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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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63話 ミシュの夢にゃー


 もうミシュの右翼軸断裂骨折から1週間が経つ。

相変わらず、ミシュの顔は絶望に満ちたままだった。


「ミシュ……これ……昼ご飯にゃ」

「……いらない」

「食べないと治りませんわよ?」

「そうです、しっかり食べてください」

「私たちの手作りですわ~」


一応私たちは絶望に染まってしまったミシュを何とかして元気にさせてあげようと、必死に頑張っているのだが……なかなかお金が集まらないのだ。


「それじゃあ私たちはそろそろ部屋に戻るにゃ」

「気分が戻ったら来てくださいませ」

「そうですね、待ってますよ……ミシュ」

「私も待ってますわ~」


ミシュはいつもすぐ寮に戻っている。

医者には、お金が集まり手術できるようになるまでは絶対安静で、トレーニングは禁止と言われたのだ。

その時も……


「ふざけないで!!なんで!?筋トレなら……」

「ダメです。鳥族は繊細なので、絶対安静でいてください」


ミシュは布団に戻り毎回泣いているのだ……

外から聞こえてくるトレーニングの掛け声。


(はぁ……何してるんだろ……お金が集まらないと私……)


そうして、ミシュがずっと1人で呟いているその頃、私たちはグループ室でとりあえず今後について話し合っていたのだが……


「やはりお金の問題がありますわね……」

「ここから3ヵ月は……レースはほとんどない期間です……」

「このままだと……ミシュが可哀そうにゃ!」

「大変ですわ~どんどん期間が延びてしまいますわ~」


結局その日は、何も決まらないままトレーニングに向かうことになるのだった。

ミシュを何としてでも助ける。その思いは4人全員同じなのだが、この問題だけはどうしようもできないのだ。

その理由は、他グループ、もしくはソロ活動者からのお金の貸し借りは禁止というところにあるだろう。


「ミシュ……なんとしてでも助けるにゃ!」


(正直不安なのはわかるにゃ……このままお金が集まらずに……結局15年レースに出られず忘れ去られていく……復帰しても誰も覚えていない……そんなの辛すぎるにゃ!ミシュは努力をしていたにゃ!祖入れは私が良く知っているにゃ……私が出来る最後の事と言えば……)


コンコン……


「入っていいぞ」

「失礼しますにゃ」

「シャーリンか、どうした?」

「今回のミシュの怪我は……学園の費用からは治療費でないんかにゃ?」


そう、私が出来る最後の手段は……学園に助けてもらうこと……

私たちだけでは正直限界があるため、学園に頼み込むしかなくなるのだ。


「すまない……私たち学園からしても、助けてあげたいのだが……お金に関してだけは手伝うことは出来ないのだ……その代わりに様々なサポートを行っている。1人に治療費を学園から出してしまうと……ほかの皆から苦情が来たりする恐れがある……だからそのために皆はお金をためて、グループ室などに保管をしているのだ」

「そうなんにゃぁ……」

「あぁ……すまないな」

「別にいいにゃ!正直出せない理由を聞けただけでもラッキーにゃ!」


ということで私は生徒会室を後にする。

正直分かっていた答えだった……

1人の為にお金を出してしまうと、ほかの皆さんにも支援金も出さないといけなくなる。

そうしたら圧倒的赤字になるのは目に見えている……


(まだ……諦めないにゃ!絶対に……そうだ!何かプレゼントを作ったら喜んでくれるかにゃ)


そう私は昔、前世で親友の為に、落ちている木でその猫の人形を爪で作ったことがある……

つまり……この世界にも木があれば……ミシュの木人形を作ることが出来る!

と考えたのだ。


(私にしかできない……ミシュへの応援の気持ち……なんとしても届いてほしい……)


ということで私は、今日雑貨店に寄ることにしたのだった。


一方ミシュは今日も布団の中でじっとしていた。

何もできない静かなこの場所は、ミシュにとってはかなりの苦痛になる。

スライとも話をしておらず、授業中も内容を分かっていなそプな顔をしているのだ。


「わたしって何のために飛んだんだっけ……スターリ―さんに憧れて……」


話は、ミシュが3才の12年前に巻き戻る。

そこでミシュは姉のレースを始めてテレビで見ていた。


「お姉ちゃん頑張れー!!」


『1位はスターリ―さんです!!圧倒的な差をつけ今い1位でゴールしました!!』


「ああ!お姉ちゃん……泣いてる……なんでだろう?」


ミシュは下を向く、正直ミシュはレースを見たのがこれが初めてのため、姉が負けたことにはそんなに悲しいという気持ちは分からなかった。


『さあ!今日の1位を取ったスターリ―さんにお話を伺いましょう!わずか3才という最年少での大佐1位ですが、どうでしたか?』

『とっても楽しかった!私レース大好き!』


その時のスターリ―の笑顔にミシュは心を打たれたのだ。

いつかスターリ―さんに認めてもらえるような鳥族になる!と

同じ年齢だということもあり、ミシュ自身でも勝てると自身が出ていたのだ。

私もレースに出たらスターリ―さんと一緒に飛べる、姉と競える……

そう思って次の日から、ミシュは1人山の中でひたすら飛び回っていた。

ある日は、鳥族を見つけては競争して、ある日は石を持ちながら飛ぶ……


そうした生活を続け、はや9年経った12才の時。

初めてレースに出て負けたとき……姉の悔しさの意味が分かった。


(悔しい!でもレースって……とても楽しい!)


そうして挑んだ、3回目のレースで見事に勝った。

ミシュはスターリ―に続く脅威になるのではないかと言われていた……

そうして5回目……いよいよお姉さんと飛ぶ予定のレースが出来た。

ミシュはとても喜んでいた。なにせお姉さんと飛ぶことが出来るのだから……

しかしその思いは届かず、1週間前の【ヒューリンガースカイ】で姉が骨折をし、3年間の休養に入り、私は姉と飛ぶちう夢が叶わなくなった。

さらにその翌月には、スターリ―さんがレース出場禁止になりそのまま消息不明、私と競い合う相手はもうどこにもいなくなった。

さらに翌年の13才の時……姉が引退するという噂を耳にした。


「何で……なんで!こんなに頑張ったのに……姉と競い合うために!!スターリ―さんに認めてもらいたかった!!なのに…‥なんで……そっか私が最強になればいいんだ……競い合える仲間がいないなら……最強の場に君臨して……姉を超えることを目標にすればいいんだ。そうすればスターリ―さんに認めてもらえる……」


そうして、姉を超えるというたった1つの目標をもってレースに出ることに決める。

それが今のミシュが誕生した瞬間だった。


「結局……何も変わってない……昔も……今も……私の夢はかなわない……結局レースになんて出るべきじゃなかった……努力なんて……一瞬で終わるんだし…・・・」


ミシュは布団に顔を埋めながら、何度も何度も何度も何度も独り言を呟くのだった。

もう飛べないと確信したようなそんな……悲しい声でひたすら嘆き、呟くのだった。

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