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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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27。暖さん!?

 暖さんの隣に先ほどの花魁が座る。禿かむろが、花魁の前に先ほど持っていたたばこ盆を置いて部屋から出ていった。花魁は、たばこ盆の小さな引き出しから葉を取り出して器用に火をつけて煙管きせるに口をつけた。

 その所作は、とても優雅でドラマの1シーンのように感じさせた。


 

 「酒」

 見惚れてしまっていて、すっかり仕事を忘れてしまっていた。暖さんに言われるまで、見入っていたことに気づかなかった。トクトクと暖さんのさかずきに、持っていたお酒を注いだ。

 暖さんは、かなりの上戸なのかどんどん盃を煽っている。




 暖さんのそばで酒を注ぐ私のことを、花魁は睨むような目つきで見てきた。そして私と目が合うと、眉を跳ね上げる。

 先ほどまでの優雅さとは打って変わって、ここは女の園であったことを思い出させる目つきだった。そして、ちらりと暖さんに目線を移し優雅さを感じられない笑みを浮かべた。




 大きく煙管きせるから息を吸い、顔を暖さんの方に向けてふうっと吸った分の煙をかけた。

 そして、ニヤリと悪い笑みを漏らしていた。



 暖さんは、煙を手で払った。


 「……断る」



 「ふふふふふ。あちきは、まだ何も言って言ってねえでありんす」



 「断る」



 「好かねえことを言いなんし」


 暖さんは、完全に無視を決め込んでいる。花魁は、笑ったまま煙管きせるをカンッとたばこ葉をはたき落とした。

 私は、正直いまのやりとりの意味が分からなかった。何かを暖さんが断っていることだけで、意図していることを読み取れずいた。




 「そういえばさっきのお座敷で、面白いことを聞いたんでありんす。ふふふふ。

 九尾の狐の正体は、女だと」



 (それなら、私も知ってる。美女に化けて現れて、男性を騙す。というはなしだ。

 でも実際は、男性だし。暖さんは九尾の狐になっても、おそらくそんなことはしない)



 「だからどうした」



 「どうもしんせんよ。ただ、面白いと思ったんでありんす。

 そこの人間のお嬢さんも思うでありんしょう?」


 (え、なんで私にはなしを振るんですか? 肯定も否定もできないんですが。

 なんて言ったら正解なのかな、この場合って)




 「噂は、尾ひれがつくものだ」

 なんだかんだ言って、暖さんは私が困っている時には手を差し伸べてくれる。今回も回答に困った私に、助け舟を出してくれたのだろう。本人は、そのつもりがあるのかわからないが。



 「そうでありんすね」

 暖さんがそう答えたことで、私の答えは聞かれずに済んだ。この花魁、何を考えているのかわからない。 その笑みに隠された本当の心は? と考えてしまう。



 

 そう考えていたら、花魁が暖さんの膝の上に手を置いてにこやかにしている。暖さんは静かに盃を置いて、花魁の手に手を添えた。

 (まあ、そういうお店ですからね)




 


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