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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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61話 ヒューリンガースカイ(ミシュ視点)


 いよいよ今日は私の目標である3連王最後のレースがやってきた。

昨日はエリのサプライズでなんとスターリ―さんに会うことが出来たのだ。

私は昨日シャーリンに言われたことを思い出す。


「今日は皆で応援に行くにゃ!」


今思えばシャーリンと出会ってなかったら……私どうなっていたのだろうか……エリともロミとも出会ってなかったように思う。

ソロで活動していたことになるのだ。


(ソロで活動なんて……私無理だったかも)


私はゆっくりとスタートの位置まで移動式運搬床で登っていく……

空中レースは毎度高い位置からスタートをするので、毎回スタートまでは移動式運搬床OR上昇装置で登ることになるのだ。

そうしないと序盤で地面に足がついたりするからで……その代わり飛ぶときの助走は禁止となっている。


「ミシュさん!今回はよろしくなの!ミシュさんに3連王かかってても……私は負けないの!!」

「あれ、セイリンさんも一緒!?うん!よろしくね!私も負けるつもりはないよ!」

「私も忘れないでよー!!」

「え!?エディさんも一緒なの!!」

「私たち揃うの初めてかな?」

「そうだね、よろしく~」

「じゃあ……行くの!!」

「出発進行だー!」


ということで私たちはいよいよ……本番のレースのスタートラインに立つのだった……



一方その頃……シャーリン達は……なぜか崖の所に立っていた。

この崖の少し下には海が地平線に向かって広がっており、上にはスタート台が見えている。


「ちょっとどうしてこんなところですのよ!!」

「誰ですか?チケット買わなかったのは!」

「エリのせいですわ~」

「まぁまぁ……でも下からもいいにゃー」

「みんなもここにきたのか?良く分かったな……まぁいい、ここは良く見えるぞ、見えなくなったら後ろにモニターがあるからな」

「あなたは……」

「生徒会長にゃ!!」

「わざわざここにモニター置いたのですね……」

「隠し観戦席ですわ~」


そうシャーリン達の前に現れたのはシュレーヌだった。

どうやらこの場所はシュレーヌさんのお気に入りの場所らしく……

隠し観戦席を作ったらしい。

とりあえず私たちはミシュの応援に徹するのだった。


『さあ始まりました!【ヒューリングスカイ】今回は誰が勝つのでしょうか!今回の注目選手は……3連王にリーチをかけているミシュか!それとも【原石の飛行者】セイリンか!はたまた【終焉の支配者】エディか!皆さんお馴染みの実況及び進行のニリです!』

『解説のセイラです!今回のレースのやはり厳しいところは……【魔の竜カーブ】でしょうか……このレースは特殊で往復すべてが向かい風……そして500KMのカーブ時には……逆向きに吹いている2つの風……そして右から曲がる方向に強風が吹いていますからね、3つの風が合わさっている中心には、風の乱風がありますからね、巻き込まれると命を落とす可能性もありますから……巻き込まれないでほしいですね……あと今日は、かなり風がいつもより強いです、気を付けて飛んでほしいですね……』


実際風に強いドラゴン族たちが乱風の周りを守っているため、巻き込まれる確率はほぼ0なので、そこは心配することはないのだが……万が一のことがある。


『では!行きます!5、4、3、2、1、スタート!!』


私たちは一斉に飛び出す……

そういえばここからは、気にしてなかったのだが……実は実況や解説はレース中にも聞こえては来るのだ。


(そんなことはどうでもいい……とりあえず……頑張らないと!姉様は間違えて逃げ戦法してたけど……私はこの中間から……様子見かな……羽は大丈夫……全然動く……)

(ミシュさん……今回は抑えてるの、私はこのまま逃げで行くの!!)

(ミシュさんは先行……セイリンさんは逃げね……私は差しのタイミングが大事……か……)


「なかなかいいところ飛んでいますわね!」

「始まったにゃ……」

「頑張ってほしいですね……せっかくの夢の一歩ですから……」

「頑張ってくださいですわ~!」

「出だしは文句ない……そのまま落ち着くんだぞミシュ……」


『さあ!この状況皆さんかなり落ち着いている展開ですね!どう思いますか?』

『そうですね、ペース配分は結構大丈夫でしょう……さあ……まもなく来ますよ!【魔の竜カーブが】』


(空が青い……下を見ると海がきれい……風が気持ちいい……見えた……あれが全長50KMの巨大乱風……まるで壁……くっ!吸い込まれそう……)


私は少し逃げるように右に距離を取る……

乱風のため少しでも風読みを失敗すると立て直しが効かなくなるのだ。


(このタイミングで……曲がる!)


