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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第5章。雷!
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41。雷……!

 「ま、わざわざこんな辺鄙なところに来たんだ。おもてなしをするよ」

 そう言っておには、くるりと背中を向けて根城に案内をしようとする。一際大きな音を立てて雷が落ちた。地面がものすごい勢いで揺れる。

 私の肩に手を置いていた花さんが、私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。地面の揺れは今までよりも長く続いた。



 背中を向けたまま、おには打ち出の小槌を肩に乗せてぽんぽんと動かしている。地面の揺れがようやく落ち着いたと思ったら、おには顔だけこちらに向けた。そして口角がニヤリと上がり、打ち出の小槌を持つ反対の腕を腰に当てた。

 「その紙、思い出したんだけど〜。この雷と関係があって手伝ってくれるっていうんなら。

 呪いとやらを、解呪かいじゅしてやるよ」



 「もしかして、いかづちというおにですか!」

 私は、思わず声に出してしまった。しまったと思った時には、もう遅かった。でも、私が答えてもおには相変わらず笑みを浮かべたままだった。

 そして、私の方に向かってきた。何をされるかわからず身構える。暖さんが、おにから庇ってくれるように間に立った。私の視界には、暖さんのポニーテールに結ばれた揺れる長い髪と背中だけになる。



 「ニンゲン? ……よく知ってるな! そうだ、名前の通り雷を操る鬼だ。

 おそらく人間が、よく想像する鬼とやらがそいつだよ」

 やはり、いかづちというおにが存在をしているらしい。それなら、この雷が鳴り続けるのも納得だ。ということは、今話しているおには敵ではないのだろう。



 「ニンゲンが持っているのは、桃だろう? しかも大桃樹だいとうじゅのだ。

 それがあれば、すぐ倒れる。おには、このいかづち街から出ると力が抜けるんだ。その桃が欲しくてもなかなか、外に出られなくて」



 見えないように持っている手を袖に隠したのに、桃を持っていることがバレてしまった。霊力が強いと、人には分からないが感じるものなのかもしれない。

 私はバレているとはつゆ知らず、驚いて肩を跳ね上げた。暖さんの肩から顔をひょっこり出して、私は顔だけのぞかせた。何だかかくれんぼで、見つかった気分だ。



 「い、いかづちはどこにいるのか、知っているのですか?」

 私は、おにのその目に狙われているのではと思いオドオドとしてしまう。声も震えている。おには、そんな私を見て転がりそうなほど笑った。ひとしきり笑い、目に溜まった涙を拭った。そして、煙の上がる山をおにが見上げた。


 おそらく、煙の上がるあの山にいるのだろう。いよいよ、話が大きくなってきたと冷たい汗が流れる。

 入口よりも暑く、からだに熱がこもりひっきりなしに汗が流れる。それなのに、いかづちを倒すと考えるとヒヤリとした感覚が走る。



 いかづちといえば、国を生んだ神様が倒した鬼。そんな神様が倒した鬼を私なんかが、倒せるのだろうか。

 確かにその神様が倒したのも、桃の実を投げたはずだ。でももし、投げて失敗をしたらどうしよう。不安な思いで、胸が埋まる。




 「じゃあ、みんなでいかづちをやっつけよう〜」


  (よくそんなのんびりとした話し方でいられるなあ。このおには、今から倒そうとしている鬼を知っているだろうに……)



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