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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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22。天空街!?

 花さんに出来たと言われて、鏡を覗いた。そこには、真っ白の顔に眉、目元、唇に真っ赤の色。

 よく想像される "芸妓さんメイク" というやつだ。

 髪も綺麗に結われていて、見た目だけならそう見える気がした。



 (妖の世界でも、芸妓さんといえばこういうメイクなんだ。)



 後ろにいたなごみさんが、手をぱんっと叩く。

 「さぁ、いきましょう!」



 「恋坡、普通なら右手でスソを持って歩くんだけど。芸妓さんっていうのは、左手で持つんだよ。

 これは、基本だから忘れないでね」


 私の着物の裾を持って持ち方を教えてくれる。この格好で歩くのに、立ち姿でくらいそれとなく見えるようにしなければ疑われてしまう。

 鏡で自分の姿を確認したら、急に緊張感に襲われる。



 「左手ですね。分かりました。

 わたし、緊張してきました! 本当に大丈夫でしょうか?」



 「ふふふ。大丈夫よ。

 私たちもいるし。男性陣も一緒に来てくれるから!」



 (ん? それなら、私たち潜入するみたいなことする必要は?

 あっでも。通り道って言ってたか)



 「ふふふ。もちろん、通り道だからってのもあるけどね?

 暖さん、ああ見えて心配してるのよ〜」



 「それは、どうでしょう?


 でもたしかに、九尾の狐になるための道具がなくなったら困りますしね。」

 後半は独り言のようにうんうんと言った。



 「うーん。これは、なかなか……」




 「和、向こうで待ってるよ? 早くしよう!」

 花さんは、化粧道具をもうすでに片付け終わっていた。私は花さんに握らされた左手を離さないように必死で、そのまま固まっていた。



 「はいはい!恋坡ちゃんも、いくよ〜!」



 「はい!」


 そうして、私たちは "天空街" を目指して歩いていく。



 (というか、ここからこの格好で歩いていくの恥ずかしくない?向こうで着替えさせてもらったらよかったんじゃ?

 ……すごい周りの視線が刺さる感じがする!)



 チラリと横を見れば、和さんも花さんも完全になりきっていた。

 自分だけがなんだかぎこちなく歩いている。



 慣れない桐の下駄で、何度かつまずいてしまった。その度に後ろから手が伸びてきて、暖さんが助けてくれた。

 どうやら、足袋をはかず素足のまま下駄を履く。そのため、足に鼻緒が食い込んで痛みを感じ始める。



 暖さんは、手を伸ばして転ばないように助けてくれるのになにも言ってくれない。 "気をつけて" とか "大丈夫?" とか一言ぐらいあってもいいと思ってしまう。よく言えばスマートというやつだろう。

 私がお礼を言うと、頷くだけ。少し寂しさを覚える。



 (私としては、ひとことぐらい言って欲しいんだよね。この短い期間の私ですら、暖さんが喋る人じゃないのは理解したけど。)




 神社の鳥居が立っているのが遠くに見えてきた。その側には大きな柳の木がある。


 (ここにも柳の木。至る所に柳の木がある気がするけど、気のせい?)



 鳥居の先に見える光景は、赤一色。そう感じられた。



 鳥居をくぐると、真っ黒の空から紙が降っていた。

 茶色の建物が立ち並び、空の暗さを吹き飛ばすほどの赤の提灯。頭上を覆い尽くすほどの赤の提灯に、目が眩む。



 前を見据えても、行き交う妖たちの手には同じく赤の提灯を持っている。



 あたり一帯が真っ赤に染まっている感覚になった。


 (ここが、天空街……)



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