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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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24。花魁!?

 道の中央を歩いているので、たくさんの人からの視線が集まるものだ。そのはずなのに、私たちに視線を送られることはない。道をあけている妖は、前を歩く花魁を一目見ようと必死なようだ。



 おかげで、視線を気にすることなく歩ける。


 (私は、こんなに人の視線を浴びるの嫌だからなぁ。花魁ってのは、すごいなぁ)

 と、私は呑気なことを考えていた。




 歩くたびに揺れる傘の装飾音が、心地よく響く。周りに居る妖たちの声や見世みせから聴こえてくる音楽。その全てをかき消すほどの高下駄の音。

 稲荷街とは打って変わって、重たい淀んだ空気。それは、ざわざわとした耳触りの悪い音のせいなのかもしれない。もしひとりでこの街に来ていたら、おそらく息が詰まるところだった。




 (どこまで行くんだろ? ゆっくりとだけど、確実にかなり奥まで進んできたよ?)




 "あさがおや" と書いてある見世みせの前についた。今まで見たミミズのような文字ではなく、しっかりとひらがなで書かれている。もしかしたら、妖界あやかしかいで見てきた文字というのは崩して書かれた文字だっただけのかもしれない。




 隣にいた和さんが、笑顔で見世みせの前にいる妖に手を振った。その妖も気さくな笑顔で手を振りかえしている。おそらく、この人間の姿に頭上に耳が生えてる女性が "知り合い" なのだろう。

 花魁が見世みせの中へ入った。それに続くように私たちも中へ入った。


 

 「おかあさん、お部屋を借りんす」



 花魁が、先ほど見世みせの前にいた女性に声をかける。やはり先ほど手を振っていた彼女が、和さんの知り合いの妖だった。



 「はいはい。誰をつけましょうね。

 暖さん、律さんもお久しぶりですね。誰かご所望の遊女はいますか?」




 「いない」

 全く考える振りも見せず、暖さんは言い切った。断るにしても考える素振りぐらい見せればいいのに。と考えていた。

 それに、今回は鬼の倒し方の情報収集だ。それなら人数当たった方が、なにかしら答えが聞けそうなのだが。

 やはりそこは、律さんがカバーをしてくれるようだ。



 「あ、そうだな〜。何人かつけてもらえると助かるかな」


 「かしこまりました。 ……ところで、その格好でここに来たってことは?

 和たちを少しうちで面倒を見て、と言うこと?」



 和さんは、なにも言わず笑い声だけを漏らした。右手で口元を隠しながら、いつもの心底笑っているような笑みではなく作った笑方で微笑んだ。

 その笑顔で察したおかあさんは、遊女とは別の芸妓たちの部屋に通された。



 知らない私に、ここの芸妓が優しく教えてくれた。どうやら芸妓というのは、遊女が来るまでの繋ぎをするお仕事が多いそうだ。遊女らとおはなしをしている間も音楽等で盛り上げてほしい、と要望もある。

 基本は、お酌はここの見世みせではしない。ただ、遊女が忙しく手が空かない時にはそういう仕事もあるそうだ。

 話を聞けばますます、私は崖に立たされている気分になる。何もできない自分では、力不足だと言わているようい感じたからだ。




 (本当に、なにもできなくてなんとかなるだろうか)



 「他の見世みせから応援に来たんだって? 今日だけだろうけど、私たちのことは、ねえさんと呼んでね。

 人間のお客さんも多いし、芸妓も遊女にも多いのよ」



 どうやらここに、三つ目の人間界との扉があるらしい。ここの扉は、人間界と繋がる回数が多いそうだ。

 そのため、人間が一番紛れ込みやすいようだ。先ほどの花魁も人間だという。どうりで、人らしさを感じたわけだ。


 「ね、ねえさん。聞きたいことがあります」



 「なあに?」

 先ほど教えてくれたねえさんに声をかけたら、部屋の扉が開きお座敷に呼ばれてしまった。花さんと和さんも一緒に行くようで慌てて私もついて行く。



 「花と一緒にいたら、大丈夫だからね」

 そう和さんに、耳打ちをされた。緊張から喉が渇き声が出なくなったので、頷いておいた。



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