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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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79話 悪役令嬢にゃー


 ミシュが帰ってきて数日が立ったある日の事。

私たちはいつも通り練習をしていると、何やら学園が騒がしくなってくる。


「なんにゃ?」

「今日はあの日じゃないですか?ほら、見学みたいな」

「そういえばそういうのありましたわ!」

「私たちは推薦組だから関係なかったやつにゃよね?」

「ここまでこれたのですね……」

「まぁでもあれですわ、他の皆さんはもう実家に帰っていますわよ。練習しているのは私たちだけですわ」

「それもそうにゃね」


そう今の季節は皆さんは帰省して、体を休ませる時期でもあるのだ。

しかし私たちは特に家に帰る用事もないため、生徒会長に確認したところ、試験生が見に来る可能性もあるけどそれでもいいなら、ということで快くOKにしてもらった。


「まぁスライもフランも今回は実家に帰らないらしいですからね……あの2人に負けないように頑張りましょう!」

「にゃー!」

「おー!」


ということで私たちは並走トレーニングを始める。

今回は前のような無茶な走りではなく、3列に並びそれぞれ最後尾の人が先頭に出る。

という比較的シンプルな方法だった。


「そういえば、貴族っているのにゃ?」

「もちろんいますわよ」

「います……というか、シャーリンスタミナないのに、よく走りながら話せますね……」

「スタミナをつける練習にゃ!」

「スタミナ尽きるの間違いでは……まぁいいです。走りながら聞きなさい。貴族というのは下級貴族から王級貴族まであります」

「そんな言い方だと難しいですわよ。ロミ、まず国には身分というのがありますわ。上から女王様、王級貴族、上級貴族、中級貴族、下級貴族、上級平民、中級平民、下級平民で分かれているのですわ」

「にゃるほど……あっ!次私にゃね」


私は再び2人を抜かす。

話しながら走っていると最後になったことをついつい忘れてしまう。


「まぁ、王級貴族、下級平民ととはいえ生活は基本同じですわ。違うのは少し権限が増えるということだけですわ」

「権限にゃ?」

「例えば、貴族ならば貴族特権というものが付与されて土地を無料でもらうことが出来るのです。平民は自分で土地を買わないといけません」

「にゃるほど……」

「貴族と平民の違いはここが大きいですわ。後の細かい階級はどれだけ多く土地をもらえるか。ですわ!下級平民でも一軒家と小さな畑分の広さは買えますわね」

「2人は貴族にゃ?」

「はい、私は貴族ですね」

「私は違いますわ」

「あれ?そうでしたか?私あなたのお屋敷にお邪魔しましたわよね?」

「……それは昔の話ですわ」


なんかよくない雰囲気が漂っている……

エリの過去に何があったのか、聞きたい気持ちはあるけどここで聞いてしまうとダメな気がする。


「とりあえず!話は分かったにゃ!さあ!トレーニングを続けるにゃよ!」


私は慌てて話を終わらし、何事もなかったようにトレーニングを続ける。

胃が付いたら私たちのトレーニング風景を見る人が増え、結構人だかりができていた。


「おわったにゃー!」

「お疲れ様ですわ~」

「凄いですわね、3グループほどしか食堂いませんわよ」

「当たり前じゃないですか、私たち以外ほとんど実家に帰省しているのですから」

「少なくても騒がしいのは変わらないけど」

「にゃはは~ところで皆に報告があるにゃ。楽器無事にオーダーメイド出来たらしいにゃ」

「「「おおおー!」」」

「3人ともうるさいですよ、ミシュいないだけまだましだけど」

「そういえばミシュは何処にゃ?」

「部屋で勉強していましたわ~」


私たちは目を丸くする。

まさかあのミシュが勉強しているなんておもわなかったのだ。


「そこまでしてくれないと、私もつまらないし、良いんじゃない?」

「そうだにゃ~」

「エリさん!エリさん!ここに居ましたか……」

「なんですの?リンカさん」

「あなた宛てに、ご家族からお手紙が届いています」

「……家族?私にご家族なんていませんわ」


急にエリの表情と声が変わる……

私たちは思わず黙るしかない。

ここまで怒っているのエリを見るのは初めてで、まるで今の瞬間だけ……

エリが悪役令嬢のような気配がしたのだ。


「しかし……ここにウラン家と書いていますが……」

「喧嘩打ってますの?」

「いえ、そういうわけでは……」

「エリ、いったいどうしたのですか?」

「ふぅ……私、少し失礼しますわ、リンカさんすみませんですわ、手紙ありがとうですわ」


エリはそのまま、手紙を受け取ると歩いて行ってしまった。

ウランというのがどうやらエリの家系らしいのだけど。


「家族いないって言ってたにゃ」

「私何か悪い事を言いましたでしょうか……?」

「リンカさんが悪いわけではありません、しかし、エリさんの家庭で昔、何かがあったのでしょう」

「心配ですわ~」

「それはエリの問題でしょ?私たちに出来ることがあるとでも?」

「貴族のことに関してはあなたたちでは、まず無理です。リンカさん教えて頂きありがとうございます」

「いえいえ、全然大丈夫です!」


そうして私たちがいったん解散して寮に戻った。

私もフランも正直エリの事は心配ではあるのだが、身分的に渡曽達ではどうしようもできない。

そうして悩んでいるときドアが叩かれる。


「なんにゃ?」

「何?」

「エリがいません!」


リンカが目の前に立っていた。

私は正直何が起こっているのか全く分からない。


「エリがいなくなった!?どういうことにゃ!?

「こういう手紙が置かれていました…‥」


その手紙に書かれていたのは……


『【シャースミミリン】の皆様にご報告いたしますわ。私はこれで学園を自主退学することにいたしました。理由は家系の家系の財産が無くなったとの報告があったからです。今までありがとうございましたわ』


の3行だけが書かれていた。

どうやら先に気が付いたのは、リンカらしくロミは今、自主トレーニング中で部屋にはいない。


「そんな状況になっていたにゃんて……」

「皆様!大変です!ってあれ?」


奥からロミとスライ、ミシュも走ってきた。

ここはもうエリと長い付き合いのあるロミに任せるしかないだろう。


「ロミ!この手紙にゃ」

「……一体何のつもりですか、エリ」

「にゃにゃ?」

「エリの家系は下級貴族ではありますが、お金は存分にあるはずです。何せ中級貴族に昇格する話が出ていると聞きました。なのに財産が無くなったというのはあまりにも不自然です」

「でももういないけど?」

「今の時間だともう連絡船は出発してしまいました!」

「とりあえず、このことはまた明日考えませんか~?」

「そうするにゃ」


ということで結局、エリの件は、今からだとどうしようもないため明日に回すことにするのだった。

今回はミシュの時とは比にならない……結構重大な事件のような気が私の中でしている。

無事に解決できるならばそれでもいいのだが、相手は下級とはいえ貴族……下手なことをすれば、この国に居られなくなるかもしれない。

そんな不安が私を襲う。

でも諦めない、ただそう思うのが、私にできることだと……そう考えている。

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