私は今回、いつもの曲がり方はせずゆっくりと曲がっていく……その理由は……


「なにこれ!?右から……強風が!」

「うそー!飛ばされる……」


そう、曲がる瞬間、右から強烈な風が吹き荒れるため、あの曲がり方をすると、バランスが崩れ乱風に、巻き込まれてしまうからだ……


(この乱風だけでも!!)


私の体は風に流されつつ進んでいく……

正直ここの乱風は、前にほかの鳥族がいても、障壁にならないため、直に風を左右、上、下に受けるのだ。

体の小さい私はとりあえず……飛ばされない様に何とか前の人たちを見て曲がっていく……

出口はもう見えていた……


(あと少し……ここを……こえれば!!)


私は風の壁で見えない奥に確かに光が差したのを感じた。

正直方向感覚は無く、途中に立っている目印の旗がなければ、乱風から抜け出せないこともあるのだが……


『おっと!!3人が乱風を抜けました!これは……セイリンとエディとミシュです!それぞれ1位2位3位僅差で突破しました!』

『ここを突破したのは大きいですよ!あと残り500KMです!しかしまだ油断はできませんよ!ここからはさらに、行きよりも強い強い向かい風が続きますからね』

『さあセイリン!エディ!ミシュの誰が1位でゴールするのでしょうか!』


(残り500KM……まだいける!ここまで来たんだから!わたしだって……姉様みたいに……)


私はしっかりと遠くを見る……前は青色の地平線が広がっており、途中の雲も抜けていく……雲の中は、白く先が見えないのだが綺麗で冷たい……

しばらく飛んでいると残り250KMの看板が見えてくる。

折り返しの半分をようやく超えたのだ。


「ここからどんどん逃げていくの!!」

「私もそろそろ行きますよ!」


エディとセイリンが仕掛けてきた。

セイリンはさらに私との差を離していく……正直私がスパートをかけるにはまだまだ遠い、私は一発爆発型のために、残り1000M以内じゃないと羽が持たない。

エディは後ろから私を一瞬で抜き去っていく……



「ミシュ落ち着け、周りに流されるなよ」

「落ち着くにゃ!!」

「行けますわよ!」

「頑張ってください!」

「頑張ってくださいですわ~」



(く……2人共速い……でも私もスパートがあるんだ……私のスパートさえあれば……風の音がする……2人の羽が震えている音もする……心臓が高鳴ってる……やっぱり飛ぶのって楽しい……)


『さあ!残り1000Mを切りました!未だ先頭を飛んでいるのはセイリン!エディ!ミシュの3人です!』

『3人のデッドヒート!どうなるか見ものですね!』


(ここで決める!!私だってずっと頑張ってきたんだ……こんなところで……くじけてられない!!私はお姉様を超えるのだから!)


「はあああ!!」


『おっと!ここでミシュが仕掛けた!2人との距離をどんどん縮めていきます!』


(早すぎるって!!ちょっと!?)

(まずいの!これが2連王の力なの!!)


「ミシュいくにゃー!!飛ぶにゃー!!」

「頑張るのですわよ!!」

「頑張ってください!」

「残り1000Mですわ~!!」

「飛べ!ミシュ!そのまま!行くんだ!」


『ミシュが2人を追い抜かし先頭に立ちました!!残り500Mを切った!これは行けるのか!!さらに二人との距離が開いていきます!前回ミシュリーさんの悲劇から3年!ついにハチドリ類の伝説になるのか!!』

『ハチドリ類の3連王は史上初ですからね!これは行けますよ!!』


(残り50M!このまま!!行ける!!まだ羽は動く!このまま……)


パキ!!


「!!?」


残り50Mを切ったあたりで、右羽に激しい痛みが生じた。

私の体がどんどん左に曲がっていく……


(右羽が動かない……いたい……何で!ゴールは……もうすぐなのに……せめて……リングに手を……)


私は動く左羽で、何とか軌道を修正し手を伸ばすのだが……

リングの下を掠めただけで通り過ぎてしまった……

リングは中に入ったことを確認すると、一瞬緑色に光りゴールしたことを知らせるのだが、私が触れたときは光っていなかった。

つまり……


(なんで!どうして動かないの!!いやだ!ここまで……来たのに!!どうして!!鳥族3連王まで……こんなに……頑張った……のに……)


私は泣きながら口を開くも背中が痛くて声が出ない……

視界がどんどん黒く染まっていく……


『ミシュの羽に異常発生です!!』


私はその実況言葉を最後に、残っていた視界がすべて真っ暗になる。


(シャーリン……ロミ……エリ……スライ……お姉様……スターリーさん……ごめん……なさい)


そうして私は意識を失った。

そう……1番恐れていた事態が……今この場で起こってしまったのだった……


まさかの……

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