68話 ミシュの決意(ミシュ視点)
私は何をしているのだろう。
学園を抜け出し、m荷物を背負い今崖の上に立っている。
前には海が広がており、ここを飛んでいくと家に帰れるのだ。
「わたしだって……分かってる。でも……もう今まで通り飛べないなんて……だったらこれで合ってるよね……皆今までありがとう」
私は羽を広げそのまま崖から飛んでいった。
正直この羽でどこまで飛べるかわからない……
そんな不安を抱えながら。
一方その頃シャーリンは部屋の中で唖然と目を丸くしていた。
「脱走ってどういうことにゃ!?」
「部屋の窓が開いていましたわ~荷物もなかったので恐らく学園から抜け出しましたわ~」
「急いで探しに行きますわよ!」
「でも外出届……」
「そんなのはいいです!まずはミシュの安全が大事ですよ」
シャーリンはしばらく考えると、大きく頷き、人形と壊れた羽を手に部屋を飛び出した。
「はぁ……まったく……」
フランは結構落ち着いているようで、シャーリンが飛び出していったのをただ見送っているだけだった。
手には数枚の紙を添えて。
「はぁ……はぁ……」
私はフラフラ揺れながら空を飛んでいる。
サポーターを付けながらの飛行……
本来ならば禁止されているのだが、私は今何も考えていなかった。
だって……私はもう終わりだと思っているから。
「どうして……こんなことに……」
ピリ!と右羽に痛みが走る……体が右に傾いていくのが分かる。
下は海……このまま落ちたら溺れて……
ガサッ!
と私の腹を誰かの手が回される。
ここは上空なので恐らく鳥族の誰かなのはわかった。
だが後ろを見れない……
「誰なの?連れ戻す気?」
「はぁ……」
この声は……フランだった。
何で私を助けたのだろうか……
「なんで私を助けたの?私の事嫌いなんでしょ?」
フランは私の質問を無視しそのまま飛び始める。
どんどんとイライラが募ってくる。
何でここまでするのか……
「ねぇフラン、私の事嫌いなんでしょ?何でこんなことするの?」
「……」
「何か言ってよ!!」
「あなたがあなたのお姉さんと一緒だからですよ」
「だからお姉様の話は……」
「私もお姉さんがいます」
それは知っている、フランのお姉さんはレミンさん……
でもなぜ今話すのだろうか。
「私のお姉さんは、ある鳥族の事が大好きだったんです。しかし、その鳥族が怪我をしてしまい……その時に引退宣言をしたその人を見て……お姉さんは泣いてました『ライバルだったのに、一緒にまた飛びたかった』と」
「そうなんだ……でも私はそんなの聞いても戻るつもりはないよ」
これは本当、この話を聞いても私はレースに出て本気で走ることは出来ない。
その現実は変えられない……
「着きました」
フランはゆっくりと私を地面に降ろしてくれる。
周りには小さな子供?たちが走り回っていた。
「あ!!フラン姉ちゃん!みんなー!!フラン姉ちゃんきたよー--!!」
「わああ!!」
前の建物から多くの女の子たちが走ってきたかと思えば、フランの周りに集まっている。
私はどういうことなのか全くわからなかった。
どうしていつも冷たいフランがこんなに、子供から愛されているのか……
「フランさん、いつももありがとうございます!これにサインお願いします……今日は結構速いのですね?」
「はい、今日は学校の人も連れてきましたから」
「あなたも……すみません羽を怪我しているのですね!初めまして、私は鳥族、ペンギン類のニケ・アラミ―ルと言います。この鳥族保護施設の院長をしています」
「鳥族保護施設……ですか?」
全く聞いたことがなかった……
このような場所に施設があったなんて……
「フラン姉ちゃん!私から!!」
「順番ですよ?並んでください、ふふっ、こらこら焦らないでください」
とフランが1人ずつお腹に手を回すとそのまま飛んでいく……
一体何をしているのだろうか……
「あはは!!たかいたかーい!!」
どうやら飛ばされている子供たちはとても元気そうで……
私も昔あんな風に楽しんでいたのだろうか、椅子に座りながら私はフランの様子を見ている。
「フランさんは毎日、この時間にこうやって子供たちを空へと飛びさせてくれるんですよ」
「鳥族なのにですか?」
「ここにいる鳥族たちは全員……生まれたときから主翼縮小病と言う病気を持っているのです」
「しゅく?」
周り
全く聞いたことの無い病気で少し困惑してしまう
私がおどおどしているのを気付いたのか、ニケさんは背中を見せると自分の服を掴む
「実際に見てもらった方が速いですね」
と上の服を脱ぎ私に背中を見せる。
私はその光景に目を丸くするしかなかった……
「羽が……」
「主翼縮小病はこんなふうに……羽の大きさが手のひらサイズで生まれてくる……鳥族における不治の病なのです」
「え?それじゃあ……」
「無論、空など飛べるはずもありませんから……ここにいる子たちは私を含め鳥族なのに空を知らない、子たちが多いのです。あとは、飛べないということで……いじめられていた子たちもいます。フランはそれを知って毎日子供たちを順番に空へ飛ばしてあげているのですよ」
(フランが……私何てことを言ってしまったのだろうか……不治の病……つまり一生飛べない……)
「まぁ、飛べなくても鳥族は鳥族ですから、私は気にしませんけどね!」
「あっ!お姉ちゃん!」
「どうしたの?」
隣から女の子が1人走ってくる。
私はとりあえず、怖くならないよう笑いながら答える。
「それでは私は失礼しますね。ゆっくりとお話ししてくださいね」
「はーい!」
「すみません、ありがとうございます」
私は女の子と2人でいろいろとお話することになったのだった。




