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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
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21。和さん!?

 ”今度は私に選ばせてね” と言われたので、また和さんの着せ替え人形になる覚悟でいた。今度はどれほどの数の着物を着せられるのかと、ドキドキとしていた。




 しかし、もうすでに決まっていたようですぐに着付けの部屋に案内された。大きな桐のタンスが並んでいる。着物の香りと桐のタンスの香りが漂う部屋だ。

 「恋坡ちゃんはこれね! 花は、こっち!

 天空街で見世みせをやってる、知り合いがいてね」


 和さんは、タンスの中から帯を出しながら教えてくれた。




 「知り合いですか?」



 「昔から私のお店で着物を買ってくれる子なの。

その子がいまは、見世みせのおかあさんなの。」



 「見世みせ? ってなんですか?」



 「んーと、芸妓さんとか遊女とかが住み込みで働いてるところかな! 

 そこを切り盛りしてる妖のことを、おかあさんって言うのよ!」



 「もともと芸妓だった妖が、なることが多いんだよ」




 「ということは? もう引退されたってことですね」



 「ああ…… 恋坡、勘違いしていそうだから言うけど。

 和が私たちの中で、一番年上だよ?

 この妖界で知らないやつはいないと思うぐらい、顔も広いんだよ。色んな着物の店があるけど、一番仕立てがいいから」



 「んんん!? そうなんですか!

 てっきり、暖さんと呼んでいたし……」

 花さんが私の肩に両手を置いて、深く頷いた。それは、まるで私の気持ちを理解してくれたようだった。




 「なによう、失礼な! 年寄り扱い? 

 恋坡ちゃんまで、花の味方するの?」



 「あ、や。あの、妖の普通の年齢もわかりませんし。年寄りには、見えませんから!

 和さんは良きお母さんみたいだなって、思ってました!」


 「おお、優しいねえ」

 ハハハっと花さんは笑った。優しいと言われたが、見た目が本当にお姉さん並なのだ。私に対しての溢れ出る母性から、私の母親ならと思っているだけ。



 「恋坡ちゃんのお母さんなら、喜んでなるよ!

 そもそも…… 花だけだからね? そんなこと言うの!」



 「はいはい。んで、これを着ればいいのね?」



 「そう、遊郭を歩いててもそれとなく見えるでしょ?」



 「あ、あの!

 私、三味線とか舞踊とかなにもできませんよ?

 問題ないでしょうか?」




 「そうなの? なにかできない?

 笛とか……吹けない?」

 (ええ、無理ですね。リコーダーもピーピー変な音しか鳴らなかったから。

 音楽の技能テストは、いつも再試験を受けています。

 ……でも、あの時の唄を歌った時は気持ちよく歌えたような?)



 うんうんと考えている私を、二人は不思議そうに顔を見合わせていた。

 その表情と反応からして、なにか楽器ができるのが普通なようだ。妖たちは、長く生きているから身につくのか。それでもある程度、素質と言うのがあると思われるが。



 ”なにかできること” を頭を抱えて考えた。

 ーーやはり、考えうるものは他人に披露できるものではなかった。



 「笛も吹けないし、できるものがなさそうです。

 お力になるどころか、足手纏いかもしれません」

 (楽しそう!

 と言うだけで、やる気満々だった私が恥ずかしい。)



 「うーん、花? あなた、()()得意でしょ? やってくれる?」



 「いいけど。恋坡がいいなら」

 顎に手を当てて、少し悩むように花さんは言った。私が良いならと言うが、私の答えは一択。



 「なんとかできるものなら、お願いします!」



 「うん、わかった。とりあえず、着付けしてもらってね!」

 私の揺るぎない回答を聞いて、笑って返事を返してくれる。花さんは、自分の着替えをはじめた。



 私の着付けは、和さんが。化粧は、花さんがすると道具を広げていた。



 「ちょっとびっくりする化粧かもしれないけど。

 遊郭に入るから、ちょっと濃いめだからね」




 「はい! お願いします!」



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