妖への覚醒
初めての作品になります。
初心者なのでどうか広い心で読んでくださるとありがたいです。
始まり
この世界は妖種と人種、大まかにこの2つの者が溢れていた。そしてこの2つは長い間、ずっと争っていた。人達は進んだ科学技術と1部の能力を持った人種を武器に、妖は種族の持つ固有能力と本来の妖術を武器に本当に長い間争い、戦い、殺し合っていた。
「見ろよ、これが最新モデルよ!」
ある日の放課後まだクラスメイトが多く残る中、僕は自分の席で本を読んでいた。そうしていたら突然、興奮した友人、渡海に話しかけられた。こいつが突然話しかけてくるのはいつもの事だが今日読んでいたのはお気に入りの新刊だったから、わざと嫌そうに聞いていた。見せてきたのは対妖種用ナイフなんでも妖種だけに効く毒鋼で造られているらしいそれは最新型だそうだ。
「渡お前、そんなもの持っててなんになるんだよ。ここは妖種が入って来れない最高度防衛都市だぞ。そもそも、対妖軍の養成学校に通ってない僕達は、妖種と戦う事なんてないんだから」
「そうは言ってもよ天羅、何があるか分からんのが人生よ。それに言うだろ?備えていれば良し!ってな」
「それを言うなら備えあれば憂いなしだろ。全く無駄遣いばっかりして」
このあと、僕、生駒天羅は渡の「何があるか分からないのが人生」。この言葉を自分の身で体験すると同時に、この言葉を使うことが出来なくなってしまった。
それは渡に話し掛けられた日の午後の授業中に起きた。いつもと変わらない妖種がどんな事をやってきただのつまらない授業になるはずだったんだ。
突然、身体に異変が起きた。奥底から何かが這い出してくるような悪寒に襲われ、たまらず肺の中にあった空気を吐き出そうとした。でもまるで焼かれたように熱くなる喉に阻まれ掠れた声が出るだけだった。喉を熱くした熱はそのまま食道、胃、腸と下っていき奥底を熱くした。悪寒が熱に触れ、喜んでいるかのようにのたうち回った。
頭が回らず周りの声、音、景色、全てがごちゃ混ぜになって僕は座っていた椅子から転げ落ちた。視界は霞、息が上手くできない。でも痛みはない。なのに身体はずっと熱いまま。誰かに肩を触られたような感覚がして見てみると隣の席の女子が心配してくれたようだった。でもその女子はすぐ僕から手を離し弾かれるように遠ざかった。まるで見てはいけないものでも見てしまったように、、、
そして甲高い悲鳴をあげた。その悲鳴をきっかけにクラスの視線が僕に集まったのを感じた。そこからはさらに悲鳴、驚きの声、声にならない悲鳴と続き教室中に混乱が広がった。
熱が収まり、呼吸ができるようになった。恐らく三分程の短い時間だったが僕には数時間にも感じられる時間だった。視界の霞が無くなり僕は眼の異常を疑った。そこに映っているはずの僕の手が、人のそれでは無かったから
手全体をヒビ割れのような鱗のようなものが覆い尽くし爪は伸び鉤爪のようになっていて、関節ごとに突起が付いている。でもこれは僕の手だ。だって感覚が、この異形の手を動かす度に感触がする。驚き、声をあげるが出てきたのはまるで獣の雄叫びのような声だった。そしてもうひとつ気づく、口を動かして全ての歯が鳴りあうことに、舌で触ってみると歯が牙になっていた。顔を上げ混乱しているクラスに目を向けると全員が僕を見て怯えていた。
「バ、バケモノ!?」
クラスの誰かが叫んだ。誰を指しているかはすぐにわかった。怯えた視線、異形の手、牙になった歯。恐る恐る眼を窓に向けそこに映ったものを見る。そこには、鬼と悪魔と竜と人を混ぜ合わせ割れたステンドグラスを散りばめたような黒いバケモノ、、、いや化物がいた。化物とは妖種の1番上の階級、人種にとっての災害のようなモノだ。見た目だけで判断するならそう判断するのが順当なモノがそこにいた。
窓に映った自分に眼を奪われていると、警報が鳴り出した。そのけたたましい音は緊急事態発生の時に使われるもので、最高度防衛都市のここでは、約50年ぶりになるものだ。まさか自分がその警報の発端になるとは思わなかった。せめてもの抵抗で皆に弁明しようとしたが喉から出るのは低い唸り声のみで全く意味が無かった。
