流星群に願いごとをしたら、流星にぶち当たって異世界の女王に転生しました。王配ってなに? え? このイケメンが夫なの!?
「あ、流星群きた。いい男と付き合いたい。いい男と付き合いたい。いい男と付き合いたいぃ! 何なら結婚したいぃぃぃ! よし!」
流星群見たさに、最近流行りのソロキャンに手を出してみた。
なぜって? 彼氏とかいないからさ! 彼氏がいた覚えもないからさ!
折りたたみの座面が低いなんたらチェアに座って、一人空眺めて、一人願って、一人脳内問答。
とてつもなく寂しい二十代後半の乙女である。
そんなことを考えながら、ビュンビュンと降り注ぐかのように流れる星々を眺めていた。
「――――え? ええ?」
ビューン、と飛んでくる星……流星…………隕石ぃ!?
☆★☆★☆
――――と、まぁそんなこんなで、前世の私は死んだらしい。
「陛下聞いていますか?」
「あぁ、すまない。聞いていない」
一昨日、ぶっ倒れて熱を出した。
半端なく忙しい公務のせいだと思う。
そうして思い出したのは、天文学的な確率での事故死。……たぶん事故死だよね?
まさか、流星群に願ったからとかないよね?
「――――か、陛下! 聞いてますか!?」
「だから! 聞いてないってば! ちょっと黙ってて!」
辺りがザワッとなったけど知らない。
私はいま、前世と今世の記憶の統合に忙しい。
「陛下はまだ本調子じゃない。今日の執務も休ませる」
「ですが!」
「私に回せ」
「…………はい。承知しました」
執務机に俯せになり、顔だけ横を向ける。
私の執務机とL字型に並べられたもうひとつの執務机。そこに座る男をじっと見つめる。
薄青がかったサラサラの銀髪、深い森のような常磐色の瞳。
映画の世界から出てきましたか? と言いたいほどに整った顔立ち。
「陛下、きついのなら寝室へ運びましょうか」
――――マジか。
このイケメン、私の夫らしい。
王配って呼ばれてるけど何だそれ。
私が女王だから?
そいや、海外はそんなシステムがあった気がする。
「いい。ここにいる」
ちょっとこの王配を観察していたい。
そもそも体調は全く悪くない。仕事押し付けてごめん。
「ふっ……珍しいですね」
「何が?」
「陛下がそうやってサボられるの」
――――サボりってバレた!
「私が朝方まで無理をさせてしまったからかと思いましたが――――」
「どぅーわぁぁぁ! 言うなって!」
執務室は無人じゃない。
メイドや侍女はいる。
何なら文官と護衛の騎士も普通にいる。
何人かの耳が真っ赤になってるし!
私の顔は絶対に真っ赤だし!
うわぁ、どうしよう。
このイケメン、マジで私の夫らしい。
確実に私が女王であるという記憶はある。
だけど、彼氏いない歴イコール年齢の、前世な私もいる。
夫との出逢いは、当時の宰相の執務室で。
まだ幼かった私は、ただ優しいじいさん(宰相)と遊ぼうと思っていた。
そこで当時の宰相の孫であるクリスハルトに出逢い、一目惚れをした。
猛アタックの末に振り向いてもらえて、ゆっくりと二人の絆を深めていた時だった。
父王が病で倒れ、まだ十九歳だった私が王になってしまったのだ。
クリスハルトは伯爵家の嫡男。
王配とするには地位が低すぎた。
評議会や上位貴族たちから大反対を受けてしまったが、私の一存で無理矢理に王配にした。
クリスハルトは引こうとしていた。
だが、私は絶対に逃したくなかった。
幼い頃からの淡い恋は、本気の愛になっていたから。
王女だって、女王だって、本気で誰かを愛してもいいだろう?
――――あぁ、心から愛していたんだったな。
ズバババババと書類を捌いていくクリスハルトを見る。
目が潰れそうなイケメンとはこういう男のことを言うんだな、と考えつつ更に見つめる。
「そんなに見つめられると、穴が開きますよ」
「……開いてたまるか」
「ふふっ。良かった、いつもの陛下ですね。……では、こちらにサインを」
普通に働かされた。
休ませるんじゃなかったのか。
流星群に願いごとをしたら、いい男と付き合って結婚も出来たが…………転生していた。
これは、願いごとが叶ったでいいのか?
謎なところである。
―― fin ――
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