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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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28。線香一本分!?

 暖さんは、花魁の手の上に添えた手で払い除けた。

 

 「しつこい」


 私は、その光景に呆気を取られた。ここは、そう言うお店であってただの飲み屋では無い。それぐらいは私でも理解していた。




 「わちきの誘いを受けねえのは、主さんだけ」




 (そうでしょうね。花魁は、そうそうそんなことをしないってテレビで言ってた。

 それにこんな綺麗な人の誘い、拒否をする選択肢を選ぶ人ってなかなかいないよ?

 それにしても、手を払いのけるなんて酷いんじゃ……)




 暖さんはスッと立ち、律さんの方へ行く。私は、置いてけぼりにされてしまった。手に持っていた酒瓶をぎゅっと握った。



 「だから嫌だったんだ。律、向こうと変わって」




 「えぇ、僕じゃ花魁は嫌がるんだよ〜」



 「あちきが好きなのは主さんだけ。なぜ伝わらねえのでありんすか?」



 (なるほど。暖さんがここに来るのを嫌がっていたのは、花魁がいたからか。そして、その花魁は暖さんが好きなのね)



 律さんは、かなり困った表情だ。花魁の方の席が空いたが、こちらに来ても嫌がられる。

 でも、暖さんに自分が座っていた席を取られてしまった。真ん中に挟まれて座っていた、琳寧りんねさんもオロオロとしはじめた。




 お座敷の扉が開かれて、花魁が呼ばれた。花魁とのお座敷遊びは、線香一本分(約30分)とよく言う。いろんな客に引っ張りだこで、花魁ともなれば、嫌な客を断ることもできるそうだと書物で読んだことがあった。

 しかし、彼女は嫌な顔をせずににこやかにそれに応じた。好きだと思う相手のお座敷なら、離れたくないと思うだろうに。




 (正直、良いタイミングって思ってしまうよ。この状況は、どうしようもないから)




 花魁と遊女が出ていき、今このお座敷いるのは私たちと芸妓のねえさんたちだ。そろそろ私たち3人も別のお座敷に呼ばれるのかと思っていたが、ねえさんに残るよう言われた。



 「はぁ。ずっと三味線を弾いてて、指が痛い。もうしばらく弾きたくないなぁ」


 和さんは、珍しく泣き言を言っていた。私はいつもおおらかで、どんな事にも前向きのイメージが強かったので新たな一面だと感じた。




 「おにですが、桃が苦手だと聞きました。あと、豆も災いを払うことができるそうです」



 「恋坡ちゃん、さすがだね〜

 さっきのねえさんたちに教えてもらったの?」



 「いえ、暖さんがさっきいた遊女に聞いてくれて。すごいよく知ってる方でした」




 桃が苦手だということを知れたのは、オニを倒すのに必要な情報だった。ただ次に起こる問題は、その桃の木はどこに生えているかだ。

 季節的に桃がなっていない場合、豆を頼りにする事になる。その豆もどこで手に入るかを議論する必要があった。私には、どこにあるのか分からなかった。みんなを頼りにするしかない。



 「やっぱり、大桃樹だいとうじゅの実じゃないと……。 でも、そんなの本当に昔話のつくりものだよね。 うーん、でもここはおとぎ話の世界……」



 「大桃樹だいとうじゅ

 私、初めて聞いたけど。それは、どんなものなの?」



 和さんは三味線を放り投げて、指をふーふーと息をかけながら私の独り言に質問してきた。



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