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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第4章。山神様!?
35/84

35。恋坡の想い!?

 それぞれに、ひとつの部屋を貸してもらうことになった。

 和さんに誘われて、天狗の有名な温泉に女子3人で一緒に浸かることになった。ぬるま湯で、疲れが溶けていくように感じた。


 「有名なだけあって、いいお湯だね〜」



 「はい…… 誘ってもらえてよかったです!」


 花さんも、隣でほわっとした顔で浸かっていた。彼女からの返事は無いが、表情が物語っている。




 「ねぇ。ちなみにだけど、恋坡ちゃん?

 暖さんのことは、どう思ってるの? 夫婦めおとになるなら、少しぐらいそういう想いがないと…… ねぇ?」



 「えっ、そうですけど!」



 「私もそれ、気になってたんだよね。かんざし貰ってたでしょ?」



 3人でお湯の中でなごんでいたら、急に突っ込んだ話を振られた。

 正直、まだ出会って数日ではっきりとした気持ちは分かってない。


 (花さん、かんざし貰ってたの知ってたの?

 夫婦になるならって! まだ決定ではないんですよ!)



 「かんざし、貰いました! ……でも 実は、さっきの大きな天狗に壊されてしまって」

 私は眉を下げて、しょんぼりとした顔をする。

 ふたりは、後半の話は聞いていないようで "もらった" の言葉に顔を合わせてにまにま笑っていた。



 「あれ、暖さんの色でしょ? もうそれは、暖さんはそういうことだよね」



 「やっぱり、花もそう思った? 有名なはなしだもんね! あとは、恋坡ちゃんの気持ちだけ? ふふふっ」


 

 (あの? かんざしが何ですか? 暖さんの色って、瞳の青色ってことだよね)


 私は、ここでの風習について全く知らない。なので、このふたりがどういう話をしているのかわからなかった。

 "かんざし" と言われると、あの踏まれた瞬間がフラッシュバックする。心を踏みにじられる思いになって胸がぎゅっと苦しくなる。



 澄んだガラスの青色。綺麗な色だったな、と思い返す。



 「それに、連れ去られちゃった時の暖さん。すごい剣幕で、すぐに行こうとしてたんだよ? 

 あんな暖さんはじめて見たんだから!」

 


 花さんも、頷いていた。ふたりは、顔を合わせて意気投合をしていた。なんと言ったらいいのか分からなくなり、私は顔半分を湯に付けてぶくぶくさせた。



 「正直、 ”好き” って分からないよね。かんざしをもらって、恋坡はどう思った?」


 どう…… まずそもそも、自分のことを大事に思ってくれている、という実感はある。私が困っていると必ず、助けてくれるから。きっと私のことを見てくれている。

 今まで、自分を見てくれる経験が乏しくてなんだか不思議な感じがする。からだがふわふわ浮くような。そんな気分になる。

 


 かんざしをもらった時も、耳元で優しく声をかけられて正直ドキドキした。最初なんて、嫌な思いが顔に声に滲んでいたのにそれが和らいだと思うと嬉しいとも思う。 


 (……!? 嬉しい!? いや、嬉しかった。けども)

 自分の考えに驚いて、顔を湯からあげる。




 「ん? 恋坡ちゃん、大丈夫? のぼせちゃった?」



 「いや、やっと意識したってことなんだよ。 ……ね、恋坡」



 のぼせたと言われるほど、顔が赤いのだろう。考えてみれば、出会って数日。まだ、知らないことの方が圧倒的に多いのだ。それでも大きな出来事がいくつもあって、暖さんという人を色々な角度で見ることができた。



 子供に優しい暖さん、私のことを見ていてくれる暖さん。怖い一面もあったけど、ただの口下手な妖なのでは? と思えてくる。

 考えれば考えるだけ、ドツボにハマっていくようだ。


 「わ、私! 先にあがります。本当に、のぼせてしまいそうなので!」


 キャパオーバーで、頭が沸騰しそうになった。はたまた、温泉でのぼせているだけなのか。

 ふわふわとした足取りで、湯上がりどころに出る。


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