そうしている内に人種特殊警邏隊が対妖種兵器を携え校門から入って来るのが見えた。僕はどうしたらいいのか分から無くなってしまった。逃げればいいのか大人しく拘束されればいいのか。廊下で足音が聞こえた。ただバタバタといった音でなく擦っているような音が、聴力も強化されている事に気づけたが少し遅かったようだ。扉を開けて入って来たのは武装した人間、持っている武器は銃、ハンドガンタイプの対妖種兵器だと思う。警邏隊が持っている銃が光った瞬間、肩、右胸、右太ももと撃ち抜かれていき、その場に倒れ込んだ。
椅子から転げ落ちた時は痛みは無かったのに今回撃たれたところは信じ難い痛みを感じた。まるで動く焼けた鉄を差し込まれてそれが暴れているかのような痛み、突然降り掛かってきた理不尽に行き場のない怒りが湧き上がってきた。僕が何をした。なんでこんな目に。目の前が暗くなってきた。怒りでなっているのか出血でなっているのか分からないがもうどうでも良くなってきた。死にたくはないけどこのまま僕は死ぬのだろうと感じた時、窓の割れる音と叫び声、銃声が聞こえ、僕の身体が持ち上げられた気がした。
僕の意識はそこで暗闇に溶け込んで行った…
薬品の据えた匂い、人が死んだ時に最も残る感覚が嗅覚だと言うが僕は死んだのだろうか。そんなことをボーッと思っているとバン!と勢いよく何かが開く音が聞こえた。そこで自分はまだ死んではないと確信し、ゆっくり目を開けるとそこには知らないくすんだ天井、あるのは鈍く光る蛍光灯。音の方へ目を向けると知らない男が立っていた。
「おう、起きたか。どこか痛いとこはねーか、気分は悪くないか」
男の投げかけた質問は負傷者に掛けるそれであった。だからだと思う何があったか思い出せた。僕は化物になって撃たれたんだ。その時の傷を確認しようと体を起こそうとした。瞬間痛みがはしった。そのまま寝ていた場所に体を預けて、男の方を見た。男は椅子に座っていて、両側を刈り上げた短髪で帽子を逆さに被っていた。
「全身痛いし、気分は最悪だ。あんたは誰なんだ、ここはどこで僕はどうなったんだ」
「ここは俺らの隠れ家のひとつ、廃病院さ。気分は、まぁだろうな。さてお前がどうなったかだったな、お前は人間では無くなった。」
人間で無くなった、改めて言われてようやく理解できた。あの時の事が夢でなく現実の事だったと。
「あぁ、自己紹介が遅れたな。俺は東郷治お前が覚醒した種族の先輩さ」
そこから東郷が話してくれたのは僕が人間で無くなった経緯とこれからの生き方だった。まず、僕は覚醒したらしい。覚醒とはある日突然訪れるもので人種だろうが妖種だろうが関係なく人種基準の最上位種3種のどれかに成るらしい。そもそも最上位種3種は基本、覚醒からでしか成れないようだ。東郷は例外もあると言っていた、でもその例外の内容は教えてくれなかった。僕が今、やる事は諦めて力に飲まれ暴走するか、力を制御して身を隠すかの2択らしい。暴走した場合は都市を何個が壊滅させたあと討伐されて終わりのようだから実質一択だが、、、その話を聞いて頭の整理が着いて不思議に思うことがあった。最上位種3種を聞いたことがない。だって妖種の階級は下から獸の下級、中級、上級、妖の下級、中級、上級、怪談の下級、中級、上級、妖怪の下級、中級、上級、怪物の下級、中級、上級、化物の下級、中級、上級のはずで最上位種3種なんてのは無いはずだ。
「ちょっと待ってくれ、最上位種3種ってなんだ。妖種の最高は化物のはずだろう?」
「ん、あぁそうか、お前ら一般人には伝えられてないのか。最上位種3種はな、簡単に言うと妖種の持つ種族固有能力が1番強い奴らだ。お前が覚醒した俺らの種族は何かを犠牲に能力を作り出せる種族固有能力だ。なら、最上位種3種が何かを細かく教えてやろうじゃねーか」
そして聞いたのは、最上位種3種はそれぞれが世界の理と結びついた種族固有能力があるらしい。そしてそれが種族名となっている。僕らは、【代償】。僕らの他に【混沌】、【消失】がいるらしい。そしてこの世界の理は何かを得るために必要なもの【代償】と全ての中心にあるもの【混沌】、いずれ全てがたどり着くもの【消失】で成り立っていることを教えてもらった。そして僕らは最初に創り出した能力の名前の代償と名付けられるらしい。
「そして俺は、癒しの代償!喧嘩や傷つけるのは苦手でな、治す能力にしたんだ」
「あんたは、、、何を犠牲にしたんだ?」
「俺は、、、」
東郷が話そうとした時、扉が開き女の人が入ってきた。身長160cmほどの左側をかきあげたポニーテールの人だった。その人はまっすぐ東郷の元へ来たかと思うと何かを耳打ちして出ていってしまった。
