11。必要?
(んんん……よく寝たなぁ。)
目を開けると畳に布団が敷かれており、その中で眠っていた。
両サイドに布団が並んでおり、律さんと暖さん。足元に黒狐と白狐が同じように眠っていた。
(やっぱり、こっちが現実か。にしても…… このお布団の並び方、修学旅行みたい)
嫌な夢だったけど、あれが人間界での私。
(私が向こうに戻ってもきっと変わらず、私は不要なんだろう。それなら、ここで必要とされているならここで頑張った方が身のためなのかな。というよりも、やっぱり妖界に来たのは夢じゃなかったんだ。)
うーーんとひとり悩んでいると、黒狐が寝言で 『もう食べられない〜』 と言った。
「ふふふふ。」
( "自分で呪っている" と言うより、事実なんだからしょうがないよ、暖さん。
それにしても…… "俺が恋坡を必要としている" かぁ。意外とそう言うこと平気で言えちゃうタイプ?
それとも、ただの自分が九尾になるための道具?)
そんなことを考えていたら、隣で寝ていた律さんがむくりと起きた。
眠気まなこで、こちらをぽやぁと見てきた。
「律さん、おはようございます。私、疲れも相まってぐっすり寝てました!」
「うーん。恋坡ちゃん、おはよぉう〜」
(相変わらずのんびりな妖だなぁ。)
『これ』
と言って、2度目の私の夢の瓶をちゃぷんと振って見せられた。
ーー今度は黒い色の液体だった。
(そりゃそうか。あんな夢。黒いに決まってるよね)
「今度は加減して夢を取ったから、記憶あるよね?」
「……はい、覚えてます。どんな夢だったか」
「そっかぁ。……暖の頼みだとは言え、ごめんね。こんな強引に人間界でのこと盗み見るなんて……」
「ん? 飲むと夢が見れるんですよね?」
「うん? そうだね?」
「でもその液体、飲まれた形跡なさそうですが…?」
「ああ〜! これね。飲んでないよ? ……えっとね、夢にお邪魔したんだよ〜。僕の力でね!」
(ゆめくいばくって言ってたもんね。夢ならなんでも取り扱いできるってわけねぇ)
「……恋坡、そういう事情があるなら、都合がいい。こちらにいても問題ないだろう」
暖さんがむくりと起きて、あくびをしていた。
「いやいや! 暖、そう言う言い方はどうかと思うけど〜?」
(あぁ、うん。薄々感じてたけどね? 私は貴方の道具ですか。そうですか)
「何が問題なんだ?」
「もうちょっと、良い言い方があると思うけど?」
「あの、皆さんで私の夢……というか人間界での私の様子を見たんですね?」
「ああ。見た」
「恋坡ちゃん…… 辛かったね。でも、妖界で不要な存在だなんて言う妖は居ないから!」
(どうかなぁ)
生徒会だって、書記として入ったのに。生徒会長ができないからと言って、なぜか私が仕切ることになって。案の定、 "でしゃばりだ。" とか "生徒会長を蹴落とそうと考えてる腹黒。" と言われたものだ。
生徒会は3年生を中心に構成されているので嫌がらせと言うやつだった。
やって欲しい。に対してもこんな裏がある。さて、優しいにはどんな裏があるのだろうか?
ましてや、私の喉から手が出るほど望んでいる "必要な人" という席には何が待っているのだろう?
(逆に、暖さんの自分が九尾になるための道具…… みたいに扱ってもらえた方が楽かもしれないなぁ)