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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第4章。山神様!?
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34。山の長!?

 和さんと花さんに連れていかれて、暖さんたちがいる場所に案内された。


 暖さんも新たな着物に着替えていて、長い髪は降ろしたままだった。肩からは、タオルをかけていて湯上がり後のスタイルになっていた。


 よぼよぼの妖の前に、暖さんと律さんが座っている。暖さんの後ろに、琳寧さんが立って話をしていた。

 暖さんたちが囲っているテーブルは、かなり小さかった。そのため私たち女性陣は、近くに椅子を並べてもらいそこに座った。



 「お着物、ありがとうございました」



 「あぁ、すまなかったねぇ。私の愚息が……」

 先ほどのよぼよぼと杖をついた天狗が、そう言って私たちにどうしてこうなったのか話をしてくれた。



 このよぼよぼの天狗が、天狗の山のおさをしているそうだ。そして、戦った大男はおさの息子。

 ただ、弱いものいじめが趣味の息子に手を焼いていて養子の弟を次の長として育てていた。



 それに対して、 "なぜ自分ではないのか" と激昂したそうだ。元々、気性も荒く小さなことですぐ怒ってしまうそう。

 自分が長になるために、自分の力がさらに強くなればという考えにいきついたらしい。


 「そこで、稲荷街に現れる "御霊みたまの加護" を手にすれば…… 山神となり天狗の山のおさに選ばれると思っていたようでねぇ」




 「天狗の山神と山のおさは、同じですか?」



 「そうなんだ。山神になった者だけが、このうちわを持つことを許されるんだ。そして、うちわがここの長の証。

 私の目を盗んで、いつのまにか取られてしまっていたようで」

 先ほどまで、大男が手にしていたうちわをひらひらとしている。



 「以前…… 俺の母を殺した時に、罰を与えておくと言ってなかったか?」



 「あぁ…… 100年間牢に閉じ込めて反省をさせたんだ。たった100年では足りなかったようだ」



 (俺の母を殺した? 桃を食べさせようとしたってはなしもしていたし。何か関係があるの?

 それにしても妖の100年って "たった100年" という感覚なの? 恐ろしい)



 暖さんは、ため息をついて頭を抱えた。自分の母親を殺し、さらには私を攫った。その理由が、自分がここの山の長になりたいから。

 そのような理由で、自分の周りの人を危険に晒したのだから頭を抱えるしかなかった。

 暖さんは、頭を抱えたままぽつりと言う。


 「それより。おにのところに行きたいんだが」




 「おにかい? もう今日は遅いからここで休んでから行くといい。

 でも、ここ1000年以上は騒ぎを起こしていないと思うけど?」


 暖さんは、無言で打ち出の小槌を取り出した。山の長は、テーブルに手をついて前のめりになった。

 そして、瞬きを何度も繰り返して打ち出の小槌を眺める。

 


 

 長の周りにいた、天狗たちも驚きの声をあげている。山の長も、 "赤の打ち出の小槌" にかなり動揺をしているようだ。


 (赤といえばおにって、言ってたよね。

 暖さんの手元にこれがあるってことは、おにと何かがあった証になるはず…… それは、驚くよね。だって、1000年は何もなかったんだもんね)



 「何があったかは、聞かないが……

 おにと戦うなら、桃の実を持っていくといい。大桃樹だいとうじゅへ案内をしよう」


 山のおさが立ち上がる。やはり、大桃樹だいとうじゅがあるらしい。先ほどの大きな桃の木を私は思い出していた。

 おそらく差し出してくれた桃の実は、大桃樹だいとうじゅの実だと思われる。


 「ああ、それなら。さっき恋坡が、この桃を取ってきた」



 (え。その言い方だと、私が盗んできたみたいに思われるよね? 言い方考えて欲しいんだけど!)




 「おぉ、桃の木に選ばれたのか!

 その実の大きさは、大桃樹だいとうじゅの桃。

 恋坡さんと言ったかい? さすがは、御霊みたまの加護の持ち主! フォッフォッ!」




 どうやら、あの桃園に入れるのは天狗と桃に認めてもらった者だけらしい。天狗の反応から、私が盗んだ人だと勘違いをされていないと感じられてほっとした。



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