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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
25/84

25。舞踊ですか!?

 お座敷に呼ばれて、渡り廊下をぞろぞろと芸妓たちは歩いていた。その中にもちろん、私を含んだ3人もいた。

 

 「そういえば、あなたたちは何が得意なの?」


 (何も得意なものは、ありません。申し訳ないですが、私は見学をさせてください)




 「私は、三味線が得意です。こっちの二人は舞踊ぶようが得意です。

 いつも私たち3人でやってきたので、ねえさんたちと交代でやりましょうか?」



 「あら! 3人だけで、できるならそれがいいわ。今日は、上顧客がいらしてるの。

 私たちは、そのお座敷にも行かないといけなくてね。だから、途中で交代しながらにしましょう! 頼りになるわ」


 (あ、ねえさん。頼りにしないでください。

 私は、本当に何もできません! 花さんがなんとかしてくれるらしいけど、本当かな。信用ないと言ったら失礼だけど、心配でしかない)




 そして通されたお座敷は、まさかの暖さんたちのお席だった。律さんと琳寧りんねさんが、にこやかに私たちに手を小さく振ってくれた。暖さんは、普段通りと言われればそのように感じるが…… 少し不満そうな雰囲気を感じる。



 「失礼致します」 

 そう言って、慣れた手つきで和さんはお座敷においてあった三味線を手に取り調節をしていた。花さんに促されて、座っている和さんの前に立つ。




 べべンッと綺麗な三味線の音色がした。もうここまできたら、腹を括るしかないと考える。

 しかし心の奥では、舞踊ぶようなんてできないという思いと人前で披露する緊張感に押しつぶされそうだった。




 花さんに軽く肩を触られ、私の斜め後ろに立つ。花さんの動きが止まったところで、三味線が曲を奏ではじめた。



 舞踊をする立場でなければ、聞き惚れていただろう。そんな余裕なんて全くなく、むしろ曲なんて右から左に聞き流しているような状態にいた。

 


 (うわ! ……っと。そういうことね、花さんがなんとかしてくれるって)



 そう、いま私は誰が見ても踊れているのだ。そう見えている、だけが正解だ。

 花さんが後ろで私を操ってくれているのだ。先ほど私の肩を触った時に、糸をつけられていてその糸を操ってくれているようだ。



 説明もなくやられたので、はじめ引っ張られた時は変な動きをしてしまったが、慣れてくると楽しく踊ることができた。

 何曲か舞踊ぶようを披露したところで、ねえさんたちが三味線を持って入ってきた。



 

 ねえさんたちの三味線の演奏が始まるということで、お酌をすることになった。



 ねえさんが実は、と漏らしていた言葉を思い出した。お酌は本来は遊女の仕事だが、今日は他のお座敷でかなりの上顧客がきているようで手が空いている遊女が少ないようだ。

 だから、芸を売る芸妓もしなくてはいけないと。



 律さんたちは、それぞれに遊女が側について談笑をしている。暖さんを除く二人は。私は、花さんの真似をして酒瓶を持った。

 三味線担当の和さんはねえさんたちの中に入って、演奏をしていた。



 糸がすでに切られているようで、自由に動くことができた。ただ、それだけに最初の緊張感が少し戻ってくる。酒瓶を握る手と肩に力がぐっと入った。


 その様子を見かねたのか、暖さんに手招きをされた。首を傾げながら、私は暖さんの側に寄った。




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