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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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69話 ありのままでいい私(ミシュ視点)


 シャーリン達は森の中を走り回って、フランは海を探し回っていた。


「ミシュ全然いないにゃ!」

「羽を怪我していますわ、そこまで遠くはいけないはずですわ!」

「でも……何処に行ったのでしょうか……」

「海もいませんでしたわ~」

「戻ったにゃ……?」

「荷物をもって出ていったので……それは無いと思います」


結局シャーリン達は、もう少し探すことにするのだった。


その一方私はは、女の子と小さい円形の机で向かい合っている。

前の女の子は5才くらいだろうか……


「お姉ちゃん名前なんて言うの?」

「私はミシュ・アルフィールだよ、えへへよろしくね!ハチドリ類」

「へぇ!ハチドリ類でもレースに出れるんだね!!私はレン!こう見えて……精霊族のピクシー類だよ!」

「へえ!めずらしい!」


そう精霊族は精霊類が数が多いのだが、ピクシー族はかなり少ないのだ。

ただ……この子も不治の病に陥っているのだろう……でも。


「君も主翼縮小病しゅよくしゅくしょうびょうに?」

「ううん……私はね……」


と背中を見せてもらったのだが……

それはあまりにも見てられない状態だった。

左羽の全部が黒く壊死しているのだ。


「私は主翼血栓しゅよくけっせんって言う病気でね、羽と背中を繋ぐ大きな血管に塊が出来て羽が壊死してしまうって」

「そんな、お金は?」

「お母さんが直すために溜めてた!私をレースに出すんだ!って」

「そのお金は?」

「詐欺で全部取られたらしくて……」

「それでもうこんな羽に……」


壊死の進み具合を見るに、恐らく10年ほどは立っているであろう。

一応命には問題ないらしいので普通に生活をしている、とのことだった。


「ミシュさんは骨折なんですか?大変ですよね……」

「普通に話せるんですね……」

「まぁ私もこう見えて150才ですから!」

「そうです、骨折で……医者には前のように飛べないとまで言われました」


そうして私はもうレースには出る気がない事、学園を逃げて出てきたこと、姉を超えるためにレースに出てること等をすべて話した。

レンは私の話を一切否定することもなく、うんうん頷いて聞いてくれている。


「だからもう飛びたくないんです」

「うーん……私レースに出たことはないから分からないけど……前のように飛ぶ必要はないんじゃない?」

「え?前のように飛ぶ必要はない??」

「だって、羽を骨折するってことは……本当の自分の飛び方が出来てないってことでしょ?」


(本当の自分の飛び方が出来ていない……?どういうこと……?)


私は今までの自分を思い出す……

今まではずっとお姉様を超えるため、お姉さんよりも強くなるためレースに出ていた……


「ミシュさんはミシュリーさんを超えるため、無意識でミシュリーさんの飛び方をしているのではないですか?」


そこはなんとなく私も分かっていた。

ハチドリ類で3連王間近まで言ったのはお姉様が一番近かった……だからお姉様の飛び方を前から真似をしていた。


「そうだけど……」

「無意識とはいえ、人の真似をしてレースに勝った場合って、本当に自分の実力で勝ったって言えるのかな?」


私は目を丸くする。

なぜなら、こんなことを言われたのは生まれて初めてだったから。


(そういえば……そうだよね……私もカーブはオリジナルだけど……それ以外はすべてお姉様の真似だった……確かにそんなので勝っても……何も強くなってないよね……私じゃない飛び方だから怪我して当然だよね……)


私の目から何か水滴が落ちてくる……

全ては、簡単なことだったのだ……


「そっか、私は……私の飛び方をして勝てばいいんだよね」

「うんうん!そうすれば羽に負担を減らして……実力で強いって言ってもらえるんじゃないかな!」


すべて私が間違っていた。

私が間違った飛び方をして骨折して……シャーリンさんの努力を無駄にして……


「フラン……まさか初めから私の事……」


フランは昔から……私の事を1度も嫌いになってはいないのだろうか、そんな考えが頭に浮かぶ。

じゃないとあの時……私を手の平で叩き説教することも、ここに連れてくる必要もなかった。

むしろ才能でしか勝てないと冷たい声で言っていたのは……私が自分の力で勝とうとしていないのを最初から見抜いていたから……

本気で私と戦ってみたい……そう思っているのではないだろうか……


(そうだよね……ここで逃げたら……私負けるよね!)


私はゆっくりと立ち上がる。

レンにもどうやら私の思いが通じたようで、笑顔になる。


「私決めた!今度からはレースで……私の実力で勝って見せる!前までの甘えた飛び方は捨てて新しい飛び方を覚えるよ!」

「それが良いと思う!」

「さてと……思いは決まったようですね」


上からフランが降りてくる……

どうやらすべてフランの思惑通りだったらしい。

私は思わずフランに抱きついて泣き叫んでいた


「フラン!ごめんなさい!」

「はぁ……まったく……」


私の頭にフランの手が触れる……

どうやら撫でてくれているようで、とても落ち着く。


「早く帰りますよ、ミシュ」

「うん、ありがとう!」


私は再びレンの方を見る。

正直レンには感謝してもしきれない、なんたって私にヒントをくれたのだから。

レンに会っていなければ本当に引退をしていたと思う。


「私、まだまだ頑張ってみるからね!次からは……ありのままの私で!」

「うん!私、必ず復帰レース応援しに行くからね!」


ということで私は再びフランとともに学校に戻っていくのだった。

私の腹に回しているフランの手は、行きの時のような強引さはなくなり、安心したかのように優しかった。

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