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華燭のまつり  作者: 白崎なな
第2章。私は必要ですか?
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14。奥方…?

 食べ終わってお会計をした。どうやら、妖の世界での通貨は無い。

 "物々交換" でやりとりをしているそう。



 物と物の場合もあれば、律さんのように笑ってもらったらなどお店の主が決めているらしい。



 今回は、花さんの紡ぐ糸と交換をした。女郎蜘蛛だから、糸のお仕事だそうだ。


 「ご馳走様でした!」


 そう言ってお店を後にしようとしたそのとき、店主からこんな話をされた。

 『あのね! あなた…… 暖さんのところの奥方、なんでしょう?』



 「えっと…? 私まだ、違います。まだ、と言うのかなんと言うのか……」


 お店の狐の妖に、両手をギュッと掴まれた。とても、悲しそうな顔をして私を見つめる。

 『助けてください!!』


 なんだかとても切羽詰まっていると感じる。


 「私に、出来ることなら! お助けできることがあれば!」



 『本当ですか? 実は、ここ数日の話なのですが。

この稲荷街いなりまちに住む子供達が神かくしにあっているのです。

 ……ぐすっ。私の子も! 3日前から……』



 「か、神かくしですか!?」



 『ついに、妖力に底をつきそうなんだねぇ。』

 


 「律さん! そのはなし暖さんが、言ってました! 悪い気を起こす妖が出るって。まさか!」



 『おそらく……そういう類だと思います』



 「分かりました! 私、皆さんの力になりたいです! やりましょう! 探しましょう!」



 『ありがとう、ございます……! 奥方は、お優しい方なのですねぇ!』




 「あっ、まだ……お試し? 期間、と言いますか。」



 『クククッ。お試し期間をすっとばして、もう奥方になっちゃったね! 恋坡ちゃん〜』



 「聞いてもらえませんでした。

 と、とりあえず! 暖さんに相談しにいきましょう! 神社にいらっしゃいますかね?」



 真後ろから聞いたことのある声がした。

 『分かった。恋坡、御霊みたまの加護の力を強くするいい機会だ。』



 「えっ? えっ! ……暖さん、いつの間に!?」



 『気づかなかったの? 暖さん、割と前からいたよ? お迎えが来たなぁ、って思ってたんだけど?』



 (居たなら、声ぐらいかけてくれてもよくない? 気づいてないの私だけなんですが。別に、変なこと言ってないから良いけどさ?)



 『そこで何してる。早く行くぞ。』



 「はい、すみません!」

 (癖で謝りましたが、謝るところじゃなかったよね。私!)


 そう考えながらバタバタとついて、お店の出入り口に差し掛かった。



 「だ、暖さん! どこに行くんですか? って……うわぁ!」



 (うわっ、いきなり止まらないでよ! ぶつかったじゃん!!)

 暖さんの背中に激突した私の頭を指差して、後ろにいる律さんに目線をやった。

 『律たち、恋坡を貰ってく』



 (そして、その貰ってくって。今の子達が聞いたら、 "私はモノじゃない!" って怒られる言葉ですよ?)



 『はーい。いってらっしゃい、恋坡ちゃん!』



 「あっ。いっ、行って来ます!」

 (んーー! で! どこに行くんですか! 暖さん!!

 聞いても答えてくれないんですよね! どうせ!)




 『……こっち』

 そう言って指を刺した方角は、竹林だった。そして暖さんは相変わらず、最低限のことしか話さない。



 「あっ、はい……」

 (……そっちに何があるんですか?)



 律さんがいない、それだけなのに。

 最低限しか話さない暖さんと。

 何を話したらいいか分からない私。


 ……会話に花が咲くことは、ない。




 終始無言で竹林を歩いていく。


 (何か喋るべきでも、暖さんも話するタイプじゃないよね。 "どこに向かってるんですか?" とか "神かくしの犯人が分かっているんですか?" とか聞きたいことは山ほどあるんだけど。



 ……きっと返事もらえないよねぇ。

 この歩きにくい竹林の先にまっているものって、なんだろう?)

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