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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第3章。天空街にいくの!?
20/84

20。探偵ですか!?

 「あ! 暖、そういえばなんだけど!」

 律さんが、何かひらめいた表情をして手を叩く。


 「なに」



 「天空街なら、色んな話が集まるし!

 おにに、関することも聞かないかなぁ〜」




 「行くなら、律だけで行ってこい」


 (天空? 空に街があるの?

 いやぁ、本当にここはなんでもありな世界だなぁ)

 そんなことを考えていたら、隣に座った琳寧りんねさんにツンツンと肩を叩かれた。空に街があるのかと突拍子も無いことを考えているのが、顔に出ていたらしい。



 「天空街っていうのは、遊郭の街ですよ。この稲荷街の隣街です!」

 と、耳打ちで教えてくれた。遊郭の街。遊郭は、夢見心地だとよく言う。

 それで天空…… なるほど、よく出来た街の名前だ。



 「恋坡ちゃんもいるし、危ないわ!」

 和さんは、本当の母のように私のことを心配していくれているのがよく分かる。顔に絶対にだめ、と書いてあるような表情。



 「やっぱりそうだよね〜」

 律さんは、ダメ元の発言だったのだろう。和さんの言葉に、腕を伸ばして大きく深呼吸をしている。



 「でも、天空街を通らないとおにのいる雷街いかずちまちには行けないよ?

 結局通るなら、私と和も含め女子3人でまとまってる方が安全じゃない?」



 (おにのいる街は、雷街いかずちまちっていうんですか。

 確か、昔話にいかずちっていうおにがいたような?)




 また琳寧さんが、付け加えて説明をしてくれた。

 「雷街いかずちまちは、火山活動がたまに起こる山がありますよ!

 かなり熱い場所なので、別名が火山街です」



 (別名で火山街ってことは、相当熱いのか。私暑いところ苦手なんだよなあ。

 いやいや。暑いレベルじゃないか、焼けるかもしれない熱さか。行きたく無いなぁ。……でも)



 「結局通り道なんですよね?

 それなら、倒し方を見つけつつ進むのはどうですか?」

 



 「あれ〜? 恋坡ちゃん、意外とやる気満々なんだ?」



 「やる気満々というより…… やらないと困る人がいるんですよね?

 それなら、やれることがもし私にあるならやります!」

 ビシッと背筋を伸ばして私は微笑んでみせた。私にやれることがある、というのは嬉しいのだ。



 「なるほど。でも、無理はよくないよ?

 恋坡ちゃんは、暖にとって必要とする人なのは間違いない。暖は、言葉不足だから勘違いしてない? 大丈夫?」


 (律さん、そうなのです! 本当に、言葉不足すぎて! ふたりのとき、何を言いたいのか読み取るのが大変だったんです!

 でも、勘違いはしてない。私は暖さんの九尾の狐にするための道具ですよ)



 律さん言葉に、頭が取れるほど頷きたくなった。心の中では声を大にして、同意をした。でも、そんなことを言って暖さんの機嫌を損ねてまた舌打ちでもされたら怖いので黙っておく。



 「ありがとうございます。でも私、無理してないですよ!」



 「あぁ〜、ほんっとに、いい子!

 早くうちの子になろう?

 暖さんのところより、私のところの方がいいに決まってる!」



 「和の妖力じゃ、力不足だ」



 「ま、失礼!

 誰が助けてあげたのか忘れたの?」



 「いつの話だ」



 「……ね?

 暖さんのところよりも、私のところの方がいいでしょう?」

 ほらね? と言わんばかりの話し方だ。表情も自分の方が優れている、という顔をしている。



 「いや、俺は恋坡を必要としている」



 私の発言により、なぜだか和さんと暖さんで私の取り合いがはじまる。暖さんは、私がいないと九尾の狐になれないから理解できる。和さんは、本当に私の母? と思えてくる。


 (なに? この状況。少女漫画にあるよね?

 こういう取り合い現場。これは、喜んだらいいのかな)



 「えっと……?」


 「意外とそういう言葉、暖はさらっと言えちゃうんだね」



 「話が脱線してるよ?

 とりあえず、女の街だし。私たち3人で情報を聞き出すよ」

 花さんが手を叩き、乾いた音が響いた。未だ睨み合っていた、暖さんと和さんも花さんの手の音に反応した。



 「花さん! それは、潜入するんですね。

 なんだか、探偵みたいですね!」

 私は前のめりになって答えた。



 「え、うーん。まあ、そんなところだよ」



 「恋坡ちゃん、なんだか急に楽しそうね!

 それなら、溶け込める装いが必要ね。今度の着物は、私に選ばせてね!」



 「そういうのやってみたかったんです!

 和さんの仕立てた着物、どれも素敵なので楽しみです!」

 私は、ワクワクとした気持ちになった。なかなか普段の人間界で生活をしていて、潜入なんてしない。テレビの中でのはなし、と考えていたから。実際に自分が、体験できる日が来るとは思ってもみなかった。



 「ほんっと、いい子!」




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