53話 新たな鳥族、鶴三姉妹登場にゃー
「だから!先に練習の方が良いですわ!!」
「いいえ!先に行かないともう時間がないですわ!」
「ライブまでもう時間がないのですわよ!!?」
今日もいつも通りの2人が喧嘩をしている。
もう私たちにとって、この喧嘩は日常茶飯事なのであまり気にしていないのだが、この喧嘩の始めりは約1時間前に遡る。
1時間前。
「MV完成したにゃ!」
「本当に!?シャーリン!」
「早く見たいですわ!」
「ちょっと邪魔ですよ」
「面白そうですわ~」
「じゃあ見るにゃよー!!」
私は出来たMVを再生する。
私が考えたAメロ……正直どうなるのか分からないのだが。
「良いですわ!前に言っていた、考えというのはこのことだったのですわね!」
「まさか、練習風景を撮影していたとは……」
「でも何で私たちのところまで?」
「そうですわ~私たちは2人しかいないですわ~」
「同級生に手伝ってもらったにゃ!」
そう私は、MVを作るための撮影をほかの人にお願いしたのだ。
ライバルではあるのだが、皆優しかったために、快くOKしてくれた。
「では早く練習に行きますわよ!」
「どこに行くの?エリ」
「決まっていますわよ!ライブ練習ですわ!もしもライブに行けるようになったら、練習が必須ですわ!」
「その前に言いたいことがあります!私たちには足らないものがあります!」
「なんですの?」
「私たちにはレース用の衣装がないです!いいですか?一級レース出場するためには衣装が必要なんですよ!」
「そんなことですの!?今は時間がありませんわ!まだレースに焦点を置いていないのに、衣装なんて必要ないですわ!」
「そんなことって何ですか!レース衣装には時間がかかるのですよ!?レースに焦点を置き始めてからでは遅いんですよ!」
ということで今に至る。
まぁ……今回はいつもと違い、まともな意見で喧嘩をしているのがまだマシというものなのだが……
「ライブなんて一次予選と二次予選があるのです!1か月くらい時間は空きます!2級レースしか出れないなんて、私は御免ですよ!」
(あれ?でもミシュは……)
「ミシュは1級レース2回出たにゃ」
「あ~あれは私のお姉様、ミシュリーのお古衣装だから……正直新しい衣装は欲しいかなって思う」
「私も欲しいですわ~せっかく第1ライブ会場で踊れるのですわ~私もちゃんとした衣装で出たいですわ~」
「どうです?エリ?これでもまだ練習をしたいと良いますか?」
「ずるいですわよ!!ロミ!!もう!分かりましたわ!じゃあ早く支度しますわよ!行きますわ!」
「なんだかんだ……仲良いにゃ……」
「シャーリン、私たちも準備しようか」
「そうだにゃ」
ということで私たちは衣服店を探すべく街に向かうのだった。
この街はもう何回も通っており、結構衣服店を知っているため、みんなで片端に探していく。
「なかなかいい衣服店はありませんわね……」
「そんな簡単に見つかれば苦労しませんよ」
「路地裏に入ってみようよ」
「それいい案ですわ~」
ということで、私たちは今まで通っていなかった路地裏に顔を出す。
路地裏にも店は少なくともあり、売れない店がとても多いのだ。
なので結構融通を聞かせることが出来る。
それがミシュの案だった。
「こことかどうにゃ?」
私が見つけたのは、路地裏の奥にある古めの木造店だった。
看板が服の形をしているため、衣服店ということは確定だろう。
でも、決して汚いというわけではなく、懐かしい前世の木造住宅一軒家のようだった。
この世界の家の形には程遠いため、人もそこまで寄り付かないようで人は1人も見当たらない。
「でも……すごく大きいですわ、これだけのお金……一体どこで手に入れているのか……」
「確かにそうにゃ」
「とりあえず入ってみれば?私のお姉様の衣装も、見てもらいたいと思ってたし」
「そういえば、誰も知らないって言ってましたね」
「ここしかないですわ~」
ということで私たちは中に入っていく……
中はとてもきれいで、無数の服が並んでいる。
ここは、ほかの衣服店とあまり変わらないのだが……
「凄いですわよこれ!?」
「私も見たことありません!」
「これは……」
「最高ですわ~ものすごく高級ですわ~」
私には見たことある服だった……
そう……前世の服にそっくりなのだ、もちろん私ではなく、前世のご主人様たちが着ている服にそっくりの作りになっているのが、私にもわかる。
「これはTシャツにゃ……」
「なにそれ」
「ねぇ君!!Tシャツを知っているの!?」
「うにゃん!?」
ひとりが奥から走ってくる。
背中に羽があることを見ると、どうやら鳥族のようで……
「これは私たちが長い年月をかけて作った衣服だよ!」
と1人の説明に奥からさらに2人が出てくる。どうやら3人は私たちと同じ年齢だろう……
「改めて初めまして、私は、鳥族・鶴類のマナ・スラ―セです。この衣服店店主です。よろしくお願いします。一応2人の姉です」
「同じく私は、鳥族・鶴類のツル・スラ―セです!こちらの副店主をしています!えっと次女です!」
「私は……その……鳥族・鶴類のウメ・スラ―セでしゅ!よろしくお願いしましゅ!ああ!噛んじゃったぁ!三女でしゅ……えへへ!」
「「「今後とも、このマツメ衣服店をよろしくお願いいたします!」」」
正直私たちはこの3人が着ている服に呆然としながら自己紹介を聞いている。
理由は、私以外はどうやら……何故こんな高級服を!?という驚きなのだろうが、私は前世の服を着ている無邪気な女の子としか思えない、さらに、驚きというより……懐かしさの方が大きい。
とりあえず、悪い人たちではないと思うので、これからお世話になることに決めるのだった。




