52話 2曲目のMV撮影開始にゃー
サフィーとのレースを終わらせた私たちは、いよいよ2曲目のMV撮影に取り掛かろうとしていた。
「イントロから全員でスタートダッシュにゃ!」
「まぁ……なんとなくそんな気がしてたけど……」
「サフィーさんは……そうだにゃぁサビ登場お願いするにゃ」
「任せてよ!」
ということで私たちは再びスタートラインにつく。
先ほど走ったばかりなのだが、まだまだ私たちのやる気は落ちてはいない。
というよりもむしろ逆で……やる気満々だった。
「ミシュはもう羽は平気にゃ?」
「うん、もう大丈夫!ちゃんと撮影してあげる!」
ということで私たちはスタートラインに集まる。
私とエリ、ロミでレースをするのは、最初の即興で参加したレース以来ではなかろうか……
だけど私達3人のみでレースをするのは、今回が初めてのため、興味がわいてくる。
「それじゃあ私サフィーがカウントするね~!5!4!3!!1!スタート!」
私たちは一斉に走り出した。
もちろん今回は本気では走らず、歌詞に合わせて、私が先頭を走り、後から皆が追いかけてくる様子を撮影している。
「ハイカット―!よし!今回はこれで終わりだね!」
「はぁ……はぁ……つかれたにゃ」
そう……私たちは100M少しの距離で撮影を終わる予定だったのだが……走っているとどんどん勝ちたいと思う意志が強くなり、結局50Mを過ぎたあたりからは、全速力で走ったのだ。
「残りは雨の日の撮影だけにゃ!Aメロとかは……私に考えがあるにゃよ!」
「じゃあとりあえずは雨の日にまたここでいい?」
「ずっとここですの?私は嫌ですわ」
「私も同じところばかりは……」
「ならばあそこが良いと思いますわ~」
スライはそのまま考えている場所を話し始める。
スライが言う場所は海の砂浜で、そこならば夕焼けでも虹を付けても映えるということだった。
「分かったにゃ!じゃあ雨の日に私たちでまた集まるにゃ!それと今回はわざわざありがとうにゃ!サフィーさん!そうだ!全員で記念写真を撮るにゃよ!」
「シャーリンさんと記念写真……撮ります!!」
どうやらサフィーはやる気満々のようで、私の左隣に座ると肩に頭をのせてくる。
右隣のミシュは少し不機嫌そうな顔をすると、サフィーに対抗するかのように私の肩に頭を乗せてくる。
2人共にとても可愛いのだが……いかんせん熱いのだ……先ほどまでレースで走っており、私の熱と2人の熱で体が熱くなる。
「じゃあ行きますわ~」
スライがボタンを押し慌てて私たちの後ろに飛んでくる……
その後、綺麗にシャッター音が響き渡るのであった。
そうしてみんなで撮影を終えてから1週間が経った頃……ようやく念願の雨の日がやってきた。
ということで私たちは早速ビーチに走っていった。
前世では野良猫のとき、雨は大嫌いだったのだが今回は違う……その理由は……
「ようやくの雨のビーチにゃー!」
「さあ!傘の準備も出来ましたわ!この日を逃すと……間に合わなくなりますわよ!!」
「急ぎますよ!!」
「任せて!」
「それじゃあ、セットしますわ~」
ということで私たちは雨に打たれながらしばらく棒たちしている。
ここでたくさん濡らしておかないといけないのだ。
「ここもソロパートですよね?1人がダンスして、1人がビデオカメラ……もう1人がビデオカメラの相合傘役でいいですか?」
「構わないにゃ!」
「じゃあまずはシャーリンからですよ!スタート!」
ロミさんの合図に私は音楽に合わせ、上空を向き手を伸ばす……そう……このパートはサビ終わりのつなぎソロパートで、私たちの心の本心が垣間見れるシーンなのだ。
なのでこのシーンだけはは絶対に失敗してはいけない……だからこそ私はわざわざ雨の日を選んだということもある。
良いMVを作るにあたっては、人口の雨より天然の雨の方が良いという私の勝手な思いなのだが、チーム皆も賛同してくれたのだ。
「さぁ!最後はスライにゃよ!スライが終われば夕焼けの日にまた来るにゃ!」
「そうですわね!いよいよこれで大詰めですわ!」
ということでスライが前に立ち音楽が流れる……
何故かスライが空を見て手を挙げるだけで、こんなにも美しく感じるのは何故なのだろうか……
「ほら~空が~晴れてくるみたいな~いつまでも~」
「みて!空が……」
そう、なんとそのタイミングで横から夕焼けの空が顔を出したのだ……雨も気付いたら雨が止んでいる。
私たちは日が入って来る様子をしばらく眺めていた。
「ねぇ!後ろ!!」
「あれは……虹にゃぁ……」
「しかも二重ですわ~私2重虹なんて見たことありませんわ~」
私は慌ててビデオカメラを持ち虹に向ける……
まさかこんな奇跡が起こると思わなかったのだ。
「皆!前に集まって」
ミシュが叫ぶと皆は前に横並びになる……そして全員で息を吸うと。
「「「やりました!!私たちの力です!」」」
全員でハイタッチをする。この時の皆の笑顔……私は、一生忘れることの無い思い出になるだろう。
そう確信している。
今回は雨の中海に来て、正直過酷だった。体力も限界に近付いており、私を含め、皆が途中で諦めようとしていたのだが……
「皆さん!頑張るにゃ!きっと奇跡は起こるにゃ!信じるにゃよ!」
私が元気をつけるために、叫んだこの一言。
本当にこの奇跡を目の当たりにした私は、すっかり疲れなど吹き飛んでしまっている。
ずっとこんな景色が続けばいいのに……そんなことを思い、2曲目のMV撮影は終了したのであった。




