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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
30/84

30。大男!?

 そんな会話をしているうちに、ねえさん方がお座敷に上がって来た。ついに、別のお座敷に移ることになった。

 私は、不安な思いを抱きながら花さんのうしろをついて行った。和さんは、私たちの後ろにいる楽器を持つグループの中にいる。




 隣のお座敷から、賑やかな声が聞こえて来た。先ほどはなしに出ていた、上顧客のお座敷だろうと推測できる。その華やかなお座敷に通された。



 かなり広い部屋のお座敷で、参加している妖もかなりの数だった。中央で大柄の男が踊っていた。その男の背中には、黒の大きな翼と帯には緑の葉のうちわがささっている。

 お座敷の中は、まさにどんちゃん騒ぎだ。




 花さんは、部屋に入ると先ほどと同じように私の肩に触れて糸をつけた。そして、舞踊ぶようがはじまる。

 三味線だけでなく小鼓こつづみや笛と、かなり華やかだ。

 先ほどよりもテンポが早く、もたつきそうになるも花さんの動きに必死についていく。



 一曲踊り終わると、歓声と共に拍手が起こった。私は、深く深呼吸をした。二曲目がはじまり、三味線の綺麗な音が響いた。 



 「……おい。おぬしは、もしかして」

 そう言って、先ほどまで陽気に踊っていた大柄な男が和さんの襟を掴み上げる。先ほどまでのおどけた表情から一転し、眉を上げて詰めよっている。


 (和さんが! もしかして、この大柄の男が天狗なの!?

 大きな翼もあるし、葉っぱのうちわも持ってる…… でも、鼻は長くないし顔も普通の人の色。よく描かれる天狗とは少し違うような?)



 「人違いよ」

 精一杯顔を逸らして、消えそうな声で和さんが言葉をこぼす。




 大男は、和さんの言葉に大激怒をした。そして、和さんを扉に投げつけて周りの酒瓶を蹴り倒す。怒るところなんて、あっただろうかと思ってしまう。

 倒れた酒瓶は、勢いよく割れて飛び散った。芸妓や遊女が悲鳴をあげてお座敷から逃げ出していく。我先にと、扉の前にだんご状態になっている。



 騒ぎを聞きつけた暖さんたちが、だんご状態とは別の扉を開けて入ってきた。そして、目を見開いてこちらを見ている。私は、暖さんの姿をみて思わず名前を呼んでしまった。それが、まずかったらしい。


 「暖さん!」



 「ほほう。 ……これが、例の新たな御霊みたまの加護の人間」



 そう言って大男は、私を肩に担いで葉っぱのうちわを仰ぎ出した。うちわの動きに合わせて、風が巻き起こる。強い風で、いろんなものが舞い上がった。

 風がかなり強くて暖さんたちも、立っているのがやっとなようだ。




 バサバサと音を立て、大男が飛び上がる。甲高い笑い声をあげて、天井を突き破った。

 かなり高度を上げていき、あさがおやのかなり上を飛んでいる。


 (この妖、私の知ってる天狗じゃない!

 天狗は、山神様で優しいおじいちゃん妖なんだから。 ……というか、たかっ! 落ちたら死んじゃうよ)




 「やっとこれで、山神になれる!」



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