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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第5章。雷!
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44。夢!

 いかづちの背後を、案内役のおにがとったようだ。左腕でいかづちの首をグッと締めて動けないようにしている。

 そして腕を離していかづちがよろめいたとろに、持っていた打ち出の小槌でいかづちの頭を殴った。

 痛みで頭を抑えてしゃがみこんだいかづちは、みるみる小さくなっていく。



 そんな最中、律さんは静かにおにたちに近づいていく。そして、懐から小さな小瓶を取り出して地面に落として割った。中からどろっとした黒の液体が、2人のおにの下にじわじわと広がった。

 黒の液体は大きな穴に変わった。




 そして、黒の蝶が穴から勢いよく出てきた。ふたりのおにの姿が見えなくなるほど、たくさんの蝶の数。ふたりの姿がすっかり蝶に包まれ、蝶たちはふたりのまわりをぐるぐるとまわるように飛ぶ。

 そして穴が消え、飛んでいた蝶も黒の粉になって消えていった。



 蝶が消え去ると、おにふたりは綺麗に消えていた。

 「夢の世界に少し入ってもらっただけだから。ふたりが出てきたら、桃を投げよう」




 おにがいつ戻ってくるのかは、分からない。そして、先に戻るのがどちらかも分からない状況だった。




 律さんがいま割った夢の瓶の中身は、昔の記憶を思い出させるものだそうだ。

 その記憶が良い方向へ転ぶこともあれば、嫌な記憶を呼び起こすことにもある。どう転ぶか分からないという。ただ律さんの経験上、過去の記憶を呼び起こすこの夢は自分の純粋なときの夢が多いのだそう。

 心が洗われて、自分のした事を反省して欲しいといった。



 今生と黄泉の国を繋ぐ蝶々。夢の世界に連れて行ったのは、蝶々だった。夢というのは、もしかしたら黄泉の国で過ごしているものなのかもしれない。

 眠る時に感じる、とぷんっと落ちる感覚も本当はそれなのかもと思えてくる。


 


 (はたして、うまくいくだろうか。こちらに戻った時には、少しでも反省の色が見えるのだろうか)

 



 「どうやって、夢の中から出てくるんですか? あと、私の夢に入ったみたいに入るのはできないんですか?」



 「さっきみたいな黒の蝶が出てきて、夢からでてくるんだよ〜! 中に入るには、少し人数が多くて難しいかな」



 もし一緒に夢の中に入りたいときは、同じ場所に立つとおんなじ夢に入ることができるそうだ。夢の中から出てきても、しばらく眠ったままのときもある。以前私が、夢の中から出ても朝まで眠っていたのがそれだ。

 


 そういえば、私が眠ったあの時は黒の蝶なんて舞っていただろうか。そもそも、小瓶を割った音すら聞こえなかった気がする。

 あの時の私は、疲れすぎていてそれどころじゃなかったのかもしれない。





 「もし出てきたら、さっきみたいに私の髪で捕まえるよ。

 だから、恋坡は自分のタイミングで投げてくれればいいよ」

 ぱちりと、私にウインクをして花さんは笑っている。花さんの隣にいた和さんも大きく顔を動かして頷いていた。


 本当にここのみんなと、出会えて良かった。



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