「今のは誰だ?彼女も代償なのか?」
「そうだ、あいつは加久間時雨浄化の代償だ」
「浄化?あんたの癒しと何が違うんだ」
「そうだな、俺の治癒は対象の状態を把握することと自己治癒力を強化して治させる事がメインでウイルスや毒は治せないんだ。つまり怪我、細胞関連しか治せない。それに対して時雨の浄化は基本は霊的なものを浄化してあの世に送るのがメインなんだが副次的な能力でウイルスや毒を浄化して治せるんだ。なぜだかは知らないぜ?俺らの能力は割といい加減なんだ。理そのものに干渉してる分そこらはガバくても安定できる。」
「彼女もあんたと同じで人を傷つけるのが苦手だったのか?」
「いや?あいつは覚醒する前から霊的なものが見えたらしくてな、それが驚くほど苦手だったらしい」
だから浄化なのか、、、
「さて、色々と整理してるとこ悪いがぼちぼち移動するぞ。隠れ家じゃなくアジトに向かう、もう動けるだろ?」
言われて体を動かしてみる。痛みはまだあるが確かに動かないほどではないあれだけ撃たれてたのに、、、これが治癒か
「行くぞ、着いてこい」
そういい立ち上がる東郷の後を追いながら周りを見ると病室の一室だったようだ。東郷はそのまま廊下を歩き階段を降りていって地下に入って行った。地下の入口には加久間がいてその手にはランプを持っていた。そこは使われなくなった下水道のようで水はなく、先を行く加久間の持つランプが唯一の明かりで真っ暗だった。
「遅れるなよ、迷うぞ」
そう言う東郷について行き、僕らは暗い道を歩き続けた。
歩いていると次第に前が明るくなってきていた。完全に前が明けるとそこは外ではなく巨大な地下空間になっていた。天井まではゆうに100メートル以上はあるだろう。驚くことに地下なのに川があり光があり、農作物が育っていることだった。そして古民家のような家屋が複数あり村のようになっていた。
「どうなってるんだ」
思わずこぼれた言葉にすかさず東郷が答えてくれた
「ここは俺らの国さ。地上でも樹林とかの中に結界を張れば人種のレーダーだのは避けられるけどな、その維持が大変なんだ。ここには住処をおわれた弱い奴らしか居ない。そいつらのために俺ら戦うのが苦手な【代償】で、この地下を創った。俺らは底国って呼んでる。アジトはここの奥にある」
「底国、、、この光も【代償】の力なのか?」
「そうだな、まんま光の代償って奴の力よ。こいつの力は凄くてな、この地下に太陽と同じ性質の光を設置したんだ。だからこの光も夜になると消えるんだぜ。つまり今は昼時だな。さぁ、続きは後だアジト行くぞ。」
アジトに向かう道すがら東郷と加久間がここの住妖にどれだけ感謝されてるかがわかった。気づいた途端よってきて礼を言っていく。農作物をくれる妖らもいた。ただ弱い奴らと言っていた割には鬼(最低でも妖怪の中級)なども居たりしていて戦うのが苦手な奴らもいるのがよくわかった。
そして今までの古民家とは違いコンクリートの窓の少ない研究所のような建物が見えた。恐らくあれがアジトなんだろう。
「あれがアジトだ。」
やっぱりそうだった。近くに来るとアジトの周りは塀に囲まれていて要塞のようになっていた。
「ここは、最後の砦になるからな硬いことに越したことはねぇ」
最後の砦、、、つまりここにも人種は入ってくるということなんだろうか。
「ただいま!開けてくれ!!」
東郷がそう言うと門が開き続いて奥にあった扉も開いた。入っていくと門を開けたのは牛の頭をした大柄の妖だった。牛頭鬼、鬼の上位で最低でも怪物の下級の強力な妖が門番をしていた。
「お疲れ様!いつもありがとね」
「お邪魔します、、、」
内心ビクビクしながら東郷の後に続いた。アジトの中は金属ともコンクリートとも言えない材質の物で1面作られていた。
「このアジトを構成している物はな、衝撃を吸収する素材で作られててな、熱も火も電気も衝撃も通さない。つまり力の強いやつが暴れても壊れないんだ。」
「弱い奴らしか居ないのに暴れる奴がいるのか?」
僕の疑問に東郷は僕を指さしながら一言
「お前」
どうでしたか?投稿は不定期で基本は先にpixivにアップするので早く読みたいなどあればこちらへどうぞ。アドバイスなどあれば下さると大変助かります。https://www.pixiv.net/users/39354144