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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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26。お酌ですか!?

 私は暖さんのそばに寄って、近くに座った。暖さんのさかずきが空いたら注ぐ。

 どうすればいいのかわからなかった私にとって、暖さんのそばに座らせてもらえてほっとした。強張っていた体から、余計な力が抜けていく。


 


 暖さんの隣にいた遊女は、どんな話を振っても無視をされるからか笑顔のまま固まっていた。そんな遊女に、私は同情の念を送った。暖さんが何かを思い出したように、口を開いた。


 「そういえば。お前は、おにを見たことがあるか?」



 やっと口を開いたと思ったらそれって、いかがなものかと私は思ってしまう。しかし、隣に座っていた遊女は無視され続けたからかとても嬉しそうだ。


 「なにが知りたいんでありんすか?」



 (やめてよ? 倒し方ってストレートに聞くのだけは。

 さりげなく聞かないと、怪しすぎるでしょう? おねがい暖さん、それとなく聞いて)



 直接伝えたいところだが、グッと堪えて伝われと心の中で願った。私の顔を暖さんが、じっと見てきた。そして、目線を逸らしながら遊女の問いに答えた。


 「あ〜。苦手なものは、あるんだろうか」


 私の念が届いたのか、顔に書いてあったのか頭を悩ませて質問をしたようだった。



 「苦手なものでありんすか?

 そうでありんすね…… 桃が苦手だと聞いたことがありんす」



 (桃! 忘れてた。そういえば、そんな話を聞いたことがあった!

 桃の木は、霊力が強くて桃の実を投げると退散していった。って話は有名だったんだ)


 私は、すっかり忘れていたと思いつつ二人のやりとりを聞いていた。桃太郎の話があるが、これのおおもとになった話だ。私は知っていた話で、なぜ忘れていたのかと悔しさを感じる。



 「そうか。桃が苦手なのか。

 豆が苦手という話を聞いたから、本当か気になって」



 (暖さん、それ。私のこと馬鹿にしてませんか?

 豆で鬼は倒せるわけがないって、思ってるんですよね。適当に作った話だと思ってますよね?)



 「魔滅まめのはなしでありんすね。豆にも霊力が宿っていて、災いを払うんでありんす」



 たくさんのお客さんと会話をするからか、思っていた以上に物知りなようだ。私も不思議に思っていた、豆で退散させられるのかについても答えが聞けた。



 「ただの豆で倒せるのか」



 「いえ、炒り豆でねえとだめなんでありんす。

 炒るというのは、射抜くという字を書きんす。災いを豆で射抜く、災いを払うという意味になりんす。

 なので、炒り豆でありんせんとダメなんでありんす」



 この遊女、本当にとても有能なようだ。たしかに炒り豆を撒いていた。でもそれは、生豆では食べた時に美味しくないからだと勘違いしていた。




 「あ、花魁がきんす。変わりんすね」


 そう言って遊女は、その席を外した。私にとっても知らないことが知れてよかった、と思っていた。知らないことが学べることは、私にとってとても楽しいことだった。

 そうでなければ、何時間も机に向かっていられないだろう。




 扉が開いて先ほどの花魁が入ってきた。垂れ目の目が笑うと、さらに下がって見える。後ろに控えていた、禿かむろの手には手提げたばこ盆があった。 遊女といえば、煙管きせるだろう。

 私が思い描く花魁、そのままの人物だった。




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