57話 ライブ1次予選結果発表にゃー
『ミシュが今先頭に立ちました!ものすごい速度でゴールに向かっています!』
「いけにゃー!!」
「2連王までもうすぐですわよ!」
「頑張ってください!」
「頑張るのですわ~!」
私たちはテレビに映っているミシュを必死で応援している。
無論場所はいつもの通りスライの部屋なのだが……
『現在一番手のミシュがこのまま行くのか!それとも現在二番手のデイリがまた刺し返すのか!いや……ミシュです!ミシュがさらに差を広げた!差を広げ今先頭でゴール!これはすごいタイムが出ました!なんと最高タイムよりもさらに……5秒も速いレコードタイムです!』
「凄いにゃ!」
「5秒だなんて……どれだけ早いのです!?」
「わたしだってそんなに縮めたことありませんのに……」
「凄いですわ~久しぶりに見ましたわ~」
私たちはその日ミシュが帰ってくると、精一杯おもてなしをすることに決定したのだった。
そしてそんな興奮も冷めていない次の日……
今日はいよいよライブ大会1次予選のMVランキングが発表される。
前回の中間報告では50位以内にはぎりぎり入っていたのだが……
「どれどれ……おお!ちょうど100件届いているにゃ!!」
そうどうやら最終日ぎりぎりに投稿したグループもあったようで、中間発表時にはいなかったグループが追加されていた。
「1位と2位と3位は結局のところ変わっていないですわね」
「私たちは……見てみて!!」
ミシュがパソコンを私たちに見せてくる。
そう一番最後……50位の所に【シャースミミリン】というグループの名前があった。
「これってつまり……一次予選突破にゃ!」
「凄いですわ~!一次予選突破ですわ~!」
「それでも危なかったですわよ!?見てくださいまし!51位は10023票なのですわ!私たちは10024だから1票の差でしたわよ!?」
「何が何でもこれで二次予選に行けますね!」
「レース頑張ったかいがあったね!」
ということで私たち【シャースミミリン】は無事一次予選をぎりぎり50位で通過し、次に来る審査員の評価、二次予選に参加できる権利を得たのだった。
『【シャースミミリン】所属のミシュ・あるフィールさん。生徒会長がお呼びですので生徒会長室に来てください』
「にゃにゃ?何か悪い事したにゃ!?」
「まさか!?本当ですの!?」
「あなた……何をしたのですか……」
「まあ~大変ですわ~」
「ちょっと皆待ってよ!!いやそんなに離れなくても大丈夫だから!!別に何もしてないから!!」
「じゃあ安心にゃ!!」
「とりあえず早く行くのですわ!」
「あっそうだね!行ってくる!!」
と慌ててドアを開け走っていったのだった。
一次予選発表の後に呼び出したということは、生徒会長もどうやら私たちのランキング入りを確信していたのだろう。
「行っちゃったにゃー」
「大丈夫ですわよね……?」
「そんなに心配ならあなたもついて行ったら良かったのではありませんか?」
「なんですって!?」
「喧嘩はやめてくださいですわ~まぁ大丈夫だと思いますわ~スラチオ学園では3連王は生徒会長以来の快挙ですわ~アドバイスか何かするのではないですか~」
「じゃあみんなで笑って待ってようかにゃ!」
ということで私たちは再びお菓子を開け夜のお菓子パーティーを始めるのだった。
一方ミシュは生徒会長と対面でソファーに座っている。
机の上にはコーヒーがちょこんと置かれている。
ミシュには何が起こるのか全く予想が出来なかった。
「ひとまず鳥一級レース【カバウム】はお疲れさまだったな。2連王おめでとう」
「あ……ありがとうございます!シュレーヌさん」
「そんなに固くならなくていい、少し話があるんだ。ミシュ……君は本気で3連王になろうと思っているのか?」
「……それはどういうことでしょうか?」
「……まぁ少し意気込みを聞きたくてな」
「そうですか……はい、私は絶対に次のレース【ヒューリンガースカイ】に勝って3連王になります。3連王になってお姉様も出来なかった……ハチドリ類の3連王という快挙を達成したいと思っています!そうしたら私の憧れである……神速のスターリーさんに会えると信じていますから!」
シュレーヌは目を閉じて私の話を頷きながら聞いていた。
ミシュは何か言われるのだろうか……と身構えていたのだがシュレーヌから出た言葉は意外な答えだった。
「そうか……それならば頑張るといい」
「え?あ、ありがとうございます」
ミシュは普通に応援してくれるとは思っていなかったらしく、慌てて頭を下げる。
そしてその後またシュレーヌがミシュに話しかける。
「だが……無理だけはするな。今回のレースでかなり羽が疲れているはずだ、ゆっくりと休むといい。3連王期待しているぞ」
「分かりました!私必ず3連王になって見せます!」
ミシュはそういうと頭を下げ生徒会室を後にした。
結局何の話だったのか分からなかったのだが、アドバイスとしてミシュは受け取ることにしたのだった。
「本当に伝えなくてよかったんですか?シュレーヌさん」
「あれだけ気合を見せられたらな……まぁ……どうなるかはわからないが一応手配だけはしておいてくれ」
「かしこまりました」
「ああ……頼む」
リンカはシュレーヌに頭を下げるとそのまま扉を閉め歩いて行ってしまった。
生徒会室にささやかな沈黙が流れる……
「必ず、元気で帰ってきてくれ、ミシュ……」
シュレーヌはそう呟くと再び椅子に座り、仕事を始めるのだった。




