荷を境に二手に分かれている。一つは、今歩いている大通り。そしてもう一つは、律さんのお店側に伸びている城下町のような大通りだ。こちら側は、少し落ち着いていて本屋や小さな学校がある。



 穏やかな街を、足並みを揃えて和気藹々と歩く。その先から黒狐こくこが走ってきた。



 「だ、暖さま!! 大変です。お父さまが!」

 走ってきて息も絶え絶えに話す様は、ただならぬことの様に感じ取れる。自分の父親の妖力が低下していて、急いでいると言っていたことを思い出す。


 「すぐ行く」


 「今、白狐びゃっこがお側にいます」


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