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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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67話 フランの怒りにゃー


 ついに来てしまった……

今日は、ついに私が作った人形をミシュに渡す日ということで、人形を持っている。

ここまで約3日以上……いやデザインをずっと考えていたため実際の長さは……ミシュと出会ったあたりから……


「おはようにゃ!」

「シャーリン!体調は大丈夫ですの!?倒れたって聞きましたわよ!?って、その人形……」

「ついに完成したのですね。ということはまさか……シャーリン今までずっと……この笑顔……また見てみたいです」

「凄いですわ~!ミシュそっくりですわ~!」


ということで私たちは早速教室を覗く。

ミシュは机に座っている。

前までの元気はすでに全くなくなっており、目もずっと机を見ている。

まるで絶望に染まっているような感じになっており、かなり心配になってしまう。

けどここで止まってはいられない……


時は流れ放課後……


「ミシュちょっといいにゃ?」

「……?」


私はのっそり起き上がるミシュを支え、黒板から見て教室の右端の壁にもたれさせる。

相変わらず顔は絶望の表情をしている。

ミシュはこれまでずっと負けず、ずっと真面目に進んできた。

思うところはきっとあると思う。


「これプレゼントにゃ!私が作ったんにゃよ!これで元気になってほしいにゃ!」


と私は両手で人形をミシュの前に持ってくる。

しかし、表情は変わらない、むしろどんどん不機嫌になっていくような感じがする……


「……いらない」

「……何でにゃ?ミシュこういうの好きにゃよね?」

「シャーリンに私の気持ちなんてわかるわけない」

「それは……」


どうしても言い出せない(気持ちは分からなくても、レースへの情熱は誰にも負けてないはずにゃ!)と

何故言い出せないのだろう……

私が鳥族じゃないから?それともミシュの事を何もわかってないから?


「そんなことないにゃ!私はミシュを応援してるにゃ!だからもうちょっと頑張ってにゃ!」

「シャーリンに言われたくない!」


とミシュから手をはたかれる。

人形は私の手から離れそのまま床に落ちる……

ガコン!バキ!!と大きな音が鳴り響く。

私は思わず人形を拾い上げ、様子を見る。

本体は無事なのだが右羽が2つに割れていた。


「道場で応援してもらいたくない!私は飛べなくなったの!もう終わりなのよ!」


私は人形を床に戻しゆっくりと立ち上がる……

正直何も考えられなかった、あんなに頑張った努力が無駄になった……

そんな思いと何もできなかったという思いが交じり合う。


(私が間違っていたのだろうかにゃ……それとも……)


「どきなさいシャーリン」

「にゃ?」


パシーン!!


「きゃ!!」


と教室に大きな音が鳴り響いた。

何とフランがミシュの頬を手のひらで叩いたのだ。


(あのフランが……叩くにゃんて……)


「何するのよ!!」

「あなたが怪我して飛べなくなろうが、私には関係ありません。ですが、応援してくれる人を暴力で突き放すことを私は絶対に許しません!そして一体あなたはなんなのですか!?さっきから聞いていれば、骨折したから飛べないですって!?鳥族を舐めるのもいい加減にしなさいよ!たかが骨折なんかで絶望?元から飛べないまま生まれてきた鳥族や病気持ちで生まれてきた鳥族がいるんです!」

「フラン私は別に怒って」

「シャーリンは黙って!」

「にゃ!?」


フランのこんな大声は初めて聞いたので私は思わず後ろにこけそうになる……がぎりぎりロミが支えてくれたようだった。


「見守りましょう、シャーリンさん」

「……そうするにゃ」


私は結局何も出来なかったという結論に至ってしまう。

ミシュの為に……皆の為に……

私は【シャースミミリン】のリーダーなのに……

そんなことを考えているとフランは転がっている人形と壊れた羽を持ち上げる


「これはシャーリンさんが眠魔も惜しんで作り上げた人形です。私が寝なさいと言っても、ただあなたの為だけに作り続けた人形なんです。たまに木のクズが目に入って痛い思いをしているのだって知ってます」

「にゃ……?全部……知っていたにゃ……?」


私は目を丸くした。

確かに何回かは目に入っているのだけど、それはかなり夜中の眠たくなっているときが一番多い。

私は完全に理解した。

つまり、フランはずっとドアの隙間から私の事を覗いていて『うるさいから寝れない』というのもうウソ……私の事を思っていってくれたんだ……ということを。


「この人形は、シャーリンのあなたに対する思いがすべてつまった人形なんです。だから……たかが同情でくれたなどと軽々しく考えて簡単に壊していい人形じゃないんですよ!!あなたのお姉さんもこんな感じ」

「お姉様の話なんてしないで!私はお姉様を超えるためにレースを……」

「お姉様を超えるお姉様を超える……うるさいんですよ!今やっていることはレースから逃げて引退するって言ったミシュリーさんと何も変わっていないじゃないですか!人の気持ちも考えず……骨折したから引退宣言全く同じですよ!」

「引退宣言なんてしてない!」

「してるじゃない!この人形を見なさい!あなたは応援の声を消したのです!それはもうレースには出たくない……引退すると言っているのと全く変わりません!こんなことならあなたはこの学校に初めからこなくてよかった!レースになんて出てこなくてよかったんです!」


フランの叫び声が教室内に響き渡る……

ドアは閉めているため、外に聞こえる心配はないのだが、いつも冷静なフランがここまで怒っているのは、私も初めて見る。


「もう私はレースになんか出ない!この学校だってやめる!」


そういうとミシュは教室を飛び出していく……


「ミシュ!」

「待つのですわ~」

「待ってください!」


エリ、ロミ、フランが追いかける……

私は、人形を見て悲しそうにしているフランを見つめていた。


「……本当にいいにゃ?」

「ここから這い上がるかは結局、本人次第です、私はチャンスを与えただけです」


私は不安になりながらも寮に戻る。

無事頭を冷やしてくれればいいのだけど……

ドンドン!

とドアの叩く音がする。


「なんにゃ?」


私はドアを開くとエリ、ロミ、スライが心配そうな顔で見てくる。

何かあったのだろうか……


「大変ですわ!!ミシュが……脱走しましたわ!!」


エリが大きな声で叫ぶ。

そう……私が考える中でも一番起きてはならない事態が起こってしまった。

ミシュの脱走……一体この後どうなるのでしょうか……

そして、フランがめちゃくちゃかっこいい!

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