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最終章 第12話 嘘ついたら痛い目を見る

「・・・っ!ん?お、おい!ここはどこだ!何をした、カウィズ!」


「ここはワタシの思い出の場所。こっちの人生の最期の場所はここだって決めたの」


そこは青々とした草木が輝く広い草原。雲一つない、澄んだ青空。遠目には真っ赤に塗られた魔王の別荘である家も見える。


「ここは世界の空白地帯・・・?勝手に俺のことをこんなところに飛ばしやがって!」


魔王城からこの地に飛ばされたワルケは「予定と全然違うじゃねえか!俺が魔王の首を一突きして殺した後、レフォ王国へと飛ばすって説明しただろうが!」と叫び、計画とは異なる動きを見せたカウィズのことを強く睨みながら彼女の下へと駆け寄る。


「何とか言えカウィズ!これはどういうことだ!」


そして彼女の胸ぐらを掴んで怒りをぶつける彼は他人の気配を感じて周囲を見渡す。


「あれだけの人間を一斉にここに飛ばした・・・?な、何を考えてんだよこいつは・・・?」


ワルケは、この草原には自分とカウィズ以外にも、魔王城を襲撃したレフォ王国の国民達も共に飛ばされたことに気づく。別の場所へと急に移動して困惑してしまってる大勢の人々を目にし、言いようのない違和感を抱き始めたワルケだが、彼の手をカウィズは振りほどく。


そして彼女は自分の両肩を抱きしめるような体勢を取り、状況を飲み込めていないワルケのことを見ながら冷たくこう言い放った。


「魔王城を壊して。魔族さんを攻撃して。魔王さんを困らせて。魔王妃さんを悲しませて。勇者さんを悩ませて。お前達のことを絶対に許さない」


そして一気に自分の体に魔力を込めると、草原に反射するほどその肉体は赤々と発光し始めた。


「ワタシがあなた達に手を下しても、それは人間が人間を殺めただけ。ここでみんな、ワタシと共に死んでもらう」


「まさかおめえ・・・自爆するつもりか!?」


「そうよ。そしてこれは・・・ワタシが過去倒してきた魔族さんへの贖罪も兼ねてるから」


彼女の言葉の意味を理解したワルケは言葉を失って驚いたような顔をするが、カウィズは覚悟を決めた目で彼のことを見ながら退路を断つ。


「これだけの規模で自爆するには魔力をチャージする時間が必要だけど。もうどこへ逃げても無駄。ここに飛ばした以上は死ぬことしか選択肢は残ってないから」





「魔王様!魔王城内にいた人間達が忽然と消えましたが・・・何があったのですか!?」


勇者レザは魔王の下へと息を荒げながら帰ってきたが、ゴヴァは席を立ち、呆然とした表情で誰もいない前方を眺めているだけだった。


「ど、どうされました・・・?」


「大変だ・・・。カウィズがワルケと・・・いやこの城に攻め込んできた人間もろともどこかへ行ってしまった・・・。まさか・・・あいつは・・・」


「カウィズ様が・・・?」


先日の一件以降、レザはカウィズの顔を見ていない。


彼が魔王城に足を運ぼうとしなかったこともあるのだが、いつもレザの自宅に不法侵入まがいのことをしていた彼女はそれっきり姿を見せなくなった。


しかしレザは覚えていた。


『あなたはもう、不動作営業マン・真留村富士夫じゃないの!この世界の平和を守る勇者・レザなのよ!あなたが動かないのならワタシがワルケ王太子のところにいくわ!大好きな魔王城のみんなはワタシが守る!』


ワルケによる魔王城への嫌がらせがさらに悪化し、おまけに何の罪も犯していない魔族がレフォ王国の人間から襲われて怪我を負った時。


それでもその重い腰を上げないレザのことを見かねたカウィズは、彼に向かってその言葉を叫んだ。


「カウィズは当初、ワルケの側についたように見せかけて吾輩のことを攻撃しようとした。しかしあいつは、本当はワルケのことを騙していたのだ。そして隙を見て、ここを襲撃した他の人間ごと道連れに・・・」


顔を真っ青にしながらこう言葉を並べるゴヴァだが、他方でレザはすぐに部屋の扉の方へと走り出した。


「魔王様。カウィズ様がこういう行動を取った責任は私にもございます。彼女が取返しのつかないことをする前に、私達の手で止めましょう」


そして彼は続ける。


「シルヴェ様を見つけ出した時と同様の方法です。イーファ様の魔力探知能力を使ってカウィズ様を見つけ出しましょう。そしてその場にワルケ様もいれば・・・そこで決着をつけます。コワシェ様から有力な情報を手に入れましたから」





一方。


世界の空白地帯でもある草原では、人間達の阿鼻叫喚を全身に浴びながらカウィズがその肉体に魔力を込め続けていた。


「や、やめてくれ!こっちはワルケ殿下の恋人の敵討ちのために動いていたんだ!個人的な恨みで魔王城を襲っていたわけじゃない!」


「そ、そうだ!これからは投石とかはしない!だから殺さないでくれ!」


命乞いをする者もいれば、ふらふらになりながらもどうにかカウィズと距離をとろうと図る者もいる。また、一定数は魔族を庇うカウィズのことを口汚く罵る者もいた。


しかし彼女の決意は揺るがない。


「この草原はかなり広大。隣国に助けを求めることなんて不可能に近い。それでも逃げるような人がいたら・・・全員消せるようにさらに爆発の範囲を広げるまで」


こう呟いたカウィズはさらに体に魔力を溜める。


「ワルケ殿下!あの女のことを止めてくださいよ!我々は殿下の言葉を聞いて立ち上がったんですよ!なのに・・・なのにこんなのはあんまりだ!」


ある国民の言葉が耳に届くワルケ。しかし彼としてもどうにかする術が無い。近づこうにも、彼女がその周囲に纏っている魔力によってすぐに弾かれてしまうからだ。


「(くそっ!俺は魔法が使えない!どうする!どうすればここから逃げられる・・・!)」


頭を悩ませるワルケだが、しかし彼は自分以外の民衆の命のことなど全く考えてなかった。


これが彼の本性。ワルケにとって自国民はあくまでも『駒』であり、それなりに犠牲を払おうと最後に自分がゴヴァの首を取れればそれで済むという思考がベースにあったのだ。


だが彼は万策尽きた。


ワルケには何の能力も無く、あるとすれば腕力のみ。しかしそれさえも今はカウィズに通用しない。そうなればここで死を待つのみだ。


諦めたように膝から地面に崩れ落ちて青空の広がる空を見上げるワルケ。しかし、そんな彼の目に飛び込んできたのは・・・。


巨大なガーゴイルであるイーファに乗った勇者レザと魔王ゴヴァの姿だった。


「・・・な、何!?あ、あれは・・・魔王と勇者!?」


ワルケの言葉が聞こえたカウィズも、驚いたような表情を見せて同じように天に視線を送る。


「そんな・・・どうして・・・」


そしてイーファが地面に着地すると、彼らはカウィズ、ワルケ、そして逃げまどう人間達のところへと歩みを進めていく。


「残念だったなカウィズ。吾輩、意外とブラック企業の経営者タイプなんだ。魔王城を去るにはそれ相応の理由を直接述べてもらわなければ困る。そうだな、給与アップと福利厚生の見直しぐらいなら検討しよう」


彼女のことを止めるためにこう言いながら近づくゴヴァ。そしてその隣をレザが通ると、彼は草原の上に座り込んでいるワルケに向かってこう声をかけた。


「お久しぶりですね非志海間助さん。私は・・・あなたの同期社員、真留村富士夫です」

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